リーフレットやパンフレットを手に取ってもらったとき、どんな印象を受けてもらいたいでしょうか。
発信したい情報をちゃんと受け手に伝えるためには、どんな順番で展開するのかも重要です。
漠然とした狙いはあっても、パンフレットの折り方の選択肢が頭に入っていないと、なかなか完成イメージが湧いてこないですよね。
印刷物の折り加工には、「二つ折り」「巻き三つ折り」などさまざまな種類があります。
この記事では、印刷物の折り加工の特徴から活用方法まで詳しく解説します。 折り加工の正しい知識を身につけ、紙媒体の強みを活かした情報発信を目指しましょう。
1.折り加工の役割
印刷物における折り加工とは、一枚の用紙を目的に合わせてさまざまな形に折る加工です。
1-1 折り加工のメリット
・コンパクト
掲載スペースが限られている紙媒体の場合、情報量を増やすために用紙のサイズを大きくすると持ち歩きにくくなりますよね。そこでコンパクトなサイズに折ることで、受け取る人にとっても持ち運びやすく、雑誌の付録やカタログラックなど置く場所でもスペースをとりません。
・形状のレパートリー
印刷された情報に加えて、仕上りの形も一つの情報として発信することができます。同じ内容が印刷された紙でも、どの折り加工を施すかによって異なる印象を与えられます。
細長い短冊状に折られた手紙、くねくねとジャバラ状に折り込まれたパンフレット、綺麗な正方形にたたまれたダイレクトメールなど、誌面のデザインに触れる前に見た目で興味を引いて楽しませられるのは、折り加工の強みです。
・情報整理
用紙に折り目を付けることで、一枚の紙がたくさんの面に分かれて、それだけ多くの情報を載せられます。
さらにページの区切りが明確になり、掲載内容にメリハリがつきます。これにより、一枚物のフライヤーよりも受け手に伝わりやすい効果的な媒体になります。
さらに、ページをめくっていく冊子より情報の境界線がゆるいため、受け手の読む順番をある程度操作しつつ、レイアウトの幅は冊子よりも広がります。
2.代表的な折り加工と活用法
2-1 二つ折り
用紙の面を2分割にする折り加工です。多くの場合は、センターを半分に折る加工を指します。
二つ折りには、あえてセンター以外で折る「ずらし折り」という折り方もあります。
折られている状態でも中面の一部を見せたい場合などにおすすめです。圧着タイプのDMでは、開けやすくするために1センチ程度ずらすことがあります。ずらして出来た隙間を利用して、「ここから開いてください(OPEN!)」などとガイドが入っている場合もありますね。「ずらし折り」にする場合は、天地×左右の仕上りサイズと、展開サイズ、ずらす幅を必ず明記しましょう。
効果
・表紙、中面、裏表紙と4ページ分の面により情報にメリハリをつけることができる
・最も単純な折り加工なので、他の折りに比べてコストを抑えて製作できる
活用例
会社案内、商品紹介、イベント告知物、メニューシートなど
2-2 巻き三つ折り(内三つ折り)
左右の面を内側に折ることで、用紙を3分割する折り加工です。
注意点として、巻き込まれる側の面は、折ったときに端が折れてしまうため、他の2面よりも2mm程度サイズを短く設定する必要があります。
また、「片観音折り」とも呼ばれます。
効果
・情報を6ページに分割して掲載できる
・開いたときにデザインを一つの大きな面で見せ、インパクトを与えられる
・細長い短冊状の仕上がりになるため、カタログラックなどで場所を取らずに掲示しやすい
活用例
DM、会社案内、商品紹介、各種案内状や挨拶状のお手紙、メニューシートなど
2-3 Z折り (外三つ折り)
左右の面が重ならないように折り、用紙を3分割する折り加工です。「外三つ折り」とも呼ばれます。
「三つ折り」とだけ伝えると、「巻き三つ折り」「Z折り」どちらとも解釈できますので、注意が必要です。
折り方の名前がわからなくても、「左右の面を外側に折る」や「Zの形に折る」といった補足情報があると齟齬がなくなります。
効果
・巻き三つ折りよりも展開しやすい
→受け手の視線を誘導しやすく、全体像も見通しやすい!
