紙ソムリエの読み物

【徹底解説】オフセット印刷とオンデマンド印刷の違いと使い分け

印刷について調べた際、「オフセット印刷」「オンデマンド印刷」という言葉を目にしたことはありませんか?
印刷するなら全部同じじゃないか、と思われる方もいるかもしれません。
この二つの印刷の違い、それは印刷の仕組みです。
今回は仕組みを解説するだけでなく、この二種類の印刷をどのように使い分けたら良いか、おすすめの印刷物なども紹介しています。
この記事を読んで、ぜひ自分の希望に合った印刷方法を見つけてください。

1.オフセット印刷とは

オフセット印刷とは、版を使用した印刷方法のことです。
版は印刷に使うハンコのようなもので、あらかじめ印刷する絵柄が焼き付けられています。
版につけられたインクをゴムでできたローラーに一旦転写(Offset)し、さらにそのローラーを用紙に押し当てることで印刷を行います。
オフセット印刷の「オフセット」はこの工程に由来しているのですね。
では次項から詳しく解説しましょう。

1-1 オフセット印刷の特徴

オフセット印刷の特徴として真っ先にあげられるのが、安定した品質で大量の印刷が可能という点です。
また、この方法は細かい文字や線をはっきりと印刷でき、色むらのない綺麗な発色を出すことができます。
しかし、オフセット印刷で試し印刷をする場合は、「版」の製作費用や「用紙」の枚数分の費用がかかってしまうため、1部〜100部程度の少部数を印刷するときにはおすすめしません。

1-2 オフセット印刷機の種類

オフセット印刷には、セットする紙の形によって「枚葉印刷機」と「オフセット輪転印刷機」の二種類の印刷機に分けられます。

・枚葉印刷機
印刷に適したサイズにカットされた紙へ、1枚ずつ印刷する印刷機です。
「枚葉」はこのカットされた紙のことを指します。
紙のサイズや厚みが変わっても印刷ができるため、チラシや冊子などを印刷するのに適したポピュラーな印刷機です。
両面印刷に対応できるように、用紙の表裏を反転する装置が組み込まれたものや、上下に印刷ユニットを配置したものがあります。

・オフセット輪転印刷機
ロール紙(巻取紙)に連続して印刷する印刷機です。
オフセット輪転印刷機は、枚葉印刷機の数倍の生産性を持ちます
大型の乾燥機と冷却装置を持ち、あらかじめロール状の連続した用紙に印刷されるため、大部数の印刷でも短時間で仕上げることが可能です。

1-3 オフセット印刷の仕組み


オフセット印刷の版は、凹凸のない形をしています(平版印刷)
なぜハンコのように凹凸がないのに、インクが印刷したい部分にだけくっつくのでしょう。
その技術に関わるのが、私たちもよく知る水と油の反発性です。
湿し水(上図の「水」)を乗せたとき親油性の部分は水を弾き、その後、油性のインクを乗せると、水と油の反発性によって濡れていない部分にだけインクが乗り、凹凸がなくてもきれいに印刷することができます。
つまり平版印刷ではインクを置きたい部分を「親油性」、置きたくない部分を「親水性」で区別しているのです。
そしてオフセット印刷の工程で最も重要なのが、インクを「版→ブランケット→用紙」という順番で印刷することです。
「版→用紙」ではなく、間に「ブランケット」というゴムに巻き付けたローラーを挟むことで、版がダイレクトに紙に触れず磨耗が起こりにくいため、1000部を超えるような部数であっても問題なく印刷することができます。

2.オンデマンド印刷とは


オンデマンド印刷とは、版を必要としない印刷方法のことです。
印刷データを印刷機に直接流し込んでそのまま処理することで、製版を省き少ない工程で仕上げることができます。
この特性からオンデマンド(On demand)=要求に応じてサービスを提供することに由来して、オンデマンド印刷と呼ばれています。
では次項から詳しく解説しましょう。

