紙ソムリエの読み物

良い印刷会社の選び方とは?同業者から見た選定基準とその理由

印刷会社を選ぶとき、「低価格・短納期」を一番に考える方が多いのではないでしょうか。これは印刷会社のことをよく知らない方々にとっても重要なポイントで、最近ではネット印刷がこうした宣伝を積極的に行っています。

しかし、複雑な製本加工を行う場合や印刷物の品質を考慮する場合、『低価格・短納期』で印刷会社を選ぶのはあまり得策とは言えません。
印刷会社と一言で表しても実際にはそれぞれが異なった強みや個性を持っています。

これからご紹介する選定基準を参考にして、みなさまの理想の印刷物を作成できる印刷会社を選んでみてください。

1.レスポンスが親切・丁寧・早い

1-1 親切・丁寧

印刷物の細かい仕様を決めることももちろん大切ですが、仕事を進めるうえで担当者の対応が重要になってきます。

たとえば、修正内容を印刷会社に送った際に、その内容を印刷会社が正確に理解できていなければ、再度修正する手間がかかり、その分時間も費用も余計にかさんでしまいますよね。こうした時に、印刷会社から修正内容の解釈に間違いがないか確認の連絡があれば、お客様も安心して任せることができるのではないでしょうか。

さらに修正内容からお客様の意図を読み取り、プロの視点からより良いアイデアを提案できる印刷会社であれば、とても頼りがいがありますよね。
こうした丁寧かつお客様の視点で校正を行える親切さは、欠かすことのできない要素です。

1-2 対応が的確かつ迅速

親切・丁寧さが重要であると紹介しましたが、「質問の回答に時間がかかる」「単純な文字校正に何日もかかる」といった対応のスピード感が欠けていてはやはり不安だと思います。
また対応が早くても、「質問に対する回答が不十分」「校正に誤りがある」というような場合も心配になりますよね。

そのため、信頼できる担当者には、お客様の要望に対して電話やメールでの対応が早いだけでなく、正確さも兼ね備えていることがとても重要なのです。

2.デザインから印刷~納品まで一貫した対応ができる

2-1 一つの印刷会社が複数の工程に対応

印刷を行う工程には大きく分けてプリプレス・プレス・ポストプレスといった項目がありますが、印刷会社だからといってこれらすべての工程を自社で行うことができるとは限りません。

印刷会社の中には、デザインやDTP(プリプレス)は自社で行い、印刷や加工(プレスやポストプレス)は協力会社に外注するなど分業化している会社もあります。
自社に設備が整っておらず、複数の外注先に依頼する必要がある場合、余計に納期やコストがかかってしまう可能性も…。

自社ですべての工程を行っている印刷会社であれば、各部署の連携が取りやすいので、安定した品質を保ちながら、短納期・低コストを実現できるのです。

2-2 一人の営業担当者が複数の工程を管理

デザインから印刷、加工、納品までを一括で管理してくれる専任の営業担当者がいることも、印刷会社を選ぶうえで大切な基準です。
担当者が一括で管理することにより得られるメリットはたくさんあります。

・ヒアリング回数を最小限にできる
・各工程への移行がスムーズ
・全体を俯瞰した的確なアドバイスがもらえる
・万が一トラブルが発生した場合も迅速に対処できる
・予算や納期について臨機応変に対応可能

こうした対応の迅速性、柔軟性を確保することは簡単ではありません。一人の営業担当者が最初から最後までサポートしてくれる印刷会社なのか、忘れずにご確認ください。

3.自社工場を持っている、印刷知識がきちんとある

3-1 自社工場を持っていることのメリット

前述したように、すべての印刷会社が自社工場を持っているとは限りませんそのなかで、自社工場を持っている印刷会社を選ぶメリットは、大きく分けて2つです。

・品質管理
他社に印刷業務を委託している印刷会社では、どのような環境でどのような品質管理のもと印刷を行っているか不透明です。しかし、自社工場を持った印刷会社なら現場の環境が把握しやすく、行き届いた品質管理ができます。ホームページを確認すれば、ISOやプライバシーマークなどの認証を受けた信頼のおける工場かは一目でわかります。

・柔軟な対応
自社工場なら印刷する現場の立ち合いがしやすく、実際の印刷物の確認もオンタイムで行えます。また、納期についても営業担当と工場の間で柔軟な折衝が期待できます。

3-2 豊富な印刷知識による気づき

印刷についてあまり知識がないまま発注をすると、どういった指示をすればいいのかわからず「イメージ通りの印刷物に仕上がらなかった…」ということもあるかと思います。

しかし、知識や実績のある印刷会社であれば、顧客の知識不足を補いながら的確な仕様を提示し、作りたいもののイメージを形にしてもらえます。

もし、希望の仕様での印刷物制作がむずかしい場合でも、できる限り希望に近い形で代替案を提案してもらえるでしょう。言われた通りに作ったりその可否を答えたりするだけでなく、「こちらの仕様ではいかがですか?」と顧客目線に立って返せるのは、知識と経験あってこその対応です。

