「初級編」の記事は読んでいただけましたでしょうか。まだまだ分からない用語があるかと思います。
そこで今回は「中級編」です。もう少し踏み込んで、より言葉や単語を理解することができれば、不安を解消し、もっとスムーズに業者とのやり取りができるでしょう。
前回の初級に引き続き、印刷に関してもう少し深く理解できるよう、私たちが厳選する印刷用語を分かりやすく解説していきます。
詳細が解説されたページのリンクも記載しているので、気になる方はぜひそちらも参考にしてみてください。
1.デザインでよく使われる用語
1-1 レイアウトに関する用語
カンプ
印刷物の仕上がりイメージの見本。
コンプまたはコンプリヘンシブとも呼ばれます。
ラフよりも印刷物のイメージにより近い体裁確認用の出力物で、相手との内容の最終確認に用いられます。
組版
原稿の指定をもとに、テキストや図、画像などを配置していく作業。
特に文章を配置する際に、書体やサイズ、行送りなどを調整して体裁を整えていきます。
もともとは文字通り、活字を一文字ずつ「組」んで「版」を作る作業でしたが、最近ではデータ上でレイアウトを整えることを指す場合が多いです。
ベタ組み
文字間を調整せず均等に配置する文字組み。
日本語のフォントは、すべて仮想ボディという正方形のなかに収まるように作られています。
そして基本的に文字をそのまま配置すると、仮想ボディに合わせてぴったり並べた組み方になり、それを「ベタ組み」と呼びます。
また、仮想ボディではなく、字面(実際の文字の大きさ)の幅に合わせる場合は、「ツメ組み」と呼びます。
アタリ
レイアウトのイメージをつかむために、画像を配置する場所に仮の画像を置くこと。またはその画像。
まだ実際に使う本画像が入稿していない場合や、作業中にソフトの動作が重くならないように使われます。もし最終データまでに本画像に差し替えるのを忘れても気づけるように、本画像よりも解像度が低いものや、画像補整が済んでいないものを入れる場合が多いです。
また、レイアウト時にイラストや写真などを配置する範囲を指示するために書かれる線を「アタリ罫」と言います。
Adobe Illustrator、Photoshop、InDesign
現在デザイン制作において主流で使われているソフトウェア。
アメリカの「Adobe Systems」が提供しています。読み方はアドビ。
Illustrator(イラストレーター)はデザイン制作に使われ「イラレ」と略称されることもあります。
Photoshop(フォトショップ)は画像編集ソフトです。「フォトショ」などとも略されますね。
InDesign(インデザイン)は、複数ページにわたる印刷物を編集する際によく使用されます。
1-2 色に関する用語
オーバープリント
色を重ねて印刷すること。
主に版ずれで紙の地の色が見えてしまうのを防ぐために行われる処理です。
背景を塗りつぶすことで多少ずれても紙の地の色が見えることはありませんが、重なった部分は色が混ざって印刷されます。
このため、少しのずれでも白が見えやすく目立ちやすいK100%の小さな文字などに使用されることが多いです。
詳しくはこちらでもご紹介していますのでご覧ください。
DIC、PANTONE
どちらもインキ会社が出している特色用のインキ。
特色用のインキは会社ごとに数百色以上取り扱っているため、特色を使う場合は「会社+色の番号」で指定する必要があります。
DICはDIC株式会社(旧:大日本インキ化学工業)が出しているインキで、PANTONEはパントン社(アメリカ)が出しているインキです。
詳しくは「特色」の記事をご覧ください。
金赤
黄みを帯びた鮮やかな赤色。
金赤の定義は特になく、人によってイメージも使われ方も異なります。
マゼンタ100%:Yイエロー100%が主流ですがそれ以外にも、マゼンタ90%:Yイエロー100%、DIC156~158や単に朱色っぽい赤色を指している場合もあります。
このためもし金赤を印刷に使いたい場合は、印刷会社とのイメージのすり合わせをしっかり行うことをおすすめします。
1-3 印刷物の各所の名称
見開き
