「色」というものは、世の中にたくさん存在していますよね。多種多様で、私達の生活に彩りをもたらしてくれます。みなさんの好きな色はなんでしょうか?
どんな色を使えばより多くの人に注目してもらえるか、どうしたらより情報が伝わるか。
デザインにおいて使う色を考える際に、どの色もいいような気がしてとても悩みますよね。
色の持つイメージや効果を知ることで、さまざまな用途で適した色を選択でき、より注目され、伝わりやすい効果的なデザインになるでしょう。
今回は、色の曖昧なイメージや心理的効果をわかりやすく説明していきます。
たくさんの色の中から、一般的に知られている色のイメージについて解説していきますので、あなたの好きな色のイメージがわかるはずですよ。さらに色の基礎知識である、「色の三要素」についても解説していきます。
1.色についての基礎知識
1-1 色の三要素(三属性)について
まず、そもそも色とはなんでしょうか?
「色」は、電磁波の一種です。人間が色を感じられる特定の波長を持つ電磁波は「可視光線」と呼ばれ、可視光線が電気信号に変換され、脳に伝わることで私たちは色を感じることができています。詳しくは「RGBとCMYKの違いとは?」の記事でも解説しておりますので、ぜひご覧ください。
色には、数えられないぐらいの種類が存在し、その全てに名前がついているわけではありません。そのような曖昧な色を相手に伝えたい時、どのように伝えたら良いかわからず困ってしまいますよね。
そこで、曖昧な色をなるべくわかりやすく直感的に伝えられるようにと、色彩学が発展していきました。
定められた要素で色を分類できる方法を色の三要素(または三属性)と言い、この三要素に基づいて、色彩学上では記号や数値を用いて色を分類しています。
この色の三要素(三属性)とは、 「色相(Hue)」「彩度(Saturation)」「明度(Brightness)」 の三つの要素のことを指します。この三要素について、詳しく解説していきます。
1-2 色相について
「色相(Hue)」とは、色味を表す要素です。
赤色や黄色、緑色や青色などのように色味は異なっています。それらを色の系統別にグループ分けされているものを指します。
色相の違いは、虹の連続した色の変化で見ることができます。
主に、赤→橙→黄→緑→青→紫のように変化します。
これらの色味と色味の変化を繋げて綺麗な輪の状態にして表したものを「色相環」といいます。
色相環で向かい合う色同士のことを「補色」と呼びます。
上記の図でいいますと、赤と緑や、橙と青などのペアを指します。
この補色の二色は、組み合わせると互いの色を目立たせる配色になります。
ですが、グラデーションなどで補色の二色を混ぜ合わせるようなデザインにすると、濁った印象になりますので、その点は注意が必要です。
1-3 彩度について
「彩度(Saturation)」とは、色の鮮やかさの度合いを表す要素です。
彩度が高いほど鮮やかでビビットな目立つ色になり、彩度が低いほど色味を感じにくく、落ち着いた印象の色になります。
また、彩度がまったくない状態の色を「無彩色」といい、黒や白、グレー(灰色)を指します。無彩色の反対に彩度がある色を「有彩色」といいます。
1-4 明度について
「明度(Brightness)」とは、色の明るさの度合いを表す要素です。
明度が高いほど、明るく白っぽい色になり、明度が低いほど、暗く黒っぽい色になります。
例えば、青色の場合、明度が高くなると白っぽいパステルな水色になり、明度が低くなると暗い紺色になっていきます。
また、無彩色は彩度を持たないことによって、赤色や青色などの色味も持たないので、色相も持ちません。無彩色は白〜灰〜黒と、明度のみの要素を持ちます。
2.色がもつイメージと心理的効果
2-1 人が感じる色のイメージについて
人が感じる色のイメージは、無意識のうちに人々の中で根付いています。
例えば、自動販売機の「あたたかい」飲み物と「つめたい」飲み物。
赤系やオレンジ系の表記で「あたたかい」、青系の表記で「つめたい」と書かれているのが一般的ですよね。
もし仮に、これらの色の表記を逆にしてみたらどうでしょうか?
何か違和感を覚えませんか?
もしかしたら、温かい飲み物を買いたかったのに間違えて冷たい飲み物のボタンを押してしまった…なんてことにもなるかもしれません。では、なぜ違和感を覚えてしまうのでしょうか?
