「華やかさや高級感、特別感を出した印刷物を作りたい」
「さりげないこだわりを魅せたい!」
「偽造防止のチケットを作るにはどうしよう」
…こんなときは金箔や銀箔、白箔や黒箔、凹凸を出す空押しや浮き出し、ホログラム箔などを使ってみてはいかがですか?
この記事では、箔押しの仕組みや歴史、箔の種類などの基礎知識から、おすすめの使い方やデータ作成時の注意点など、箔押しについて知りたい情報を徹底解説していきます。一つ一つ一緒に学んでいきましょう。
Index
1.箔押し加工の基礎知識~仕組み、歴史、箔の種類~
1-1 仕組み
箔押しの仕組みについてみていきましょう。
箔押しとは、箔(箔フォイル)を熱と版を使って紙に圧着、転写させる特殊加工です。熱を用いることから「ホットスタンプ」や「ホットスタンピング」とも呼ばれています。
また、通常の印刷機ではなく、箔押し機と呼ばれる専用の加工用機械が使われます。
箔押しには
・箔(箔フォイル)
・箔押し用の版
・紙
・箔押し機
が必要となります。
仕組みは下図のようになります。
箔はトイレットペーパーのようにロール状になった状態で使われます。
箔や箔版の種類などについては、「1-3 箔と版の種類」で取り上げているので参考にしてみてください。
1-2 箔押しの歴史
箔押しの歴史についてみていきましょう。
日本の箔押しの技術は、漆器や蒔絵に金箔を貼る「金貼り」という技術が起源です。
中世では、既に漆器や上製本に本物の金箔を用いた箔押しが行われていたそうです。
箔は、貴重な経本(写本の時代から)などの装丁にも用いられています。
日本では、明治期~昭和中期頃までは、本に箔押しをするときは紙に卵白などの接着剤を塗り、その上に箔を乗せて圧着し、余分な箔は刃物などで切り取るという作業が行われていました。
その後、1954年にイギリスで「真空蒸着法」という発明がされます。
この発明により、箔のフィルムに着色層、蒸着層、接着層を形成できるようになりました。(これをメタリックホイルといいます。)
着色層が色を表現し、蒸着層がメタリック感を表現し、接着層が転写先である紙に接着する働きを持っています。これらの層の働きにより、細かい表現ができるようになり、工程が減ったことで箔の取り扱いも楽になりました。
日本では1960年から製造されるようになり、多くの商業印刷物に使用されるようになりました。今日では、金以外にも種類が増えたり他の加工と組み合わせたりなど表現の幅を広げ続けています。
1-3 箔と版の種類
箔とは、金や銀・銅などを薄く伸ばしたものの総称です。金を使った「金箔」が一番イメージしやすいかもしれません。
ですが、実は箔には、金・銀・銅以外にもさまざまな種類があるのです!
メタリック箔
華やかさ、高級感、特別感を魅せるといったらこのメタリック箔で決まり!
・メタリック金箔【村田金箔3号金】
箔押しの代表ともいえる定番の種類です。ギラっとした重厚感で、金箔といったらコレ!というほどよく使われています。
さまざまなパッケージや書籍の表紙に用いられるほか、神社仏閣などの日本らしい風情も感じさせ、祝い事にもよく合います。
青金といって少し青みがかった金色が特徴です。
・メタリック金箔【村田金箔6号金】
こちらもよく使われる種類で、関西地方で一般的な金箔の種類といわれています。
赤金といって少し赤みがかった金色をしています。
・銀
スタイリッシュな表現をしたいときに使われています。
白系の用紙に使用すると上品な印象に、黒系の紙に使用すると豪華な印象になります。こちらもよく用いられる種類です。
顔料箔
顔料と樹脂をベースにした光沢感のない色の箔です。
クレヨンのようなマットさが印象的です。インキよりも遮蔽力が強いため、下地の影響をあまり受けません。
ホログラム箔
特殊な偏光性のある光沢をもつ箔です。
簡単に複製できないため、偽造防止用の箔として重宝されています。身近なところだと、紙幣に使われています。
ツヤあり・ツヤなし
箔本来の魅力を生かしたツヤありは、鏡面のように強い光沢を放ち、小さなデザインでも存在感が出ます。
ツヤの有無を指定しないと通常は「ツヤあり」の箔を押します。
キラキラとした輝きが魅力的な箔ですが、あえてツヤを抑えることもできます。
ツヤなしは落ち着いたマットな輝きになり、範囲が大きくても上品で洗練された印象になります。
ツヤなしの金箔は、消金とも呼ばれます。
続いて、版についてです。
箔押しで使われる版は、腐食版(凸版)、彫刻版などが挙げられます。
腐食版(凸版)
亜鉛・マグネシウムなどの板を酸で腐食させ作る版のことです。コストも安く、短時間で作成可能なため、短納期のときにおすすめです。
ただし、版の彫りが浅いため、クッション性の高い厚い用紙などには向いていません。
彫刻版
真鍮や銅などの板を職人が手作業で刻印し作る版のことです。版の彫りが深く、細かい文字や図柄などを表現したいときに適しています。
ただし、手作業のため、コストも時間も要します。