ページを開いたときに対になる左右のページ。
もしくはその左右のページをまたいでレイアウトされたもの。
天地
印刷データの上下を表す用語。
天が上部、地が下部を示します。
ノド
本を綴じる際の内側の部分を表す用語。
本を開いたときの中心部分で、文章などがノドに近すぎると読みづらいため、15~20mmの余白を置く必要があります。このノドから紙面内の絵柄までの余白をノドアキといいます。
小口
本を綴じる際の外側の部分を表す用語。
本を開いたときページの両端にあたる部分で、製本工程で文章などが一緒に断裁されてしまわないように、小口から5mm以上は余白を置くのが一般的です。
ノンブル
ページの端に記載されるページ番号を示すもの。
実際にノンブルを付けるときは表紙や表紙の裏(表2)を飛ばして本文の1ページ目やそれ以降から振っていく場合が多く、ノンブル=実際の冊子のページ数というわけではないため注意が必要です。
ノンブルという名前は英語の「number」にあたるフランス語のnombreに由来しています。
2.校正でよく使われる用語
2-1 校正時によく使用される用語
初稿
最初の原稿。
校正が繰り返された修正後の原稿と区別して、修正前の原稿を初稿と呼びます。
同じ読みに「初校」がありますが、これは初稿をもとに印刷会社が作成する「最初の校正」です。
念校
校了の前に、もう一度念のために行う校正。
これは行う場合と行わない場合があります。
最終確認のために行うもので、ここで問題がなければ校了になります。
責了
印刷会社の責任で校了すること。
「責任校了」の略で、校了前の校正で修正箇所が少ない場合や納期が迫っている際に行われることがあります。
責了の判断を下した後に、修正することは基本的にできないため慎重に判断しなくてはなりません。
色校正
実際に印刷を行う前に、データや色合いを確認するために行う校正。
画面上と印刷物では再現できる色域に差があるため、色校正がイメージ通りに仕上がっているかどうか確認しておくことで、実際の印刷で失敗を減らすことができます。
実際に商品を印刷するときと同じ印刷機を使う「本機校正」と、校正用の出力機を使う「簡易校正」があります。
色校正について気になる方は、ぜひこちらの記事もご覧ください。
3.紙選びでよく使われる用語
3-1 紙の厚さ、重さに関する用語
連量
印刷用紙の厚さ・重さを表す方法。
ある規定の寸法の紙を1,000枚重ねたとき(これを1連〈1R〉と呼びます)の重さを表していて、紙の種類や元の寸法にもよりますが、基本的に値が小さいほど薄くて軽い紙だと言えます。
寸法は、四六判や菊判で示されることが多いです。
単位はkg。
例えば「コート90kg」と記載があるとき、この紙は1,000枚重ねたとき90kgになる厚さのコート紙ということがわかります。
「斤量」と呼ぶ場合もあります。
坪量
印刷用紙の重さを表す方法。
紙一枚における1㎡当たりの重さを表していて、値が小さいほど軽い紙だと言えます。
単位はg/㎡。
例えば坪量が「127.9g/㎡」のとき、この紙は1㎡で127.9gの重さの紙だとわかります。
「メートル坪量」と呼ぶ場合もあります。
3-2 主な紙の種類
クラフト紙
茶色い色が特徴的な高い強度を持つ紙。
他の素材よりも繊維が長いクラフトパルプを原材料にしているため、破れにくくて丈夫です。光沢がなくざらざらとした質感となります。
クラフト紙が茶色な理由は、繊維が傷み強度が落ちる漂白剤を使わないためです。
また比較的単価も安いため、包装紙や紙袋などによく使用されます。
ケント紙
しっかりした厚みと硬さがあり、筆記適性も高い紙。
表面にハリがありなめらかで透き通るような質感です。
化合物とパルプを混ぜ合わせた合成紙で、優れた表面強度と筆記適性を持っています。
厚みと強度を兼ね備え、画材を問わず扱いやすいため、美術の授業で使用されることもあります。
アート紙
厚みがあり写真の表現性に優れた紙。
表面に薬品が塗布されている塗工紙で、コート紙よりも強い光沢があります。
インキの発色が良く色の表現に優れているため、フルカラー印刷の写真集や画集、ポストカード、カタログなどにも使用されます。
