紙ソムリエの読み物

【冊子印刷なら知っておきたい】製本の種類と方法 ~無線綴じ~

「中綴じや平綴じではページ数が足りない」
「もう少し丈夫な冊子を作りたい」
「中綴じや平綴じよりも、もう少し手軽に高級感を出す方法はないだろうか?」


中綴じ・平綴じ編を読んでそう感じた方へ、今回は無線綴じをご紹介します。
ページ数の多い冊子や手軽に高級感のある冊子を作りたいなら無線綴じを検討してみてください。
また、「無線綴じ冊子を作ろうと思って検索してみたけど、いろいろな名前の綴じ方が出てきて違いがよく分からない」という方向けにもそれぞれの特徴をふまえつつ、違いや選択時のポイントをお伝えしていきますので、データ作成や製本発注の参考にしていただけたらと思います。

1.無線綴じとは?中綴じとの違いは?

1-1 無線綴じとは?

無線綴じとは、並製本・上製本の一種で、本文の折り丁を重ねて背に専用の糊を付け、表紙でくるんで綴じる製本方法です。
表紙で本文をくるむことから「くるみ製本」と呼ばれることもあります
カタログや教科書など、無線綴じの冊子が身近にはたくさんあり、私たちの生活になじみ深い製本方法のひとつであるといえるでしょう。

無線綴じには
〇通常の無線綴じ  〇アジロ綴じ  〇PUR綴じ
の大きく分けて3種類の製本方法があり、その違いは主に糊付けの際の切れ込みの入れ方や、使用する糊にあります。
それぞれの違いや中綴じとの違いを交えながら3種類の無線綴じについてご紹介していきます。

1-2 無線綴じの製本の流れ、中綴じとは何が違うの? 

無線綴じの製本の流れは、中綴じと同じく下記の4つの工程から成り立っています。
STEP1.印刷する
STEP2.印刷した用紙を折る
STEP3.ページごとに重ねて綴じる
STEP4.形を整える(断裁する)

基本の流れは同じですが、各工程において中綴じと異なる点がありますので、比較しながらご紹介します。各工程の詳細や用語の説明はこちらの記事に記載していますので、あわせて読んでみてくださいね。

STEP1.印刷する

無線綴じを印刷するときも、大きな紙に最大16ページ(A4冊子の場合)までを面付けして印刷します。
ただし、本文のページ数が16ページ以上になった場合は、面付けが中綴じとは異なります。
これは中綴じと無線綴じで、折り丁の丁合方法が異なるためです。
中綴じは折り丁を開いた状態で中に挟み込むように丁合するので、[最初のページと最終ページ][2ページ目と後ろから2ページ目][3ページ目と後ろから3ページ目]…と隣り合わせになるように面付けします。
一方で、無線綴じは折り丁を閉じた状態で順番に重ねていくので、[1台目:本文1~16ページ目][2台目:本文17~32ページ目][3台目:本文33~48ページ目]…のように台ごとに順番に面付けをします。
また、無線綴じの場合、必ず表紙(4ページ)は本文とは別台と考えて作成する必要があります。
作成するのが中綴じなのか無線綴じなのかによってデータの作り方も変わってくるので、事前に確認が必要です

STEP2.印刷した用紙を折る

刷り本が上がったら、刷り本を折って製本用の折り丁を作成します。

STEP3.ページごとに重ねて綴じる

折り丁ができ上がったら、STEP2.の図のように折り丁を丁合し、背の部分に切り込みを入れてからホットメルトと呼ばれる糊を付け、表紙でくるんで綴じます。
中綴じのように針では綴じないので、糊を付けられれば100ページ以上でも製本可能です。
また、針金で綴じる中綴じは4ページごとでしか増やせませんが、無線綴じは糊付けを工夫すれば2ページ(ペラ)でも増やすことができます。
ページ数の制限が比較的緩いことは、無線綴じならではの利点ともいえます。

STEP4.形を整える(断裁する)

最後に三方断裁で塗り足しや余分な部分を断裁し、冊子の完成です。

2.【スタンダードな無線綴じ】特徴とメリット・デメリット

2-1 一般的な無線綴じからご紹介します!

