紙ソムリエの読み物

型抜き加工とは?用途、メリット・デメリット、注意点まで

「ぱっと目を引くようなチラシをつくりたい」
「小さな子どもが扱うから角の丸いカードをつくりたい」
「他の印刷物とカタチで差別化を図りたい!」
こんなお悩みはありませんか?

そんなときは型抜き加工がおすすめです。
見た目のデザイン性以外にも、ファイルにポケットを付けたり、お子さまが触れるものの角を丸く落とすことで安全にしたりといったさまざまな付加価値をもたらすことができます。

こちらの記事では、型抜き加工の種類や加工方法などの基礎的な知識と、おすすめの使用例をご紹介します。型抜き加工を使ってより魅力的な印刷物にしましょう。

1.型抜き加工の種類・特徴

1-1 型抜き加工とは

型抜き加工とは、断裁や折りなどと同様に印刷した後に施す加工のひとつです。
刃のついた抜き型をつくり、用紙に押し当てて圧力をかけて抜くことで、型通りの形に仕上げます
曲線のある印刷物は断裁では表現できないため、多くに型抜き加工が用いられています。
また、チラシやPOPなど型抜き加工のみで完結する場合と、封筒やカレンダーのように型抜き加工をした後で別工程を施す場合があります。

1-2 型抜き加工の種類と特徴                                                   

型抜き加工には、大きく分けて「用紙を1枚ずつ抜く方法」と「複数の用紙を重ねて抜く方法」の2種類があります。
型抜き加工の方法については、つくりたい印刷物の仕様(用紙の厚さ、型の形、数量、納期など)によって適した方法を業者が選定するため、発注する際にそこまで意識する必要はないかもしれません。気になる方は下記をご参照ください。

用紙を1枚ずつ抜く方法

木の板に刃を取り付けた型を用いて抜く方法です。
主に3つの方式があります。

トムソン加工

印刷された用紙を機械にセットして、印刷機のように自動で1枚ずつ型と金属の板で用紙を挟んで抜く仕組み。
アメリカ合衆国のトムソンマシン社のトムソン型機械が由来。
使用する型は「トムソン型」と呼ばれる。関西圏に多い名称。

ビク抜き

用紙を1枚ずつ(2枚、3枚ずつの場合もある)手差しでセットして抜く仕組み。
ドイツのシュナイダー社のビクトリア式活版印刷機を、抜き加工用に改造した機械から由来。
使用する型は「ビク型」と呼ばれる。関東圏に多い名称。
「トムソン加工」と同義で使われる。

ハイデル

円筒形の圧胴(シリンダー)に用紙を巻き付けて、型に転写するように抜く仕組み。
ハイデルベルグ社のシリンダー打抜き機が由来。
薄紙の抜きに優れ、高い見当精度をもつ。

近年では加工する機械にかかわらず「木の板に刃を取り付けた型」という意味でトムソン型、ビク型という言葉が使われることがあるようです。

用紙を複数枚重ねて抜く方法

用紙を重ねて一度に抜くことから、強度の高い金属を加工した金型を用いて抜く方法です。
トランプやUNOのカード、メモ帳や付箋など同じ形で、一度に複数の用紙を抜くのに適しています。
加工方法としては2つに分かれます。

ブッシュ抜きポンス抜き

鋳物の歯型を使って、製本された冊子や500枚くらい重なった紙を一気に抜く。
ボール紙などの厚紙にも対応できるが、細かく複雑な形を抜くのには不向き。

エキセン抜き

エキセン刃と呼ばれる、封筒の角を抜く刃を上下に動かし4角を抜く方法。
主に封筒の抜き加工に用いられ、一気に300~500枚ほど加工可能。
トムソン抜きで作る封筒と比べて紙の廃棄部分が少なく、低コスト。
ミシン目や複雑な窓の加工はできない。

その他の方法

プロッターカット

カッター刃をコンピュータ上で操作してカットする方法。
「カッティングプロッター(カッティングマシン)」を使う。
抜き代が不要なので費用を抑えられ、小ロットやサンプル作成向き