4.企画段階から相談できる、提案力がある

4-1 目的や用途に合わせた提案ができるクリエイティブ力

印刷会社には、「顧客の意図を読み取る力」に加え、その後の「+αの提案力」も必要になります。

たとえばデザインを作成する際に、顧客の要望に沿った案のみを提出することも間違いではありませんが、それでは同じようなデザインしか生まれません。
要望をもとに作成したA案とB案、さらに+αの要素を加えたC案を提案してくれるクリエイティブ力が重要な選定ポイントです。

ただ指定された条件を満たすだけでなく、印刷物を手に取る相手を想像し、新鮮なデザインを提供できるクリエイティブ力をもった印刷会社を選べば、より人の目を惹きつける、延いては集客効果を上げる有意義な制作になっていきます。

そうした多彩なアイデアは、日々の情報収集や数多くの企画コンペ・デザインコンペで培われており、その実績を積み重ねたうえで+αの提案を可能としています。営業担当がデザイン制作や企画提案に積極的かどうかは、見極めるポイントと言って良いかと思います。

4-2 印刷以外の選択肢にも対応できるフレキシビリティ

近年、SDGsなどの環境配慮の観点やコロナ禍におけるリモート化の影響で、これまで印刷物として扱っていた商品を、Web上でデジタル商品として取り扱う動きが活発になっています。

さまざまな業界でWebとの連携によるプロモーションが増えています。印刷業界も例外ではなく、DX(デジタルトランスフォーメーション)における幅広い選択肢を持つことが求められています。

印刷会社だからといって印刷だけを行うのではなく、顧客の要望を幅広いメディアにも対応させることのできる柔軟性が必要となっているのです。
書類電子化やデジタル媒体へのデザイン流用、ホームページ制作、システム管理、動画編集など、紙以外の媒体もさらりと扱いこなせるスマートさがうかがえれば、今どきの印刷会社と言えます。

5.スケジュール管理がしっかりしている

納品を完了させるまでには、入稿や各修正の時間の仕切り、校正の進捗状況、納品場所や時刻、完了報告など多岐にわたるタイムテーブルがあります。
それぞれの工程で、きちんとスケジュール管理ができていなければ、トラブルが起きた場合に納期に間に合わせることがむずかしくなります。
設定した納期が守られなかった…なんてことにならないよう、次の管理体制が整っている印刷会社を選びましょう。

・スケジュールは必ず形に残るように提示
口頭でのスケジュール共有では、行き違いが起こるリスクがあります。

最低限メールまたはエクセルなどでスケジュールが可視化されることで、お互いの認識のずれをなくすことができ、工程の調整もしやすくなります。
また、変更が生じる度に作り直して、常に最新の進行表を共有していることも大切です。

・こまめな進捗状況の提示
依頼した仕事がきちんとスケジュール通りに進んでいるのか、とても気になりますよね。作業の進捗状況をこまめに共有してもらうことで、安心した取引につながります。
支給した原稿はいつレイアウトされて提出されるのか、色校正はいつ届けられるのか、納品はどんな形で行われるのか。予告なしになんとなく進むのではなく、次の工程の日時をきちんと示しながら進めてもらうほうが、受け取る側も準備ができて安心ですよね。

・校正や入稿など顧客側の進捗状況も確認
原稿の支給、部数の決定、デザインチェック、色校正の返事、校了などなど、何かとやることの多い印刷業務。意外と見落としがちですが、印刷をお願いするお客様のほうがスケジュール通りにうまく動けないときもあります。連絡を忘れてしまうときもあるかもしれません。
そんなときに、「本日データのご入稿日ですが、その後いかがでしょうか」「何かお困りでしょうか」と確認の電話ないしメールを一本入れることも、スケジュール管理の一環です。受け身に待つのではなく、程よく働きかけてくれる印刷会社を選びましょう。大切なのは、無理なく滞りなく納期を守ることです。

6.歴史がある

一般的に企業の寿命は30年と言われ、50年以上続いているなら老舗と呼ばれても過言ではありません。
歴史のある企業は、受け継がれてきた技術力だけでなく、新しい視点をもった柔軟な対応力で顧客との信頼を築き、時代を超えて選ばれてきました。
こうした老舗は、さまざまな企業との取引で培ったノウハウをもち、社員の年齢層も厚く、案件の種類や顧客の性質に応じた最適な人選が可能です。
また、組織力という面でも仕入れ先との安定した繋がりをもっています。資金力は設備投資にも表れ、さらなる品質向上に重きをおいている印刷会社もあります。

