紙ソムリエの読み物

のし(熨斗)の種類と使い方について

お祝いやお世話になっている方へのご挨拶として品物を贈るときに、のし紙をかけてもらった経験はあっても、のしの意味や種類、使い分けについては詳しく知らないという方もいらっしゃいますよね。

贈るシチュエーションによって、水引の結び方や表書きも変わってきます。
贈る相手に失礼のないように、のしについての知識を深めましょう。

1.のし(熨斗)とはなにか

1-1 のし(熨斗)とは

のしは、かけ紙に貼られた飾り(のし紙に印刷された飾り)のことです。
あわびを薄く伸ばして干したものがのしの起源とされ、生ものの象徴として贈り物に添えられていました。あわびは長生きなので不老長寿の象徴とされていて、結婚などの長く続いてほしいお祝い事に適しているため、使用されるようになりました。

のし紙は、のし・水引・表書き・名入れの4つから構成されます。
かけ紙の上に水引とのしを添えているものが元々のかたちですが、現在はかけ紙に水引とのしが印刷されたのし紙が主流となっています。

のし紙で贈り物を包むことでお祝いの気持ちを表現していますが、これは略式の体裁に過ぎず、場合によっては失礼になることがあるのでご注意ください。

1-2 水引とは

のしの中央にかけられた2色の紐を水引といいます。
水引には「未開封であることを証明する」「魔除け」「人と人を結びつける」という3つの意味があり、贈り物にかける水引は人と人を結びつけるという意味で使用されます。

贈るシチュエーションによって、紐の色や本数、結び方が異なります。
詳しい使い分けについては、「2.のし紙の種類と使い分け」をご覧ください。

また、近年ではのし紙に使用する以外にも、雑貨やアクセサリー、インテリアとして、さまざまなかたちにアレンジされています。

2.のし紙の種類と使い分け

2-1 紅白蝶結び

結び目を何回でも結び直せることから、何回繰り返してもめでたいお祝い事やお礼などに使用します。「花結び」ともいわれます。

出産祝・出産内祝・長寿・迎春・お中元・お歳暮・謝礼・手土産・入学・卒業など、一般的なお祝い事に適しています。

2-2 紅白結び切り

紅白蝶結びと違い、結び目が簡単にほどけないことから、一度きりであってほしいお祝い事に使用します。「真結び」ともいわれます。
紅白結び切りは、結婚祝・お見舞い・快気祝などに使用します。

あわじ結び

結び切りの一つに「あわじ結び」というものがあります。複雑に結ばれ簡単にはほどけないため、結婚祝いで使用されることが多いです。

また、紐の両端が通常の結び切りよりも長いのは、「末長く」という意味合いが強く表現されているからです。華やかで美しい見た目なので、お祝い事にぴったりですね。

梅結び

さらに「梅結び」という結び方もあり、こちらは結び目が梅の花のかたちをしています。梅は寒い冬に耐え、春一番に咲き誇るということから、縁起の良い花として人気です。
結び目が複雑で固く結ばれていることから、あわじ結びと同様に、結婚祝いのご祝儀袋で使用されることが多いです。

結び目がほどけるのかほどけないのか、紅白蝶結びと紅白結び切りをしっかり区別して失礼のないようにしましょう。

2-3 黒白結び切り

同じ結び切りでも、こちらは二度とあってほしくないお悔み事の際に使用します。
お祝い事に適しているのしあわびはつけないのでご注意ください。
通夜・葬儀・法要などの際に使用します。
黒白が一般的ですが、関西地方などでは黄白結び切りを使用する地域もあります。

2-4 鶴・亀

代表的な「紅白蝶結び」「紅白結び切り」「黒白結び切り」以外にも、鶴や亀のかたちに結ばれた水引も存在します。
「鶴は千年、亀は万年」といわれるように、鶴と亀は長寿の象徴で、さらに鶴はつがい(夫婦)で一生を添い遂げることから夫婦円満、亀は潮の流れを読むことから金運や仕事運にご利益があるため、縁起が良い動物として水引にも使用されているようです。

2-5 水引の色と本数

水引には結び方以外にも、色と本数に違いがあります。

・紅白…一般的なお祝い事や贈り物に使用する
・金銀…特にめでたいとされるお祝い事や高価な贈り物に使用する(結婚祝・長寿祝など)
・黒白(黄白)…弔事などお悔みごとに使用する(葬儀・通夜など)