人は、心理的に赤系やオレンジ系の色には温かいイメージ、青系の色には冷たいイメージを感じているためです。何か飲み物を買おうと自動販売機をパッと見たときに、どれが温かい飲み物なのか冷たい飲み物なのかを瞬時に判断しているのです。
このように、人が心理的に感じる色へのイメージは多様にあります。間違った伝わり方をしないように、用途によって適切な色を選ぶことが重要になります。
暖色系 ・寒色系
主に、赤系・橙系の色相の色を「暖色系」、青系の色相の色を「寒色系」といいます。
前述した自動販売機のボタンのように、視覚的に温度を感じることができる色です。特定の物の温度について、見ただけで熱いのか冷たいのか、暖かいのか寒いのかを伝えたい場合にとても効果的で、よく利用される色になります。
冬場に使われるこたつやストーブのヒーターの部分の色を暖色系にすることで、視覚的にもさらに暖かくなっているような感覚になります。また、暑い夏には涼しさや爽快感をイメージさせるデザインが増えるので、寒色系の色が多用されます。
黄や緑など視覚的に寒暖をあまり感じない色を「中性色系」といいます。
軽い(柔らかい)色・重い(硬い)色
色は視覚的に温度を感じられるだけではなく、重量感や感触も感じ取ることができます。
明度が高い色は柔らかく軽そうに見えて、明度が低い色は硬く重そうに見えます。
例えば、まったく同じリュックサックの商品があったとして、白色と黒色を並べた時にどちらの方が軽そうに見えるでしょうか?同じ商品なので、もちろん重さはまったく同量なのですが、パッと見ると白色の方が軽そうに見えませんか?
人は色で心理的に重量感を感じています。この感覚を利用して、引っ越し業者のダンボールなどは、明度の高い色は重さを感じにくいことから、白にしていることが多いのです。
色相や彩度を変えてもあまり重量感は変わらず、明度のみが関係しています。
高級感や重厚感のあるデザインにしたい場合は明度の低い色、軽量感や手軽さをアピールしたいデザインの場合は明度の高い色がよく使われています。
派手な色・地味な色
色には人が感覚的に感じる派手な色と地味な色があります。それらは彩度差によって感じることができます。
彩度が高い色は派手なイメージで、彩度の低い色は落ち着いたイメージになります。
彩度の高い色、いわゆるビビットカラーは、派手で人の目を引くような誘目性があるので、ロゴマークや広告などに使うととても効果的でしょう。また、同じビビットカラーでも、暖色系の方がより誘目性があると言われています。
服にもさまざまな彩度のものがありますね。同じ色の服でも、着る場面によって印象が変わってきます。
例えば、パーティーなどのドレスは、彩度の高いものを着たほうが華やかな印象になりますが、普段の生活で彩度の高いビビットカラーの服を着ると、目立ってしまいがちです。落ち着いた印象にしたい場合は、少し彩度を下げたくすんだ色の服を着ると良いでしょう。
このように場面や用途で、彩度差を使い分けることが大切です。
また、人は一般的には年齢を重ねていくごとに、彩度の低い色を好む傾向があります。
2-2 それぞれの色が持つ一般的なイメージと心理的効果
世の中に存在するたくさんの色の中から、主に一般的に知られている色のイメージや心理的効果について見ていきましょう。
赤は、情熱的でアクティブさを感じる色です。
力強く熱い闘争心のようなイメージを感じる一方で、刺激的な色なので警告性もあり、危険や注意を伝えたい時にも適した色になります。
ピンクは、赤と白が混ざり合った混色で、女性らしさや可愛さ、可憐さを感じる色です。
彩度や明度の高さによってイメージが少し異なり、明度が高い淡いパステルなピンクは、柔らかく優しいイメージを与え、彩度の高いビビットなピンクは、派手さや色気を感じるイメージを与えます。恋心や愛情を表現するのにも多く使用される色です。
橙(オレンジ)は、赤と黄が混ざり合った混色で、温もりや明るさ・陽気さを感じる色です。
元気でフレッシュなイメージで、赤よりも刺激が薄れるため、親しみを感じやすい色になります。
黄は、まばゆい光のイメージで、希望や幸福をイメージできる色です。
