紙ソムリエの読み物

印刷物の色味のイメージ違いは「色校正」で解決!使い分け方もご紹介

苦労して発注した印刷物。いざ完成品が上がってきたら、なんだかイメージしていた色と違う!と、がっかりしてしまったことはありませんか。

画面上で見た色とも、オフィスのプリンターで印刷して確認した色とも違う…

こういった、色味のトラブルを防ぐための試し刷りの工程、それが色校正です。色校正をすることで、イメージと仕上がりとの差をなくすことができるのです。

この記事では、色校正の種類や使い分け方をご紹介していきます。種類によって値段や質が変わるので、用途に合った方法を選びましょう。理想通りの印刷物を作るために、正しい色校正の方法を学んでみませんか?

1.なぜ、「色校正」が必要なのか

色校正という言葉にあまりなじみがない人もいると思いますが、そもそもなぜ画面上で見た色と印刷物の色が変わってしまうのでしょうか。まずはその理由について説明していきます。

1-1 イメージ通りの色で刷れない理由って?

1、モニターと印刷物では表現できる色が違う

パソコンのモニターの色はRGBで表示されます。印刷物のインクは基本CMYKです。そのためモニターと印刷物では表現できる色が違います。RGBとCMYKについて詳しく解説した記事もありますので、ぜひこちらをご覧ください。

モニター上でCMYKの色を再現することはある程度できますが、モニターのメーカーや種類、設定によって表示される色味が変わるので、一般的なモニター上で色味をチェックするのはあまりおすすめしません

2、インクや紙の種類、加工によって印象が変わってしまう

画面上ではなく、プリンターで出力してみても、完成品と色味が違うのはなぜでしょうか。それは、一般的なプリンターと本番の印刷で使うオフセット印刷機では、使用するインクも印刷方法も違うからです。また、インクの色も原料やメーカーによって少しずつ違います。

他にも、紙の種類によるインクの乗りやすさの違いや、紙そのものの色味、ニスやPP加工といった特殊加工によっても完成品の見栄えが大きく変わってしまうことがあります。

3、個人によってイメージする色が違う

「赤」「青」といった単純な色でも、個人によって鮮やかさや明るさ、黄味寄り・赤味寄りといった色のイメージに違いがあります。「こういう色にしたい」という要望を印刷会社に伝えたいとき、言葉だけでは正しく伝わらないことが多いです。

4、環境光によって色味が変わって見えてしまうこともある

白っぽい蛍光灯、オレンジがかった温かみのある照明、太陽光にさらされる屋外など、環境光によっても色味がかなり変わります。特定の建物の中や、屋外で使用するポスターなどの場合、いざ貼り出してみたら色味がイメージと違ってしまうこともあるでしょう。

1-2 「色校正」ってなに?

色校正とは、印刷物の仕上がりの色を確認するための、試し刷りのことです。一般的なプリンターと比べて、本番で使用する印刷機の性能に近ければ近くなるほど精度が上がります。その分コストと時間もかかります。

印刷本番で色の指標としても使うことができます。色校正がイメージ通りの色にできたら、印刷工場に渡します。こういう色にしたいという要望を的確に伝えることができるのです。

1-3 色校正を行うメリット

色校正のメリット、それはなんと言ってもイメージ通りの色を再現しやすくなることです。

服飾品の広告やカタログ、食べ物の写真を使った広告など、色味がとても重要な印刷物の場合は、色校正の工程は特に重要になります。印刷と実際の商品との間に色味の差があると、消費者に商品の魅力が伝わらなかったり、顧客とのイメージが食い違ってしまったり、売れ行きや評判にも影響が出ることがあります。色の違いが深刻な場合は、刷りなおしが発生するかもしれません。色校正を行えば、その心配はなくなります。

2.お手軽で安価な「簡易校正」

さっそく色校正をしてみたい!でもちょっとハードルが高いな…という方には、簡易校正がおすすめです。お金や時間をかけずに手軽に色校正をしたい場合、どんな方法があるのでしょうか。

2-1 PDF校正

パソコンのモニター上でPDFをチェックするのがPDF校正です。色にあまりこだわらない時だけでなく、以前作った印刷物の改訂版を作るなど、前回と色の変更がない場合は、PDF校正が便利です。もし、改訂版で前回に色を限りなく近づけたい時は、色見本として前回刷った完成品も印刷会社に渡すとよいです。

PDF校正で大切なのは、きちんとした環境・モニターと、正しく書き出したPDFで、しっかり確認することです。

2-2 カンプ校正

レーザープリンターで印刷したものを確認する方法です。普通のプリンターで印刷しただけでは色が違って出てしまうことがありますが、カンプ校正では色が調整された専用のプリンターを使用します。

Japan Color認証制度標準印刷認証を取得した会社なら、一般的なプリンターよりカラーマネジメント・色調整が行われたプリンターを使用して、本番の印刷に比較的近い色で出力することができます。