まず3種類の無線綴じのうち、はじめに通常の無線綴じからご紹介します。
3種類の中でも一番スタンダードな無線綴じで、印刷会社とのやりとりの中で【無線綴じ】というワードが出たらほぼこの綴じ方のことを指します。
無線綴じとは先述の通り、丁合した本文の折り丁の背を糊で接着し、表紙でくるんで綴じる製本方法です。
通常の無線綴じでは、丁合した折り丁の背を切り取って1ページごとのバラバラの状態に切り離し、ラフニングと呼ばれる作業で断面の紙の繊維を毛羽立たせ、糊が浸透しやすいようにします。その断面にEVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)系ホットメルトと呼ばれる糊を塗り、それが固まることにより各ページが繋がります。

EVA系ホットメルトとは、白色のワックス状の接着剤で、加熱によって溶けて糊状になり、冷えることで固まる即硬化型の接着剤です。
耐久温度は45℃程度までといわれており、それを超えると糊が溶け出し、綴じが崩れてページが抜け落ちてしまう場合がありますので、冊子の保管には注意が必要です。

スタンダードな無線綴じのページ数の目安は、下記の通りです。
※表紙の斤量は本文より1斤量厚いものにしましょう。

用紙の斤量(kg)7090
無線綴じ(ページ)20~300ページ程度16~300ページ程度

2-2 無線綴じのメリット

・中綴じよりも耐久性がある
背を糊付けする無線綴じはページ数が多い分、接着面が広くとれるので、中綴じよりも耐久性のある丈夫な冊子に仕上げることができます
ただし、ページ数が多い場合には本文に厚い紙を使用すると耐久性が落ちてしまいますので、本文に使用する紙には斤量70kgや90kgの紙を選ぶのが良いでしょう。
また、表紙の紙の斤量を本文より1、2段階厚くすることも耐久性を上げる手段のひとつです。

・かさばりにくく、ページ数の多い冊子が作れる
折り丁が閉じられた状態で丁合される無線綴じは、折り丁の数(ページ数)を増やしても比較的フラットですっきりした仕上がりになります。
ページ数が増えると冊子が膨らんでかさばってしまう中綴じに比べ、直角に折られた表紙がしっかりとした印象を与え、高級感のある仕上がりにすることができます。

・棚に並べたときにすっきりときれいに収まる
ページ数の多い冊子向きの無線綴じはフラットで背に厚みがあるので、棚に並べたときにきれいに収納することができます。
また、背に文字やアイコンなどのデザインをすることでどの冊子か一目で分かりやすく、整理もしやすくなります
(製本の際にデザインが背表紙からはみ出してしまう可能性がありますので、背幅は3mm以上は確保するようにしましょう。)

2-3 無線綴じのデメリット

・中綴じよりもコストや納期が必要
ページ数、製本工程が増えるため、中綴じよりもコストや日数が必要になります。

・冊子が開きにくく、ノドの近くが見えなくなる
無線綴じは背を糊で固めて綴じるため、中綴じよりは冊子の開きやすさが劣ります。
紙の厚さやページ数にもよりますが、完全に開ききることができずノドの周辺が見えにくくなりますので、写真集や図録などノド周辺に絵柄がかかるような冊子には不向きです
また、ノド元まで絵柄を入れると、EVA系ホットメルトと印刷のインキが化学反応を起こし、紙がシワになってしまったり、糊の接着強度が低下したりする現象が発生します。
大切な文字や絵柄はノドから10mm以上離して配置し、ノド元へのデザインは避けるようにしましょう。

・ページ数の少ない冊子には対応していない
16ページなどの少ないページ数の場合、糊を付ける背の面積が少なく十分な量をつけられないため、糊の接着が不安定になります

3.【アジロ綴じ】特徴とメリット・デメリット

3-1 アジロ綴じとは?無線綴じとの違いは?

次にアジロ綴じについてご紹介します。
アジロ綴じも無線綴じの一つで、スタンダードな無線綴じの改良版のようなものです。
工程はスタンダードな無線綴じ(以下 無線綴じ)とほぼ同じですが、大きな違いは折り丁の背の切れ込みの入れ方にあります。
折り丁の背を切り取って1ページずつバラバラに切り離す無線綴じに対し、アジロ綴じはカット部とアンカット部を交互に繰り返した切り込みを入れるため、各ページが部分的に繋がった状態の折り丁になります。
こうすることにより、糊が劣化した際にページが抜け落ちにくくなるため無線綴じよりも強度を上げることができます