4.印刷・加工でよく使われる用語
4-1 印刷技術に関する用語
線数
印刷物の網点のきめ細かさを示す値。
1インチ(25.4mm)あたりに並ぶ網点の数を表していて、175lpiの場合1インチに175個の網点が入るレベルの細かさということになります。
線数が大きいほど網点は目立たなくなりますが、大きすぎると網点がつぶれてしまう場合があるため注意が必要です。
単位は「lpi(line per inch)」や「線」。
また用紙によっても適切な線数は異なるため、印刷物に合わせて選択しましょう。
掛け合わせ
二色以上の色を重ねて色を表現すること。
印刷機はこの掛け合わせによってさまざまな色彩を表現しており、例えば「紫」はM(マゼンタ)とC(シアン)の掛け合わせによって表現されています。
合わせる色の数によっては総インキ量が多くなってしまい、乾きづらかったり裏移りなどの汚れが発生したりする場合があります。
版ずれ
印刷物の版がずれて印刷されてしまうこと。
印刷はCMYKの四色の版を重ねて色彩を表現しているため版の位置がずれると、色がブレてぼやけているように見え、隙間に紙の地の色が出てしまう場合もあります。
特にリッチブラックなどの四色を掛け合わせた細い線や、小さい文字だとずれが分かりやすくなってしまう場合が多いです。
そんなときはオーバープリント処理や、リッチブラックの代わりにK100%を使用するようにしてみましょう。
4-2 製本・加工に関する用語
面付け
印刷物を作る際に、用紙に各ページのデータを並べて配置すること。
特に複数ページの印刷物は、一枚の大きな印刷用紙にまとめて複数ページを印刷し、それを折りたたんでまとめたものを断裁することで本の形になります。
このため面付けの作業でミスがあると、ページの順番がおかしい「乱丁」やページが抜けてしまう「落丁」が起こります。
折丁(おりちょう)
複数ページが面付けされた一枚の大きな印刷用紙を、1ページ大の大きさにまで折りたたんだもの。
ページ数が多い場合はこの折丁を複数重ねて糊や針金で止めることで冊子が作られます。
また、正しい順番に面付できているかを確認するために作るものを「折丁」と呼ぶ場合もあります。
PP加工
紙の表面にフィルムを貼ることで表面をコーティングするラミネート加工の一種。
PPはポリプロピレンを略した用語です。
主に冊子の表紙やカバーなどに用いられ、傷や色移りから印刷面を保護できます。
また、光沢があり発色も鮮やかに見えるため、高級感を出したい場合にも使用されます。
主に表面につやがあるグロスPPや、つやを抑えたマットPPなどが存在します。
エンボス加工
インキやフィルムなどは使わず、型押しによって紙に凹凸を作り文字や模様を浮き出させる加工。
凸版と凹版で紙を挟むため、表面はでっぱり裏面はへこんだ状態で仕上がります。
印象的な手触りで高級感を演出できるほか、視覚障害を持つ方に向けた点字などもエンボス加工が活用されています。
またエンボス加工とは逆に表面がへこみ裏面がでっぱる加工は、「デボス加工」と呼ばれます。
箔押し
箔を熱と圧力で紙に転写する加工。
箔とは金属を薄く伸ばしたもので、金や銀のほかにも赤や青、ホログラムなどたくさん種類があります。
通常のインキでは表現できない光沢や華やかさがあり、高級感もぐっと増すため、冊子以外にも名刺やポストカードなど、さまざまな場面で利用されています。
またエンボス加工と併せて利用することもあります。
詳しくはこちらもご参照ください。
まとめ.印刷用語を覚えれば発注もスムーズに
以上が印刷用語の中級編になります。
これまで耳にしたことがない単語や手法も、いくつかあったのではないでしょうか。
このような印刷用語を頭に入れておくだけでも、印刷会社に自分の疑問や要望をスムーズに伝えることができるでしょう。「どこかで聞いたことがあるな…」と思われたら、初級編と併せてこちらをご参照ください。
次回はいよいよ上級編!さらに高度なデザインや印刷技術に関する用語について詳しく解説していきます。今回の中級編よりも専門的な用語について深く知りたいという方は、そちらもぜひ参考にしてみてください。