例えば年賀状を印刷する時に宛名や住所など、一部のみを差し替えて印刷することができたらいいな、と思ったことはありませんか?
バリアブル印刷は、あらかじめ差し替えるデータを作成しておくことで、そうした部分的な刷り分けが可能となる印刷技術です。
どのような印刷物にバリアブル印刷が使われているのか、また実際にバリアブル印刷を依頼する時にどのようなデータが必要になるのかなど、活用事例から発注する際の注意点まで詳しくご説明します。
Index
1.可変印刷(バリアブル印刷)とは?
1-1 可変(バリアブル)の由来
バリアブル印刷とは、固定のデータベースを基に、一部分のみデータを差し替えることによって、一つ一つ異なった文章や画像を印刷する技術のことです。同じ内容のものを大量に印刷できる一般的な方式に対し、「バリアブル(variable)」という言葉が「可変」を意味しており、バリアブル印刷方式は1部ごとに内容を変えて印刷できる柔軟性が特長です。
1-2 バリアブル印刷の特徴
1部1部異なった内容を印刷することができるバリアブル印刷は、私たちにとっても身近なところで広く使われている技術です。例えば、Wordの差し込み印刷や宛名印字などがそうです。
他にもダイレクトメールやバーコード、ナンバーが印字されたチケット類、名刺にもこうした技術が活用されています。
2.可変印刷(バリアブル印刷)の活用事例
2-1 ダイレクトメール(DM)
バリアブル印刷が用いられる印刷物として、最も一般的なものがDMです。
・大量の別版を作ることなくさまざまな宛名のDMが作成可能
通常の印刷方式では、宛名など変更したい箇所ごとに別の版を作成し印刷する必要があるので、費用や納期といった点で大きな負担となってしまいます。
しかし、バリアブル印刷では別版を作ることなく個々で内容の変更が可能です。
・それぞれの顧客に合った内容にできる
宛名はもちろん、顧客に合わせて本文の一部を追加・変更することも可能です。
顧客データを参考におすすめ商品を変えたり、チェーン展開しているお店なら顧客の最寄り店の店舗情報を表示したり、顧客に合ったDMを展開することで集客のアップも期待できます。
2-2 名刺
DMと並んで、バリアブル印刷が多く用いられているのが名刺です。
・各人に対応した名刺が作成可能
部署や名前、内線番号など一人一人内容が異なる名刺。バリアブル印刷なら、社員ごとにデータを作成・入稿するより、臨機応変に対応できます。文字部分だけでなく、個別に顔写真を入れることも可能です。
・少数の名刺ならバリアブル印刷がおすすめ
少数の名刺で十分な場合に、個別の印刷依頼だと金額が割高になる可能性があります。こうした際に、ベースとなるデータを作成し、必要箇所だけ差し替えるバリアブル印刷なら費用を抑えられます。
2-3 チケット・金券類
お金と同等の価値を持つチケット・金券類は、取り扱いが慎重になりますよね。バリアブル印刷でナンバリングをすればさまざまなメリットがあります。
・ナンバリングをすることによって管理が簡単になる
通し番号をつけておけば、簡単に販売数の確認ができます。
また、配布する割引チケットにルールを決めてナンバリングすれば、回収したチケットの番号によって、いつどこで配布されたものか把握できるなど販路の確認にもなります。
・バーコード、QRコードと組み合わせることも可能
番号だけでなく、バーコードやQRコードもバリアブル印刷ができます。バーコードを印刷することによって、顧客情報の管理の効率化を図れるほか、金券ならば使用済みのものかどうかの検査にも使えます。
3.可変印刷(バリアブル印刷)のメリット・デメリット
3-1 バリアブル印刷のメリット
・効率よく宛名印字ができる
大量の顧客データを使って一つ一つ宛名を作成するのは大変な作業で、時間もかかります。しかし、バリアブル印刷ならソフトがあればラクにデータを作ることができ、管理も簡単です。
はじめに顧客のデータベースを作成する必要はありますが、一度作ってしまえば今後も活用できるので、大幅な時間短縮となります。
・顧客に応じた内容でマーケティングに役立つ
宛先だけではなく、内容についても個別に対応することが可能です。
性別や年齢、地域ごとの傾向など、条件に応じて内容を変更し、顧客のニーズに合ったDMを送ることで、不特定多数に向けたDMよりも、効果的に情報を伝えることができるようになります。
さらにはQRコード、バーコードを用いることで、能率的に顧客情報の管理や活用を行なうことができます。QRコードと顧客情報を結びつけることで、例えば遷移先のホームページにどの顧客が何月何日の何時にアクセスしたかなどが分かり、DM一通でマーケティングを担えるのです。
・一つの印刷物でさまざまな情報を一括管理できる
バリアブル印刷によって、一つの印刷物にQRコードやナンバリングなどの異なる情報を複数付与することができます。 例えば入場券と抽選券の一括化や、さらにそこに顧客情報のIDとパスワードを載せるなど、これまで個別に作成していた印刷物を一括して取り扱うことができるので、資源の有効活用にもなると言えます。
3-2 バリアブル印刷のデメリット
・可変箇所の文字量によってはレイアウトが変わってしまう
宛先や企業名、個人名は長いもの、短いものなどさまざまです。長すぎると印刷範囲に収まらないこともあります。そのような場合には修正が必要で、追加で修正費用がかかることもあります。
・フォントによっては対応していないものもある
使用できるフォントは決まっており、特殊なフォントでは希望通りに印刷できない可能性があります。また、特殊文字の場合は文字化けしてしまうことも…。名前には旧字体が使われていることも多いので、宛名部分を印刷する際には注意しましょう。
・可変箇所の数によっては費用の増額が起こりえる
可変箇所を増やすと、その分コストがかかります。また、印刷会社によっては可変箇所の数に制限がある場合もあります。
いくつかデメリットを挙げましたが、これらは事前に相談することによって対応できるものもあります。思い通りの印刷物に仕上げるためにも、印刷会社との綿密な打ち合わせが大切です。
4.可変印刷(バリアブル印刷)の流れと必要なデータ
4-1 バリアブル印刷の仕組み
バリアブル印刷には、ベースとなるデザインデータと、可変部分のデータをまとめた可変データの二つが用いられています。
バリアブル印刷の専用ソフトでこの二つのデータを組み合わせることで、ソフトが自動でデータを作成してくれます。あとは印刷機にこのデータを流すだけで完成するという仕組みです。
ちなみに、どちらのデータもExcelで作成することが多いですが、印刷会社によってはテンプレートが決まっている場合があるので、必ず確認しましょう。
4-2 データを作る際の注意点
可変データは、1行1データとして作成する必要があり、下記の点に注意が必要です。
可変箇所が名前の場合
・姓と名でセルを分けているか
・半角スペースと全角スペースが混在していないか
・旧字体が印刷に対応しているのか
可変箇所が画像の場合
・画像サイズはすべて同じか
・トリミングの位置にずれがないか
印刷会社によって可変データ作成のルールは異なります。 事前にきちんと確認し準備しておけば、スムーズに作成できますよ。
まとめ.可変データで+αの販促を
オフセット印刷とは異なり、複数のデータを用意しなければならないバリアブル印刷は、さまざまな制限や注意点がありますが、使いこなせれば大変便利で有効な印刷方式です。
顧客に応じた印刷物を提供でき、また顧客ごとの情報を適切に管理できるといった点は、マーケティングに大きく役立ちます。
バリアブル印刷を利用することで顧客に寄り添った印刷物を作成し、会社のイメージアップ・集客率アップに繋げましょう!