箔には見本帳があるので、印刷会社に相談して用途に合った箔を選んでみてください。
版は加工先によって異なるため、指定が難しいかもしれません。
2.箔押し加工のメリット・デメリット
箔押しにはどのようなメリット・デメリットがあるのかみていきましょう。
2-1 メリット
・一工程で華やかさ、高級感、特別感を表現できる
箔押しをする一番のメリットといえます。
通常の印刷ではこのプレミアム感は演出できません。
印刷には出せない輝きと手触りの違いで、つい手に取ってしまう華やかさがあります。高級感のある商材のブランディングに効果的なのはもちろんのこと、一手間をかけたハンドメイド感も伝わりやすいでしょう。
・箔の種類が多くある
前述した通り、金箔以外にも非常に多くの種類があります。つまり、箔の数だけ表現の幅も広がるということになります。
企業名やロゴマークには気品あふれる金銀の箔、商品券や遊び心を取り入れたいノベルティにはホログラム箔など、箔を変えるだけでがらりとイメージが変わるので手軽にオリジナリティを出すにはもってこいの加工技術です。
2-2 デメリット
・加工代が予想外にかかる
箔押しをすることで、箔の版代、箔押し代が必要になります。
箔の版代は、箔を施す面積によって計算されます。複数のデザインが離れてレイアウトされている場合は、仕上がりのズレや工程の手間などを考えると、一番外側の部分を囲んだ総面積で見積もることが多いです。
そのため、箔押し部分を気軽に付け足していくと、思わぬ高額になることもあります。
・事前確認が必須
用紙と箔の相性の確認は必須です。
凸凹のある紙に箔押しした場合、紙にうまく圧着しないおそれがあり、毛羽立った紙に押した場合には、箔が崩れてしまうこともあります。完成したらイメージが違う…ということも防ぐために、事前に校正を取ることをおすすめします。
また、箔自体も在庫の事前確認が必要です。
あまり出回っていない種類はもちろん、よく使われている種類でも、事前に一言相談しておくと安心です。
3.箔押し加工の活用方法[br]
~おすすめの印刷物・データ作成の注意点や位置~
3-1 おすすめの印刷物
・年賀状
一年の節目に送る年賀状は、日本の大切な文化の一つです。
新年の挨拶状として金箔を使って特別感を出してみましょう。
・ポストカード
デザインの一部分に箔を施すことで、さりげない華やかさを魅せることができます。
ノベルティとしてもおすすめです。
・結婚式の案内・招待状
金箔や銀箔などで華やかさを出しましょう。
タイトル部分だけでなく、背景や模様の一部にもさりげなく使うとオリジナリティUPです。
・クレジットカード、商品券などの金券
偽造防止策として、ホログラム箔を使うことをおすすめします。
ホログラムは特殊なレーザーを使用しており、複製が困難なため、紙幣にも使われています。
・景品
缶バッジやシールなどにはホログラム箔を使ってみましょう。
見る角度によって見え方が異なるため、お子様にも楽しんでもらえるはずです。
3-2 データ作成の注意点や位置
箔のデータを作るとき、どのようなことを注意したらよいか確認していきましょう。
・細かい文字や模様に注意
箔は、通常の印刷のように細かい表現はできません。
箔が擦れたり、位置がズレたりするおそれがあるためです。
文字のフォント数や太さなど、何pt以上だと対応可能か、事前に加工現場に確認しておきましょう。
・印刷部分と箔押し部分のデータは分けておく
印刷現場にデータを渡すときは、インキで印刷する部分と箔押しする部分を分けて渡すようにしましょう。
インキで印刷する部分はフルカラー、箔押しする部分は黒にしておくことが多いです。
・デザインのレイアウトに注意
折り目や断ち部分にデザインをレイアウトしてしまうと、箔が剥がれてしまうおそれがあります。
また、印刷と加工は別の機械で行うため、多少のズレは発生します。箔の周りを縁取るなど、ズレが目立つデザインは避けましょう。
3-3 空押しと浮き出し
「空押し」とは、箔を使わず、箔押しの凸版だけを用いた加工方法です。紙を押すため、くぼみができます。
加工するにあたり
・厚紙であること
・紙が柔らかいこと
が必要条件です。
また、表面が浮き出る加工を「浮き出し」といいます。
どちらも一見目立ちませんが、触るとくぼんでいることが分かるので、さりげないこだわりを出したいときにおすすめです。
まとめ.箔の高級感と特別感を使いこなそう
今回は箔押しについて取り上げました。
一工程で華やかさ、高級感、特別感を出せる箔押しは人気の加工技術です。箔の種類も豊富ですので、その分オリジナリティを出せるということも魅力の一つです。普段の印刷に一手間プラスして、あなただけの作品や新しいブランディングに挑戦してみてはいかがでしょうか。
ご紹介したメリット・デメリットや注意点などもぜひお役立てください。箔押しは繊細かつ高価な加工なので、事前に気をつけていただきたい点も多いです。
そのほか、知りたいことやご不明点がありましたら、お気軽に当サイト『紙ソムリエ』にご相談ください。