レーザーカット

レーザー光を照射してカットする方法。
「レーザーカッター(レーザー加工機)」を使う。
抜き型やカッター刃は使用せず、レース模様のような繊細な形でも再現可能。
レーザーで焼き切るため切断面が焦げやすく、基本的に紙の加工には不向き。

2.型抜き加工のメリット・デメリット

2-1 型抜き加工のメリット:形による情報伝達

形による情報伝達は、型抜き加工の大きなメリットのひとつです。

たとえば、カフェのショップカードをコーヒーカップの形にしたり、クリスマスイベントのチラシをツリーの形にしたり…イラストと形を組み合わせることで、内容を読まなくても一目で何に関する印刷物なのかを伝えることができます

また、たくさんのチラシが並んでいるなかでも、特徴的な形をしていると思わず目が行きますよね。キャラクターの形なら小さなお子様も喜ぶかと思います。

このように型抜き加工をすることで、情報伝達と同時に注目度アップも期待できます。

2-2  型抜き加工のメリット:機能性の付加

型抜き加工は、形状を変える以外にも工夫次第でいろいろな使い方ができます。
紙の会社案内にポケットを取り付けて可変的な情報をまとめたチラシを入れたり、スリットを入れて名刺を差し込めるようにしたりすれば、営業用の資料もバラけずに済みますよね。
デザイン面だけでなく、機能的にもワンランク上の印刷物が作成できる型抜き加工。
型から製作する場合は、加工のサイズや位置などお好みの仕様にカスタマイズできます。

2-3  型抜き加工のデメリット:初回は型の製作費がかかる

型抜き加工は先ほどご紹介したような金型を製作する必要があるため、初回は当然その費用が発生します。
2回目以降に同じシルエットで製作する場合は、型が劣化せずに残っていれば流用することが可能です。
定形封筒などの汎用的な型は、加工業者が保管している在り型を使える場合もあります。しかし、型はそのときに使用する用紙によって刃の高さなどを微調整するので、型があるからといってすぐに作業を開始できるわけではありません。

2-4 型抜き加工のデメリット:製作時間がかかる

例えば「2つ折りの印刷物」と「型抜き加工+2つ折りの印刷物」では、後者の方がより多くの加工時間を要します。
ただ単に一工程増えるだけではありません。加工前には刃が用紙に対して均一に圧力をかけられるようセッティングし、型の形によって回転数を調節して慎重に作業を進めます。なかには手作業の工程もあるため、型抜き加工は手間ひまかかる加工なのです。
そのため、納品まであまり時間がない印刷物には向いていませんすぐに発信したい情報の場合は、他の加工を検討してみてもよいかもしれません。

3.型抜き加工の活用方法

3-1 型抜き加工の使用例 型抜き+2つ折り

キャラクターの輪郭に合わせて型抜き加工をすることで、絵柄をより強調することができます。
また、表紙のみを型抜き加工して中面を少し見せることによって、一味違うおしゃれな仕上がりになり、「開くとなにが書いてあるんだろう?」という興味をもってもらうきっかけにもなります。
2つ折りと言えば多くが四角い仕上がりです。その中で曲線のある仕上がりはオリジナリティがあり、とても魅力的です。

3-2 型抜き加工の使用例 名刺(角丸加工)

印刷物の角を丸くする加工を「(かど)(まる)(角R)加工」と言います。
角丸加工を施すことによって、柔らかい雰囲気に仕上がります。また、角でケガをしてしまうリスクを減らしたり角が折り曲がりにくくなったり、さまざまなメリットがあります。
名刺の他にも、厚紙で作られることの多いメニュー表や、絵本やカードゲームといった子供を対象とした印刷物も角丸加工が施されることが多いです。
角丸加工は断裁によって加工することもありますが、型抜き加工の方がなだらかな仕上がりになります。きれいさを重視する場合には、型抜き加工を選択しましょう。

3-3 型抜き加工の使用例 窓付き封筒

封筒にも型抜き加工が用いられています。封筒は、1枚の用紙を折ってつくられています。
折る前に用紙を型抜き加工することによって、さまざまな形の封筒に仕上がります。
指定部分に穴をあけてビニールなどの透ける素材を貼ることで中身が見える「窓付き封筒」の窓も、型抜き加工です。長方形の窓が一般的ですが、型さえ作ればいろんな大きさ・形の窓を付けた封筒が作れますよ。