また、有彩色の色相の中で最も明るいとされており、暗闇の中でも視認性が高いため、赤と同様に警告性もあり、踏切や信号機のように危険・注意を伝えたい時にも適した色になります。
緑は、黄と青が混ざり合った混色で、自然や植物をイメージできる色です。
爽やかで安らぎを感じることができる色で、見ていると癒され安心感があるので、興奮が抑えられ、長時間見ていても疲れにくい色だといわれています。
青は、水や空や海を連想させることから、冷たさや清涼感をイメージできる色です。
また、冷静さや沈静なイメージもあります。前述した「寒色系」の代表色で、クールなイメージや爽やかさ、涼しさをアピールしたい場合などにもよく用いられる色になります。
紫は、赤と青が混ざり合った混色で、上品さや優雅さを感じる色です。
女性らしさも感じる色ですが、ピンクとはイメージが異なり、高貴さや妖艶さといった大人の女性を連想させるイメージの色になります。また、幻想的で不思議なイメージもあることから、スピリチュアルなイメージを表現するのにもよく使用されます。
茶は、主に赤や橙などの暖色系の色の彩度や明度が低い色で、大地の土や木々などの自然をイメージできる色です。
緑も同様に自然をイメージできる色ですが、茶は大地を連想させることから、支えられるようなイメージがあり、安心や落ち着きを感じられる色になります。
白は、無彩色で明度がとても高く、色の中で最も明るい色で、どんな色にも合わせやすいと言われています。
また、純粋で無垢なイメージから、穢れがなく神聖さを感じることから、ウエディングドレスや白無垢など、結婚式の衣装に用いられる一般的な色になっています。
灰は、無彩色で明度は中程度の色で、落ち着いたイメージの色です。
白でも黒でもない中間色のはっきりとしない色で、薄暗さや陰気さを感じさせる反面、柔らかく控えめな印象で、他の色とも合わせやすく、落ち着いたシックなデザインなどを作りたい時にはよく使われる色になります。
黒は、無彩色で明度がとても低く、色の中で最も暗い色で、重厚感や高級感がある色です。
また、闇を連想させることから不吉で恐怖や孤独を感じさせるイメージもあります。
他の色とも合わせやすく、明度の高い色と組み合わせると、その色をより際立たせる効果もあります。シックで高級感のあるデザインなどを作りたい時にはよく使われる色になります。
2-3 デザイン制作で色彩効果を取り入れるポイント
色が人に与える多様なイメージと心理的効果を解説してきました。
暖色・寒色や、軽い色・重い色など、さまざまな色の性質が人々に与える心理的効果。このような色彩効果を広告デザインやWebサイトなどのデザイン制作に応用することで、より目的に合ったデザインになります。
例えば、エコや環境問題などを主題とした広告をデザインするとして、エコや環境問題は、自然や植物などのナチュラルなイメージがあることから、緑系の色を選んでデザインすると落ち着いた自然なイメージでマッチするでしょう。
また、ビビットな赤系の色や黄色などは強調色としてよく使用され、人の目を引きやすく目立たせやすい色なので、チラシなどの広告に使用すれば、購買意欲を高めることができるでしょう。
このように、色彩効果には人々が感じる心理的なイメージを表現する感性的な効果と、視認性を上げてわかりやすく情報を伝える機能的な効果があります。
「どのような用途・場面で」「どの色を使うと効果的か」をよく理解することで、色の良さを最大限に引き出しつつ、より狙い通りのデザインが仕上がることでしょう。
まとめ.デザインの印象は色使いで決まる!
デザインの色を決める上で大切なことは、「誰に」見てほしいか・「何を」伝えたいかです。
色の持つイメージが心理的に与える効果をうまく取り入れることができれば、自分の表現したいイメージがより伝わりやすくなります。場所、季節、年齢や性別などのターゲット層に合わせた色選びを心がけるだけでも、デザインの方針が定まりますよ。
みなさんの好きな色のイメージはどのようなものでしたか?
次回は色についての応用編で、配色について詳しく解説していきます。いくつかの色の組み合わせで表現される配色。そこから表される色のイメージがどのような人に好まれるのか。 もっと色について知りたい方は、ぜひそちらも読んでみてくださいね。