・関連の低い情報であっても、同じ誌面の中にレイアウトしたときの違和感が少ない
活用例
DM、商品紹介、イベント告知、各種案内状や挨拶状のお手紙など
2-4 巻き四つ折り
用紙を二つ折りして、同じ方向にもう一度二つ折りすることで4面に分割する折り加工です。
「四つ折り」とだけ伝えると、下記で説明する「十字折り」ととられてしまう場合もあります。
仕上がりサイズの天地×左右の寸法を添えておくと良いでしょう。
効果
・冊子にせず8ページ分の異なるデザイン面を持たせられる
・折った状態から簡単に広げられる
活用例
DM、観光案内、ガイドマップ、その他リーフレットなど
2-5 十字折り
用紙の長辺を二つ折りして、それを90度回転させて長辺をさらに二つ折りにすることで用紙を4分割する折り加工です。
「クロス折り」「直角四つ折り」「8ページ折り」などとも呼ばれます。
効果
・巻き四つ折り同様に、冊子にせず8ページ分の異なるデザイン面を持たせられる
・中綴じのような製本加工が不要なので、コストを抑えて同じ情報量を載せられる
・一つの誌面を四等分にするため、比較的クセが少なくレイアウトしやすい
活用例
8ページ編成のフリーペーパー、ポスティング用のリーフレット、ポケットティッシュに挟み込むリーフレットなど
2-6 ジャバラ折り
谷折りと山折りを交互に繰り返して仕上げる折り加工です。折り目の数に限らずジャバラ(蛇腹)折りと呼ぶため、折り目の数は必ず指定しましょう。折り目+1が面の数となります。
「経本折り」や「アコーディオン折り」などと呼ばれることもあります。
効果
・8面以上に区切られるため、掲載できる情報量が多く展開にもメリハリがつく
・折り目が重ならないため、横に開くと片面を総覧することができる
活用例
商品の取り扱い説明書、観光ガイド、地域紹介リーフレットなど
2-7 観音折り
用紙を4つに分割した際の左端と右端の面を内側に折り、さらに二つ折りをする折り加工です。
注意点として、最初に内側に折る左端と右端の面は、紙の厚さがあるので、ぶつからないように他の2面よりも2mm程度短くサイズを設定する必要があります。
また、「両観音折り」とも呼ばれます。
効果
・内側に折り込まれているため、展開時の横の長さに対してまとまりがよい
・左右にワイドに開くため、広げたときの開放感を利用したインパクトの強いデザインが映える
活用例
会社案内、イベント内容、商品紹介など
2-8 DM折り
用紙を二つ折りした後に、巻き三つ折りをする折り加工です。A3サイズの用紙をDM折りにすると、長3封筒に封入することができます。
注意点として、巻き三つ折りの際に巻き込まれる面は、他の面よりも2mm程度短くなるようサイズ設定をする必要があります。
効果
・12ページ相当のデザイン面を持たせられる
・封筒に収めることを想定した折り方なので、情報の圧縮率が高い
活用例
商品紹介DM、イベント紹介DM、店舗紹介DMなど
2-9 マップ折り
ジャバラ折りの後に二つ折りをする、またはその逆の手順で折る折り加工です。
【マップ折りの注意点】
・折る回数が増えるほど、折り位置のずれやシワが出やすくなります。
・たくさん折る加工なので、デザインの際は、折りの順番や折り幅によく注意しましょう。
・地図の折り加工で有名な「ミウラ折り」がありますが、マップ折りとは異なります。
【ミウラ折りとは】
三浦公亮氏が1970年に考案した折りたたみ方。折り目がジグザグになることで重ならず、対角線部分を左右に引くとワンタッチで展開、押すと収納ができる。
※当社は「ミウラ折り」のライセンスを保持しておらず、代理店ではございません。
効果
・16ページ以上に相当するデザイン面を持たせられる
・大規模な施設の地図やタウンマップなど、誌面の情報量がとりわけ多い場合に適している
・中綴じの冊子にするほどの情報量を折って表現できるため、製本コストを抑えられる
活用例
地図、取扱説明書、DM、情報量の多いパンフレットなど
2-10 その他折り加工
ご紹介した折り加工以外にも、折り加工はまだまだあります。
オリジナルや他に希望する折り加工などがある場合は、お気軽にお問い合わせください。
3.折り加工の注意点
3-1 注意点その1「サイズ」
折る前の用紙1枚の状態である「展開サイズ」と、折り加工を施した状態である「仕上りサイズ」は、混同しやすいですがはっきりと異なる情報です。
例として、「A4・二つ折り」のリーフレットを製作したいときを考えてみましょう。この場合、「A4」が展開サイズなのか、仕上りサイズなのかがあいまいです。
半分に折ったらA4サイズになるリーフレットが欲しかったのに、A5サイズに折って納品されてしまった!――なんてことがないように、発注する際は、仕上がりサイズと展開サイズを必ず明確に伝えましょう。
3-2 折り加工の注意点「用紙の選定 厚さ→スジ入れ」
印刷した紙の厚さと折り加工の種類によっては、機械による折り加工が対応できない場合があります。
その場合は、折る位置に対して事前にスジを入れて手作業で行います。
スジ入れが必要な厚さか、機械で作業できる折り方か、サイズか―。発注時には用紙の種類・サイズ・折り加工が重要な情報となります。
スジ入れや人の手が入るほどに、思わぬコストと納期がかかってしまうのでご注意ください。
折り方や紙にこだわりたい場合、またここでご紹介していないようなオリジナルの折り加工を制作したい場合は、事前にサンプルを作って検証を行うことでスムーズに進行できます。
3-3 折り加工の注意点「背割れ」
用紙に折り目をつけてたたんだとき、折り目部分に発生するひび割れのことを「背割れ」といいます。背割れは、厚い紙・折り目部分のインキの濃度が濃いほどよく目立ちます。
【背割れ対策】
・スジ入れ
厚い紙に対して折り加工をする場合は、前項「3-2折り加工の注意点」でご紹介したスジ入れが効果的です。あらかじめ折る位置にスジを入れることによって、背割れを防ぐことができます。
・濃いインキを避ける
折り目部分に色の濃いデザインを入れないことで、背割れがあまり目立たなくなります。
まとめ.販売戦略に応じた折り加工を考える
折り加工にはさまざまな種類があり、それぞれに強みがあり、時に制約があります。
大切なのは、折ることで訴求したい内容がいかに見やすく適切に整理されているかです。
たくさんある情報を網羅するために折ってデザイン面を稼ぐのか、レイアウトの演出として折るのか。封筒やカタログラックや冊子の付録など、決まった場所に収納するために折るのか。訴求内容をもとに、折り加工を施す意義を考えてみてください。
ご紹介した加工の他にも、ご要望やアレンジのご相談などございましたら、ぜひ当サイト『紙ソムリエ』にお問い合わせください。