3-4 型抜き加工の使用例 チケット(ミシン目)

チケットや壁掛けカレンダーなどの用紙を切り離して使用する印刷物には、切り離しやすいように切り込みを入れる「ミシン目加工」がおすすめです。
切り離しの位置に点線を印刷し、はさみやカッターで切り離すよう促すこともできますが、ミシン目を入れれば道具を使わずに切り離すことができるのでとても便利です
小さなお子様が使用する場合は、切れ目の間隔を細かくすればより切り離しやすくなりますよ。

3-5 型抜き加工の使用例 店頭POP

商品をアピールするために設置する店頭POPも、型抜き加工をすることによってさらに目立たせることができます。

上の画像の「新商品」と書かれた2種類のPOPは「スイングPOP」と呼ばれ、両面テープで好きな場所に貼って使える手軽感からとても人気です。丸型・四角型が一般的ですが、星型やハート型、アピールしたい商品の形など好きなように作れます。
右下の卓上POPは「TAKE OUTできます」という内容に合わせて袋を持った手の形になっています。そのおかげで、テイクアウトメニューのPOPであることがわかりやすくなっています。

このように、形を変えることによって内容をよりアピールできるのです。

4.型抜き加工を頼む前に確認したいこと

4-1 型抜き時の絵柄のズレについて

型抜きをするための指標となる「仕上がり線」をデザインデータに入れるのですが、仕上がり線は、デザインを一回り大きく縁取るように入れましょう。
加工時にどうしても約1~1.5mmのズレが発生してしまうため、仕上がり線のギリギリまで背景色をつけてしまうと、型抜きをした際に周りの白地が見えてしまいます。

仕上がり線の外側に3mmほど塗り足しを行っておくことで、ズレがわかりにくくなります。
白い縁取りの場合は、この点は気にしなくても問題ありません。
塗り足しの重要性については、こちらの記事でも扱っていますのでご覧ください。

また、仕上がり線のギリギリに文字を置くと同じように少しでもズレたときに切れてしまうので、文字は仕上がり線のなるべく内側に留めましょう。

4-2 型抜き加工と用紙の相性について

型抜き加工にはコシがあり、パリパリとした用紙が適しています対してコシがなく、やわらかい用紙、ユポやストーンペーパーなどの特殊な用紙は相性が悪い場合が多いです。
また、薄い用紙は機械で型を抜く際に位置がずれやすいため、対応できないことがあります。
いざ加工に進めたときに、想定した型抜き方法が合わなかった…とならないよう、使いたい用紙の厚さや種類は事前に伝えておきましょう

4-3 型の製作日数、保管期間

型の製作にかかる日数は、金属製の型か木の板に刃をセットするビク型かなどの型の違いの他に、線の細かさや面付数による調整する箇所の多さ、作業現場の仕事量によって大きく変動します

初回の型製作の際は、余裕をもった進行を心がけることが大切です。

また、一度製作した型は保管してあれば再度使用することができます。しかし、保管期間は1年~2年など業者ごとに異なるため、依頼する業者に確認することをおすすめします

まとめ.型抜き加工を使いこなして一つ上の印刷発注

印刷における型抜きは、「見た目の差別化」、「ポケットやミシン目などの機能付加」、「ユーザーへの安全配慮」といった要素を求めている方へおすすめの加工です。
費用と時間がかかる繊細な工程です。コスト感や納期、紙の選び方や、絵柄の向き不向きについては、事前に加工会社さんとよく相談しておきましょう。
型抜き加工にトライしたいけど、どう頼めばいいのかわからない…。当サイト『紙ソムリエ』では、印刷後の加工もしっかりフォローいたします。ご相談をお待ちしております。

ご相談・お問い合わせはこちらから
ニックネームでOK
具体的な相談がしたい
読み物一覧に戻る
その他のキーワードで探す
もっと見る
シリーズで
まとめました
MENU CLOSE