まずは会社のホームページで沿革を確認してみるのも良いでしょう。
ちなみに当サイト『紙ソムリエ』を運営する私たち伊坂美術印刷株式会社は、おかげさまで創業113年を迎えました。
https://kamisommelier.jp/about/

7.信頼のおける資格・認定を取得している

7-1 情報管理における高い信頼性

品質や情報管理について公的に決められた認証には高い信頼性があるので、印刷会社を選ぶひとつのポイントになるでしょう。

・ISO規格


国際的な取引をスムーズに行うため、製品やサービスについての品質に差が出ないように作られた世界的な基準です。そうした「モノ規格」の他にも、組織としての情報の管理体制や環境への取り組みについて定められた「マネジメントシステム規格」などがあります。

・プライバシーマーク(Pマーク)

一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)が付与する、企業や団体が個人情報保護の体制・運用が適切に行われていることを示すマークです。
日本産業規格「JISQ1500個人情報保護マネジメントシステム-要求事項」をベースとした審査基準を設け、クリアした事業者のみがプライバシーマークの使用を認められます。

一般社団法人 情報サービス産業協会
JIS Q 15001 個人情報保護マネジメントシステム-要求事項
https://www.jisa.or.jp/it_info/engineering/tabid/1157/Default.aspx

個人情報の取り扱いに厳しくなっている現代において、こうした規格や認定を受けた会社であれば、個人情報にかかわる案件であっても安心して依頼することができますね。

7-2 印刷の品質保証

印刷の美しさを左右する色は、どんな工場でいつ刷っても同じ仕上がりになるとは限りません。
一定の印刷品質を保証されているかどうかがわかる基準もあります。

・Japan Color認証制度

同じCMYK値のデータでも、印刷所によって、またその時の印刷機のコンディションなどによってさまざまな印刷結果になります。
そこで、先ほどご紹介したISO国際標準に準拠して、日本のオフセット枚葉印刷における印刷色の標準(Japan Color基準)を定めました。
日本のいろいろな印刷所で印刷した結果の平均値をとって、C:○○%、M:××%、Y:△△%、K:□%なら印刷所や印刷時期に関わらずこの色!というふうに印刷の色のものさしを作ったのです。

これによって、何年か前に印刷したチラシやリーフレットを増刷しても、Japan Color基準に準じて刷っていれば、前回と限りなく近い色で仕上がります。顧客も安心して印刷を任せられ、印刷機のオペレーターも判断基準があって作業がしやすくなるのです。

Japan Color認証は、Japan Color基準で印刷品質を安定させながら刷ることができなければ取得できない、非常に厳しい認証制度です。
この認証をクリアしているということは、印刷機の徹底したメンテナンスとオペレーターの数値管理能力が認められている、つまり、高度な印刷技術が保証された印刷会社と判断することができます。

7-3 環境への配慮

他にも環境への配慮を中心とした認証があります。

・FSC認証

近年、違法に伐採された木材が用紙を作る際に混入してしまうことが世界的に問題視されています。このような問題を解決するためにあるのが『FSC認証マーク』です。

これは「伐採される森林」と「それによって生産される製品」、「その製品の流通」を評価・認証し証明するもので、紙の製造・印刷・加工を行うそれぞれの業者が厳重な審査によって認証を受けるため、FSC認証マークを得た製品は高い信頼性を持ちます。

・グリーンプリンティング認定

環境に配慮した製品作りのために、工場、資機材、印刷製品を対象とした『グリーンプリンティング認定制度』があります。
認定基準は、法令や条例の遵守はもちろんのこと、地域住民への配慮(悪臭、騒音などを未然に防ぐ)から地球規模での環境対応(大気汚染防止・廃棄物削減、リサイクル推進など)まで幅広く定められています。

オフセット印刷、シール印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷の4部門を対象に審査が実施されており、基準に適合していればGPマークを表示することができます。
マークは「ワンスター」「ツースター」「スリースター」の3段階あり、星の数が増えるほど、環境配慮レベルが高いと評価されます。

企業がSDGs への取り組みを重視するなかで、印刷会社はこうした認証を積極的に取得しています。それは、木材を原料とした用紙や、印刷に使用されるインキなどの環境問題に大きく関わってくるからです。
こうした認証を取得することは、高い意識をもって環境保全に取り組んでいる企業としてイメージアップにつながります。

まとめ.目先の低価格・短納期だけで選んでは危険!

印刷会社を選ぶポイントは「低価格・短納期」だけではありません。
営業担当の幅広い提案力や臨機応変なレスポンス、特殊加工などいろいろな印刷物に対応できる技術力など、印刷会社ごとに強み・特徴があります。
「印刷について何も分からない…」「デザイン制作から相談したい」「他とは違う印刷物を作りたい!」など、それぞれの悩みや目的に合った印刷会社を選ぶことが大切です。
今回ご紹介したさまざまなポイントを参考に、最適な印刷会社を選び、素敵な印刷物を作っていきましょう。

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