紙ソムリエの読み物

「うちわ」の種類は?由来と歴史、目的別の選び方までご紹介!

日本の夏の風物詩「うちわ」。

最近ではパタパタと扇いで涼を取る以外にも、グッズやノベルティ、広告媒体として使われたり、インテリアとして飾って楽しんだりと、一年中楽しめるアイテムにもなっています。

この記事では、日本の伝統的なうちわの歴史や名前の由来などをはじめ、企業のPRとしても使えるうちわなど、日本人にとって身近なうちわというアイテムについて幅広くまとめました。

1.うちわは3種類!「日本三大うちわ」とは?

1-1 香川県「丸亀うちわ」

うちわ国内シェアの9割以上を占めるのが、香川県丸亀市。
その地で年間一億本以上作られているうちわが「丸亀うちわ」です。

丸亀うちわの技術は、江戸時代初期までに確立していたと考えられています。寛永10年(1633年)には金毘羅大権現の金光院住職が、和紙に柿渋を塗った丈夫なうちわに「金」の文字を書いた「丸金印の渋うちわ」を考案。金毘羅参りのお土産品として全国に広まっていきました。

1997年には、経済産業大臣指定の伝統的工芸品に指定されました。
丸亀うちわは一本の竹から作り出されるのが特徴であり、竹の選定から製造まで、実に全47もの工程が職人の手仕事によって行われています。

うちわの形は、()によって主に3種類。

●竹を割って柄を平に削った「平柄うちわ」
現在丸亀うちわの主流となっているのがこの形です。

●竹を丸い状態のまま柄にした「女竹丸柄うちわ」「男竹丸柄うちわ」
細い竹や笹でつくったものを「女竹丸柄うちわ」、太い竹で作ったものを「男竹丸柄うちわ」と呼びます。代表的な丸金印の渋うちわは、男竹丸柄うちわのひとつです。

1-2 京都府「京うちわ」

京うちわは、京都府で作られるうちわです。

「都うちわ」とも呼ばれ、かつては宮廷でも用いられていました。
竹の細骨を放射状に1本ずつ並べた団扇面に、別に作った柄を後から組み合わせる「挿し柄」構造が最大の特徴です。
骨の数は50~100本もあり、多いものほど高級品であると言われています。

京うちわの始まりは、南北朝時代。
明と呼ばれていた中国や、倭寇という日本の海賊により、西日本に伝えられた朝鮮団扇が紀州、大和を経て、京都の貴族の別荘地であった深草に伝わったことが始まりとされています。
飛鳥時代には、神事や祭礼などにも用いられた他、貴族が顔の前にかざしたり、手元を華やかに演出するために用いられたり、権力者への献上品としても重宝されていました。

1-3 千葉県「房州うちわ」

房州うちわは、千葉県の伝統工芸品として千葉県南房総市と館山市で作られています。
竹の丸みを活かして柄が丸くなっており、細い竹を64等分に細かく割いて作られた骨を、糸で交互に編んで作られる繊細な窓が特徴です。

関東でうちわ作りが始まった江戸時代、房州はうちわの原材料となる【女竹】を送り出す産地でした。
諸説ありますが、明治~大正時代には房州では紙を貼っていないうちわの骨作りまでを行い、以降の工程は東京で「江戸うちわ」として仕上げていました。
房州うちわとして一貫生産されるようになったのは、大正10年から。
東京からうちわ職人を雇い入れ、町をあげてのうちわの生産が始まりました。

また、その後大正12年に起きた関東大震災により、東京にあったうちわ問屋の大半が大火に見舞われたことも重なり、房州うちわは日本三大うちわの一つとして大きく発展したと言われています。

ちなみに、うちわの形は主に4種類。

●一般的な丸型うちわ
●卵のような滑らかな曲線の卵型うちわ
●柄が長く、団扇面がコンパクトな長柄うちわ
●直径30cmほどにもなる大きさの大型うちわ

職人たちの手仕事により、団扇面の絵柄に合わせて形状が変えられています。

2.【豆知識】うちわの由来と歴史

2-1 うちわの語源と漢字の由来

諸説ありますが、「団扇うちわ」の語源は「打羽うちわ」であると言われています。
ハエや蚊などの「羽」虫を「打ち」払う道具として使用されていました。
また、「羽」には羽虫以外にも病気や厄災などの意味もあり、それらを打ち払う魔除けとしての役割もあったようです。