2-1 オンデマンド印刷の特徴

オンデマンド印刷の特徴としてあげられるのが、少部数を安価にスピード納品できることです。
オンデマンド印刷は、版を作らずデータをパソコンから印刷機へ直接送って印刷するため、オフセット印刷に比べてかなり素早い対応が可能です。
また版代がかからず、特に少部数において安価で印刷物を作ることができます。
しかし、その分、品質はオフセット印刷に少し劣ると言えます。

2-2 オンデマンド印刷機の種類

オンデマンド印刷には「トナー方式(レーザープリント)」と「インクジェット方式」の二種類の印刷機があります。

・トナー方式(レーザープリント)
粉状のインク(トナー)を使用して印刷する印刷機です。トナー式プリンターは、A6サイズ〜A3サイズの少ない部数の印刷に向いています。
またインクを熱で圧着させることで、乾かす時間がまったくかからず短時間で仕上げることができます。

インクジェット方式
紙にインクを吹き付けて印刷する印刷機です。インクジェット式プリンターは、大型だとオフセットでは難しいB0 サイズ (1030mm×1456mm)まで印刷することができます。
そして、インクに圧力や熱を加えてスプレーのような細かい点で直接用紙に吹きつけるため、色の再現性が高いことも特徴です。

2-3 オンデマンド印刷機の仕組み

先ほどもお伝えしたとおり、オンデマンド印刷がオフセット印刷と大きく違うのは、「版」が不要という点です。
一般的なオフセット印刷の工程が「原稿→製版→印刷→製本・裁断」の4段階なのに対し、オンデマンド印刷は「原稿→印刷→製本・裁断」の3段階で仕上げることができます。

それでは、二種類のオンデマンド印刷機の仕組みについて詳しくご説明します。

トナー方式(レーザープリント)の場合

レーザープリンター(トナー方式のプリンター)は、感光ドラム、レーザー、粉状インク(トナー)を使用した印刷方法です。
マイナスの電荷を与えたもの(感光体ドラム)にレーザーを当てるとプラスに逆転し、マイナスの電荷(インク)が吸着するはたらきを利用して、版を作らずに素早く印刷することができます。
つまり、感光ドラムのインクを乗せたい部分にレーザーを当てることで、一時的にトナーと呼ばれる粉状のインクがくっつくようになるのです。
そして、トナーが用紙と重なったタイミングで強いプラスの電荷を掛けて転写し、その後高温で用紙に圧着させることで溶けたトナーが用紙に定着して印刷が完了します。

インクジェット方式の場合

インクジェットプリンターは、インクを霧状にするノズルとインクを使用した印刷方法です。
印刷工程は非常にシンプルで、印刷機に内蔵されているインクをノズルでスプレーのように紙に吹きつけて印刷します。

3.オフセット印刷とオンデマンド印刷の比較

ここまでオフセット印刷とオンデマンド印刷についてそれぞれご紹介してきました。
次項からいよいよ二つの印刷方法のメリット・デメリットを解説します。
最後に主な機能の比較表も載せているので、手っ取り早く比較したい!という方はそちらをご覧ください。

3-1 オフセット印刷のメリットとデメリット

<メリット>
大ロットの場合、費用が抑えられる
版を使用しているため、大量に印刷する場合1部あたりのコストはかなり抑えられます。
また、一度製版すれば何度でも同じ品質の印刷物を作れることも省コストにつながっています。

高品質できれいな仕上がり
インクが紙にしっかりと密着するため仕上がりが高品質です。
イラストや写真、細かい文字でもにじまず、細部まで鮮明に表現できます。

・6色印刷や特色などを使える
オフセット印刷機はCMYK以外のインクにも対応しています。
金銀、透明インクや蛍光インクなどの特色印刷も可能なので、デザインにこだわりがある人におすすめです。

<デメリット>
小ロットの印刷物だと、費用が割高になる
オフセット印刷は、少部数で印刷を依頼するとコストが割高になります。
あまりにも少ない部数での印刷依頼だと、印刷会社に受け付けてもらえない可能性があるので注意が必要です。

納期に時間がかかる
版を作る時間とインクを乾燥させる時間が必要なので、どうしても時間がかかります。
オフセット印刷で依頼したい場合は、作業時間も含めた余裕あるスケジュールを心がけましょう。