アジロ綴じのページ数の目安は、下記の通りです。
※表紙の斤量は本文より1斤量厚いものにしましょう。

用紙の斤量(kg)7090110
アジロ綴じ(ページ)20~300ページ程度16~300ページ程度16~300ページ程度

3-2 こんな時はアジロ綴じがおすすめ。アジロ綴じのメリット

・無線綴じよりも強度が高い
紙の斤量が110㎏を超える場合、冊子の開閉時に背の接着面に負担がかかりやすくなり、無線綴じでは「背割れ(ノド割れ)」が起きてページが抜け落ちてしまうリスクがあります。
アジロ綴じであればページが部分的に繋がった状態で綴じられており、簡単にページが抜け落ちることはないので、紙が斤量110kgを超える場合にはアジロ綴じを検討してみてください。(ただし、アジロ綴じでも糊がしっかりと内側まで浸透していないと強度が落ちるリスクがあります。

背割れ(ノド割れ)
冊子の開閉を繰り返すことで固まった糊が割れ、本文の紙がバラバラに抜け落ちてしまうこと

・コート紙のコート剤に左右されない
光沢のあるコート紙やマット調のマットコート紙は、表面にコート剤が塗布されることによってその質感を生み出しています。
無線綴じの場合、ラフニングの工程でこのコート剤が粉末となって紙に付着するのですが、この粉を十分に取り除かずに糊を塗ってしまうと接着強度の低下につながってしまいます。
アジロ綴じはラフニングの工程がなく、強度が下がるリスクがないため、本文にコート紙・マットコート紙などの塗工紙を使用する場合にはアジロ綴じがおすすめです。

3-3 アジロ綴じのデメリット

・薄い紙には不向き
薄い紙は16ページ折りをしたときに中折りが浮いたり、ズレが生じたりしやすくなり、糊が折り丁の内側まで浸透せずにページが抜け落ちるリスクが生じます。
斤量55kg以下の薄紙を本文に使用する場合には、通常の無線綴じを選択した方が良いでしょう。

中折り
16ページ折りの際、2回目に折った部分

4.【PUR綴じ】特徴とメリット・デメリット

4-1 進化版!PUR綴じのご紹介 ほかの無線綴じとの違いは?

最後にPUR綴じをご紹介します。
PUR綴じも無線綴じの一種ですが、折り丁の背の接着に使用する糊を反応性ポリウレタン(Poly Urethane Reactive)系ホットメルトに変えることにより、無線綴じやアジロ綴じよりも耐久性・柔軟性・耐熱性を高めた製本方法です。
耐久性・柔軟性が上がったことによりページの開きが良くなり、写真集や図録などページ数が多く見開きで絵柄を見せるような冊子の製本も可能になりました。
冊子の開口性が理由で無線綴じやアジロ綴じでの作成をあきらめた方は、PUR綴じでなら作成できるかもしれません。ぜひ検討してみてください。

PUR綴じのページ数の目安は下記の通りです。

用紙の斤量(kg)90110135
PUR綴じ(ページ)16~300ページ程度16~250ページ程度16~200ページ程度

4-2 PUR綴じのメリット

・接着強度が高く、丈夫な冊子が作れる
PUR系ホットメルトは従来のEVA系ホットメルトに比べ強度が2倍以上もあると言われており、開閉時の耐久性も上がったことでより長期保存に向いたページ数の多い冊子が作成可能になりました。

・開きやすく読みやすい
PUR系ホットメルトは柔軟性も高いので冊子の開口性がよく、ページ数が増えてもノド周辺まで開いて読むことができます。
従来の無線綴じでは不向きだった写真集や図録など、ノド周辺に絵柄のかかる冊子でもPUR綴じなら問題ありません
他にも、
・開いたまま置くことが多いレシピ本や辞書などにも適している
・書き込みがしやすい
・コピーが取りやすい

という点もPUR綴じならではの利点といえます。

・熱に強い
従来の無線綴じのEVA系ホットメルトは耐熱温度が0~45℃程度までとされており、それ以上の高温になると糊が溶け出してページが抜け落ちてしまいます。
それに対してPUR綴じのPUR系ホットメルトは、耐寒温度マイナス20~耐熱温度120℃程度まで耐性があるといわれています。
例えば、閉めきられた倉庫や車のダッシュボードなど、夏場に高温になるような場所に保管する冊子には、糊の耐熱性が高いPUR綴じがおすすめです。