現在の「団扇」が日本で使われるようになったのは平安時代から。
中国語で丸という意味を持つ「団」と、観音開きの扉が羽のように開閉し風が起きる様子を表す「扇」を組み合わせた漢字が中国より伝わり、日本でも使われるようになりました。

2-2 うちわの歴史

古墳時代

うちわの起源は古く、うちわの原型となる「さしば」というものが古墳時代に中国から日本に伝えられたと言われ、翳を象った埴輪が6世紀に作られた群馬県の大室古墳群などで出土しています。また、香川県の高松塚古墳の女性群像には、女性が翳を持つ姿が描かれています。
当時伝わった翳は現在のうちわの柄を長く伸ばしたような形をしていました。

平安時代

10世紀ごろに小型の翳を「うちわ」と呼ぶようになります。当時は扇いで涼を取ることにも使われましたが、主に身分の高い人物が顔を隠して権威を示したり、虫や厄災を追い払ったりする道具として使われていました。

戦国時代

黒い漆を塗った網代団扇や、薄い鉄板や革などでつくられた軍配団扇が戦の中で用いられ、軍の指揮用や家紋を示すものとしての機能を果たしました。
現在でも大相撲の行司が立ち合いや判定時に使用している軍配団扇はこの名残です。

江戸時代

江戸時代に竹や紙の技術が発達すると、庶民にもうちわが広く普及していき、扇いで涼を取る以外にも炊事やファッション、虫払いなど、日常の生活道具としてさまざまな場面で利用されるようになります。

また、この頃になると木版技術の向上により、団扇面の絵柄を大量生産できるようになり、浮世絵や和歌、漢詩などさまざまな印刷がされたうちわが一般大衆の手に広く届くようになりました。
「楽しむもの」としての意味が大きくなり、うちわの使われ方が大きく変化したポイントであるといえます。

明治時代~

明治時代以降、日本のうちわの絵柄は海外から高い評価を得て、外国に輸出されるようになりました。
多くはアメリカに輸出され、アメリカの鉄道会社などがPR目的として利用客に配っていました。
国内においても、商家や寺院の配布用としての需要が増し、表面には商品やメッセージ、裏面には名入れなどがされ、これまでの用途に加え、現在のような広告媒体としての意義が備わりました。

3.インテリア・アウトドア・ノベルティ―うちわの選び方

3-1 インテリア・贈り物としておすすめのうちわ

●日本三大うちわ
インテリアや贈り物には、やはり日本の伝統工芸品である「日本三大うちわ」の丸亀うちわ、房州うちわ、京うちわがおすすめです。

中でも、日本画のように繊細で美しく、華やかなデザインが特徴の京うちわは、装飾品・芸術品としての評価も特に高く、国内外問わず喜んでいただけること間違いなしです。
漆や金などの華やかな装飾が施されていたり、飾り台がセットになったもの、壁に飾ることができるものもあったりと、インテリア品としても存在感を放つことでしょう。

3-2 アウトドアで使えるうちわ

●ポリうちわ

アウトドアで使うなら、ポリうちわがおすすめです。
ノベルティなどでよく目にするうちわは、このタイプのうちわかと思います。
これまでご紹介した日本三大うちわと異なり、プラスチック素材でできた骨は丈夫で耐久性があり、屋外でタフに使っても安心です!

3-3 ノベルティ用うちわ

●ポリうちわ
ポリうちわはノベルティとしてもおすすめです。
竹製のうちわよりも生産性に優れ、低コスト・短納期が可能というメリットがあります。
再生素材を使用すれば、商品等のPRだけでなく、企業としてのSDGsな取り組みへの姿勢のアピールにも繋がりそうですね。

●型抜きうちわ
よりオリジナリティあるうちわを作成したい場合には、型抜き加工で指穴をくり抜いた型抜きうちわもおすすめです。
素材は紙製やプラスチック製などさまざまあり、印刷面のデザインはもちろん、形状もオリジナルで作成がですので、用途やコストに合わせて他とは違ったうちわを作成してみてはいかがでしょうか?

まとめ.日本の夏をおしゃれに快適に

歴史も長く、日本人にとって非常に身近で馴染み深い「うちわ」。
扇風機やエアコンの登場により、「涼を取るもの」としてのうちわは減少傾向にありますが、伝統工芸品として、インテリアやファッションの一部として、そして広告媒体としてのうちわは、現在においても伝えられ続けています。
これを機にぜひ生活の一部としてうちわを取り入れ、暑い夏をおしゃれに快適に彩ってみませんか?

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