2-3 プルーフ校正

インクジェットプルーフでの色校正です。本番のオフセット印刷にできるだけ近い色味がシミュレーションされたインクジェット印刷機を使用します。一般的なプリンターよりも仕上がりがずっときれいです。全体の仕上がり確認にちょうどよく、比較的安価ですし、納期も短めです。

しかし、インクジェットプリンター専用の用紙とインクを使用するため、質感はつやつやするなど実際の仕上がりとは少し異なる可能性はあります。また特色の再現や、ニス・PP加工のような特殊加工はできないので、これらの品質をチェックするなら他の方法がおすすめです。

3クオリティを追求したい!「本紙校正」「本機校正」

簡易校正では物足りない、もっと出来上がりに近い状態をチェックしたい方には、「本紙校正」「本機校正」がおすすめです。

3-1 本紙校正(平台校正)

本番の紙と同じものを使用し、平台校正機という機械を使って印刷します。簡易校正よりも仕上がりが完成品にかなり近いです。特色の使用や、ニス・PPなどの特殊加工ができる場合もあります。

簡易校正に比べて納期が長く、版を作って印刷するため、コストがかかります。最低枚数があるので、一枚だけ刷りたい!といったことはできません。非常に高いクオリティで刷ることができますが、印刷機とインクは本番のものではないため、完成品とは仕上がりが若干異なります。

3-2 本機校正

本番で使う印刷機で、完成品と同じ紙・インクを使用して刷る色校正です。まさにリハーサルのようですね!とても再現性に優れています。その分、納期はしっかりと必要です。こちらも版を作って刷り、場合によっては特殊加工などの工程もはさむため、一枚だけ刷ることはできません。かなりコストがかかるため、予算とよく照らし合わせて検討しましょう。

4.色校正の注意

色校正を行う際には、どんなことに注意すればいいのでしょうか。

4-1 印刷で再現できない色に注意

印刷物のデータをRGBで制作すると、実際に印刷した時に色がくすんでしまうので注意です。色校正を行う前に必ず、データをCMYKで制作しているかチェックしましょう。

また、CMYK印刷では4色のインクを少しずつ重ねて色を作ります。重ねれば重ねるほど暗い色味になってしまうので、再現したい色がある場合は、特色を使うことも検討しましょう。

4-2 色校正をチェックする部屋の環境光にも気を付けて

たとえば同じ印刷物でも、青みがかった光(昼光色)の打ち合わせスペースと温かみのあるオレンジ色(電球色)の喫茶店では、見え方が異なるでしょう。どんなにきれいな色を表現していても、環境光によって目に見える色味が変わってしまいます。色校正のチェックは、太陽の明るさに相当する昼白色の蛍光灯の部屋でおこなうのがおすすめです。

ちなみに、印刷物色評価用標準光源という印刷物の色評価のための標準光源として、日本では相関色温度5000Kの「D50」がよく使われています。これは正午の太陽の光に近い明るさで、デザインやレタッチ、印刷会社など色の判断が重要な作業をするところでは専用の蛍光灯を使用して「D50」の環境を作りだしています。

4-3 色校正が思った色と違った場合

色校正が思い通りの色にならなかった場合、元データを専用のソフト(PhotoshopやIllustratorなど)で調節しましょう。印刷機自体の色の調整を行ってしまうと、本番の印刷や増刷の際に色を合わせるのが難しくなります

5.補足:「イメージ通り」をかなえる方法は他にも

5-1 束見本について

冊子や書籍を作る場合、確認用としておすすめなのが「束見本」を作ることです。

束見本とは、印刷物と同じ仕様で冊子を製作し、厚みや重さなどを確認するためのサンプルです。紙に印刷はしないため、紙が白ければ真っ白の本になります。紙の種類で厚みや重さが変わるため、冊子や書籍を製作するときは束見本を作るとイメージをつかむことができます。本の帯やカバー、ブックケースを制作するときにも使用できます。

5-2 オンデマンド印刷

作りたいものが少部数(1~100部未満)で、中程度のクオリティを求めている場合は、オンデマンド印刷を検討するのもよいでしょう。機械のコンディションにより若干の色むらは生じてしまいますが、一般的なプリンターよりも色がきれいに出ます。中綴じ製本も可能で、紙の種類も選べます。部数やページ数が多い場合は、オフセットの方が安価になる場合もあります。詳しくはオンデマンド印刷、オフセット印刷についての記事をご覧ください。

まとめ.納得のいく色校正でイメージ通りの印刷物を!

基本的に色校正の質はクオリティに比例して値段も上がってしまいます。クオリティを追求するなら「本紙校正」、費用がかかっても完璧を目指すなら「本機校正」をおすすめします。どのレベルの色校正が必要か悩ましいときは、印刷会社に見積もり依頼するのもよいでしょう。色校正を試して、思い通りの印刷物を作ってみませんか?

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