・リサイクル性が高く、環境にやさしい
高温でも溶け出さないという特徴を持つPUR系ホットメルトは、古紙リサイクルにおいてほぼ100%パルプ(紙の原料)と分離することができ、日本印刷産業連合会の定める「古紙リサイクル適正ランクリスト」において、“紙・板紙へのリサイクルにおいて阻害にならない”とされるAランクの資材に認定されています。
(従来のEVA系ホットメルトは“紙へのリサイクルには阻害となるが、板紙へのリサイクルには阻害とならない”とされるBランク)
また、製本時には従来のEVA系ホットメルトよりも低温で固まって接着できるので必要とする熱エネルギーが少なく、糊の塗布量も従来の半分~2/3程度で済むため、PUR綴じは省資源・省エネルギーな製本方法といえます。
SDGs需要が高まる昨今、環境報告書やCSR報告書など環境へ配慮した製品であることをアピールしたい冊子にもおすすめです。

4-3 PUR綴じのデメリット

・製本に時間がかかる
PUR系ホットメルトは加熱・溶解後冷えて固まったあと、空気中の水分と結びついてさらに強固になる性質があります。
そのため従来のEVA系ホットメルトに比べて、加工に時間がかかります。

・コストがかかる
現時点では製本に高度な技術が必要となるため、通常の無線綴じやアジロ綴じに比べてコストがかかります。

4-4 こんなこともできます!複数の冊子を一冊に。~合本製本~

「ばらばらの冊子を一冊にまとめてすっきりさせられたらいいのに…」と感じている方、無線綴じでできます!
社内報や広報誌など、回数を重ねて冊数が増えてくると管理が大変ですよね。
そんな時におすすめなのが、無線綴じの技術を使った合本製本(合冊製本)です。
実は製本された冊子でも数冊束ねて背を削り、無線綴じと同じ要領で糊付け、表紙でくるんで一冊の冊子として再度製本することができます。
年度ごとやテーマごとにまとめたりして、より見つけやすく整理もしやすい冊子にしてみるのはいかがでしょうか?

コラム:あると役立つ台割表

台割表とは、冊子の何ページにどんなコンテンツが記載されているのかを一覧にした、いわば冊子の設計図のようなものです。
ページ数の多い冊子を作成するときには、併せて台割表の作成も推奨しています。
台割表を作成することによって、原稿の作成者がコンテンツの記載漏れを防ぐことができるだけでなく、入稿先の印刷会社でも冊子全体の構成を把握することができ、データに漏れがないか、データがあるべき場所に配置されているかなどを確認しながら作業をすることができるので、台割表があるととても役に立ちます。

【台割表に記載する内容】
・通し番号…表紙を1として、裏表紙まで番号をふりましょう。
・ページ番号(ノンブル)…冊子に記載されるページ番号です。
・記載されているコンテンツ…タイトルやコンテンツの概要、写真・グラフの有無などを記載しましょう。余白ページの場合にもその旨を記載すると分かりやすいです。
・その他…加工の有無、用紙の銘柄・厚さ、印刷の色数など

台割表には2タイプ

見開き形式の台割表

ページ数が少なめの冊子の場合は、見開き形式の台割表がおすすめです。
実際の冊子の仕上がりイメージに近い状態で構成を確認できます。

<見開き形式の台割表の例>

表形式の台割表

ページ数が多い冊子の場合には見開き形式だとかなりの量になってしまいますので、一覧形式の台割表がおすすめです。

<一覧形式の台割表の例>

台割表を作ることによって、イメージが共有しやすくなり、認識のズレによるミスやトラブルを回避することにもつながります。
ひと手間加えることにはなりますが、印刷会社とのやり取りをよりスムーズに行うためにも台割表の作成をおすすめします。

まとめ.ここまでの製本方法を比較表にまとめました! [br]
 ~中綴じ・平綴じ・無線綴じ・アジロ綴じ・PUR綴じ~

さて、今回は並製本のうち、無線綴じの3種類(通常の無線綴じ・アジロ綴じ・PUR綴じ)をご紹介しました。
最後に前回の中綴じ・平綴じを含め、それぞれの特徴・納期・価格を比較表にまとめてみました。
ご自身の作りたい冊子のイメージに照らし合わせて、ぜひ製本選びの参考にしてみてください。

※納期や価格は、時期や条件などによっても変化しますので、必ず事前に印刷会社へ問い合わせるようにしましょう。

今回ご紹介した内容以外にも、印刷や製本加工でできることは幅広くあり、書ききれなかったことがまだまだたくさんあります。
製本の工程を工夫することで、もっと応用のきいたさまざまな形の冊子を作ることもできます。
「もっと加工にこだわって表現の幅を広げたい」「用紙を変えて雰囲気を変えたい」「こんな形の冊子って作れるのかな?」など、要望や気になることがあれば一度印刷会社に問い合わせてみましょう。
当サイト『紙ソムリエ』でもご相談やご質問を受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせくださいませ。
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