3-2 オンデマンド印刷のメリットとデメリット

<メリット>
小ロットの場合、費用が抑えられる
製版する必要がないため、少部数でもコストを抑えて印刷できます。
1部から対応可能な場合も多く、大量の在庫を抱える心配がないので気軽に印刷できることはオンデマンド印刷の大きなメリットです。

短納期で対応が可能
製版する必要がないため、オフセット印刷よりも作業時間が短く済みます。
急な印刷にも対応できるため、発注~納期まで1日で済む場合もあります。

内容が一部異なるものを刷るバリアブル印刷にも対応可能
DMや名刺のような一部だけ内容を変えたいバリアブル印刷は、版を作る必要がないオンデマンド印刷に向いた形式です。
わずかな修正や内容の変更であれば、早く対応できます

<デメリット>
・大部数の印刷物だと、費用が割高になる
オンデマンド印刷は部数が増えるほど、1部あたりの単価がオフセット印刷よりも高くなります。
仕様にもよりますが、オフセット印刷とオンデマンド印刷のコストは大体200~300部前後で逆転するため、300部以上の印刷はオフセット印刷を利用した方が良いでしょう。

・オフセット印刷と比較すると、仕上がりの質が少し下がる
オンデマンド印刷では版でできる精密さは出せないため、色の精度や品質はオフセット印刷と比較すると若干劣ります。
また、オンデマンド印刷機は特色印刷機能を持っていない場合が多く、6色印刷などの特殊な印刷も難しいでしょう。

3-3 オフセット印刷とオンデマンド印刷の比較表

オフセット印刷とオンデマンド印刷の比較表です。
特にオンデマンド印刷は印刷機のスペックによって機能も異なるので、詳しく知りたい方は依頼する印刷会社に問い合わせましょう。

4.オフセットorオンデマンド?使い分けのススメ

ここからは、それぞれの印刷に向いている印刷物について簡単に紹介します。
すでに印刷物のイメージが決まっている方は、どちらの印刷を利用するか、この項目をぜひ参考にしてください。

4-1 オフセット印刷に向いている印刷物

以下のような印刷物を作りたいときに、オフセット印刷がおすすめです。
印刷部数が大量
高品質な仕上がりにしたい
特色を使用したい
特殊な用紙を使用したい

まず、シンプルな判断基準として、部数が200~300部を超える場合はオフセット印刷をおすすめします。
また、紙やインクなどで凝ったデザインにしたい場合は、オフセット印刷の方がこだわりを反映させやすいでしょう。

特に、
・カラーイラストが大きく使われた冊子
商品画像などが多く使われているパンフレット
大部数を印刷するフライヤー
などはオフセット印刷への依頼がおすすめです。

4-2 オンデマンド印刷に向いている印刷物

オンデマンド印刷に向いている印刷物の要素として以下のようなものがあげられます。 
印刷部数が少数
短納期で納品して欲しい
1部ごとに情報が異なるバリアブル印刷

特に短い納期で少しだけ刷りたい!という方に向いています。
一部だけ変更して作る印刷物も低コスト・短納期で作れるため、オフセット印刷よりも大きくコストを抑えられます。

そのため、
送る相手に応じて1枚単位で印刷するポストカード(はがき)やDM
・細かい内容に応じて複数の種類がある小冊子
所属や名前部分を差し替えて何種類も印刷する名刺
などはオンデマンド印刷での依頼がおすすめです。

まとめ.ニーズに応じてより良い印刷方法を選ぶ

それぞれの印刷の仕組みを知ることで、その特徴も理解しやすくなったのではないでしょうか。
どちらの印刷を使うべきか迷っていて、特にコストパフォーマンスが気になる方は、印刷したい部数で選択することをおすすめします。
ただ、オンデマンド印刷は印刷会社によって機種や能力が異なります。
そのため、仕上がりが気になる方は、オフセット印刷を選択した方がそのこだわりを形にしやすいかもしれません。
よくわからない方、それでも迷われる方は、一度印刷会社に相談してみることをおすすめします。当サイト『紙ソムリエ』でも、オフセット印刷とオンデマンド印刷のどちらが適しているか、適宜ご提案させていただきます。お気軽にお問い合わせください。

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