これらは代表的な色で、最近ではカラフルな色の水引も多くなってきています。

本数(慶事の場合)

・3本…5本よりも簡素化したもの
・5本…基本の本数
・7本…5本よりも丁寧にしたもの(出産祝など)
・10本…特にめでたいお祝い事に使用(結婚祝など)

本数(弔事の場合)

・2本…4本よりも簡素化したもの
・4本…基本の本数
・6本…4本よりも丁寧にしたもの

奇数は割り「切れない」=縁起が良いので慶事に用いられ、偶数は割り「切れる」=縁起が良くないので弔事に用いられるようです。ちなみに、慶事に用いられる10本の水引は偶数という意味ではなく、5が2倍でめでたさも2倍という意味合いで使用されています。

水引の色と本数の知識を身に付ければ、表書きが同じ場合でも、水引だけで何の贈り物かだいたい分かるようになりますよ。

3.のし紙の掛け方と表書きのマナー

3-1 内のし?外のし?

包装紙で包む前にのしを掛ける「内のし」と、包装紙で包んだ上から掛ける「外のし」があります。
どちらが適しているかは、お渡しするシチュエーションに合わせて選びましょう。

内のし

のしの表書きが隠れる内のしは、控えめに贈りたいギフトに適しているとされています。
たとえば、お祝いのお礼である内祝いなどは内のしがよいでしょう。
また、宅配便で送るときは、のしが汚れたり破れたりするのを防ぐために内のしがおすすめです。

外のし

贈り物を手渡しするときには、外のしがよいでしょう。
贈り主が一目でわかるため、結婚祝いやお中元・お歳暮、法事などといったたくさんの贈り物が届くシーンに適しています。
表書きがよく見える外のしは、お祝いの気持ちがより伝わるとされ、結婚祝いや出産祝いなどには外のしが一般的です。

3-2 表書きと名入れ

表書き

のし紙(水引の上段)に書く贈り物の目的のこと。
昔、贈り物には品物と数量が書かれた目録を添えていました。その目録が簡略化され、表書きに変化しました。

結婚のお祝い → 寿・御祝
一般的な贈り物 → 御挨拶・御中元・御歳暮・こころばかり・松の葉
お礼をしたい → 御礼・感謝・謝礼
公的な贈り物 → 寄贈・贈呈・贈

その他シチュエーションに応じて、御詫び・奉納・御初穂料などがあります。
「粗品」と書くときもありますが、大事な贈り物には絶対使用しないようにしてください。

名入れ

水引の下段に記載する会社名や肩書、個人名のこと。

連名の場合 → 右から年齢や地位の高い人の名前を書く
4名以上の場合は、代表者の名前と「他○○一同」と左側に書きましょう
夫婦の場合 → 右が男性、左に女性の名前を書く
出産祝のお返しで内祝を渡す場合 → 生まれたこどもの名前を書く

文字は万年筆やボールペンは使わずに、毛筆を使用しましょう。
文字の大きさは、表書きよりも名入れの文字を小さく書きましょう。

4.カジュアルな雰囲気のオリジナルのし紙

ここまで、のし紙の意味や使い分けをご紹介しました。その大切さがおわかりいただけたかと思います。
しかし、ごく親しい友人へのお礼の品や祖父母に渡す敬老の日ギフトなど「正式なのし紙だと、ちょっと堅苦しくなってしまう」「贈り物の中身や包装紙の雰囲気がのし紙とミスマッチ…」と感じたことはありませんか?

そんなときにはオリジナルののし紙がオススメです。
白地に柄が入ったものから色紙・和紙を使ったものまで、お店の雰囲気に合わせて作ることができます。
幅広いギフトを取り扱うお店なら、アットホームな雰囲気を好むお客様に向けてオリジナルののし紙を用意しておくと喜ばれますよ。

ただし、あくまでもカジュアルな場面限定でののし紙となります。渡す相手やシーンを考えて使いましょう。

まとめ.日本文化が誇れるラッピング

日本ならではの風習である贈り物ののし紙。
気心の知れた間柄であればかわいいラッピングも素敵ですが、相手に対してお祝いやお悔みの気持ちをより強く表現したいときは、のし紙を掛けましょう。

ルールや種類が多くむずかしいと感じるかもしれませんが、のしや水引の意味を正しく理解すれば贈るシチュエーションに適したのし紙がすぐに分かります。
相手を思う気持ちをのし紙にのせて、大切な贈り物を届けましょう。

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