紙ソムリエの読み物

色のイメージと配色について 前編

表色系について」の記事は読んでいただけましたか?特に表色系のPCCSのトーンは、配色を行う際に知っているととても役立つ知識になりますよ。 以前解説した「色のイメージ」では、色ごとにさまざまな心理的効果があることを解説してきました。今回はその知識を活かして、老若男女のあらゆるターゲットやさまざまな目的・場面ごとに好まれる配色、季節や色のイメージや心理的効果から作られる配色について前編と後編に分けてご紹介していきます。

1.「ターゲット」と「目的や場面」を意識して配色する

デザイン制作をするときは、どのような人に向けて、どのような目的で、何をアピールしたいのかを考えることが重要になります。これは配色にも大きく関わってくることです。

色の見え方、色に対するイメージや好みは、個人によって異なります。その中でもさまざまな調査や研究などから、老若男女のさまざまなターゲットや、目的や場面によって好まれる配色の傾向があることがわかってきています。

例えば、子供が遊ぶおもちゃが茶色や灰色などの低彩度な配色だとどうでしょうか?
老人ホームのチラシがビビッドトーンのカラフルな配色だとどうでしょうか?

なんだか違和感を覚えませんか?子供のおもちゃは鮮やかでカラフルなイメージの配色、老人ホームのチラシは落ち着いたイメージの配色が適している…と感じるのではないでしょうか。

このように、ターゲットや目的・場面それぞれにイメージを持ち、好まれる傾向の配色があるのです。

色の見え方、イメージは個人差があり配色も自由ですが、感性だけではイメージと離れてしまう場合もあります。より多くの人に受け入れてもらえるよう、ターゲットや目的・場面ごとに好まれる傾向の配色を理解し、それを考慮しながらデザインすることが大切です。

1-1 性別・年齢別で好まれる傾向の配色

子供に好まれる傾向の配色

低年齢の子供は見え方が未発達で、微妙な色合いを見分けることが難しいため、ビビッドでコントラストの強いものに目を引かれます。暖色系のポップな配色で、楽しそうで明るいイメージの配色が好まれます。少し成長した年齢になると、寒色系を加えたカラフルな配色も親しまれます。

高齢者に好まれる傾向の配色

全体的に低彩度の色を中心にした穏やかで落ち着いたイメージの配色が好まれます。ですが、コントラストが弱いと文字などの可読性が低くなり読みづらくなってしまうため、背景色と文字を読む部分の色のコントラストは強くなるように工夫しましょう。

男性に好まれる傾向の配色

男性には、黒やグレーなどの暗めの無彩色と青などの寒色系の色を合わせた、クールでかっこいいイメージの配色が好まれます。暗い無彩色で重厚感を表現し、寒色系の色でクールさや爽やかさを与えることができます。色数も少なめに配色した方が、より男らしいイメージになるでしょう。

女性に好まれる傾向の配色

ピンクや赤を使った配色は、女性に好まれる傾向の配色として、多くのデザインに使われます。色相はピンクや赤を主軸に、パステル系の配色でふんわりとした柔らかいイメージの配色にしたり、ビビッド系の配色で活発なイメージの配色にしたりと、用途によって印象を変えることが大切です。

1-2 さまざまな目的や場面ごとに好まれる傾向の配色

自然なイメージに好まれる傾向の配色

緑や茶色系といった、土や木・草などの実際に自然の中にある色で配色すると、ナチュラルなイメージの配色が作れます。自然でエコなイメージのデザインを作りたいときに適しています。

ビジネスなイメージに好まれる傾向の配色

明るい無彩色の白をベースカラーとし、メインカラーやアクセントカラーに青系の色を使用した配色がおすすめです。信頼感や清潔感がありクリアな印象になるため、ビジネスなイメージに好まれる傾向の配色になります。

食品のイメージに好まれる傾向の配色

赤・オレンジ・黄などの暖色系の色や、野菜を連想させる緑系の色など、実際の食品に近い色で配色すると食品をより美味しそうに見せるデザインになります。逆に、実際に食品には存在しないような青や紫などの寒色系の色は、なるべく避けるようにしましょう。

高級なイメージに好まれる傾向の配色

黒などの重厚感のある色と、中〜低彩度の金や紫といった上品な色を組み合わせて配色することで、落ち着きをもった高級なイメージの配色になります。高明度・高彩度な紫や金を組み合わせた配色にすると、派手でゴージャスなイメージの配色になります。

和風なイメージに好まれる傾向の配色

全体的に低彩度な緑系や赤系の深みのある色を組み合わせて配色することで、和風なイメージの配色になります。抹茶や和菓子などの日本らしさを連想させますね。落ち着いた印象なので、お寺や旅館などの伝統的なものに合うデザインが作れるでしょう。

2.季節のイメージ配色

2-1 春のイメージ配色

春のイメージで、最初に浮かぶものといえば「桜」ではないでしょうか?

お花見のイメージで、淡いパステルカラーのピンク色が、春に好まれるイメージカラーになります。また桜が咲いた後に、5月頃からだんだんと芽吹いてくる新緑のような柔らかい黄緑色も春らしい色ですね。春のイメージに合う配色は、全体的に柔らかくあたたかみのある、高明度・低彩度なパステルカラーが好まれる傾向にあります。トーンでいうと、ペールトーンやライトトーンに当てはまります。

また、春のイベントといえば、ひな祭りやこどもの日があります。

ひな祭りは梅の花や華やかな雛人形のイメージなので、春のイメージカラーの淡いピンク色に合っています。

変わってこどもの日は、鮮やかな鯉のぼりのイメージもあり、ブライトトーンぐらいの高彩度かつカラフルな色相で、元気でわんぱくなこどもをイメージした配色が好まれます。

2-2 夏のイメージ配色

夏でイメージするものといえば、青い海や空、緑の山や南国の木…などの自然のイメージが大きいのではないかと思います。夏休みに旅行するような場所ですね。

照りつける太陽や向日葵などの明るい黄色も夏のイメージに好まれる傾向にあります。夏をイメージできるようなデザインを作る際には、実際に海や山などのイラストやモチーフに、など夏のイメージに合う配色にすると、より夏らしさをアピールできるデザインになるでしょう。トーンは明るく鮮やかなものが適しているので、ブライトトーンやストロングトーンが好まれる傾向にあります。

また、春から夏にかけてくる季節「梅雨」がありますね。

鮮やかでアクティブな夏のイメージとはまた違い、雨や紫陽花をイメージする青系紫系の色が好まれる傾向にあります。トーンに関してもライトトーンやソフトトーンなどの、夏よりも柔らかめな印象を与えるトーンが適しています。

2-3 秋のイメージ配色

秋のイメージで最も強いの「紅葉」ではないでしょうか。

色づいた木々の葉の、低彩度で落ち着いた色味の茶色などが秋のイメージに好まれる傾向にあります。トーンですと、少し暗めで濁色なダルトーンやグレイッシュトーン、ダークトーンが落ち着いた印象になり、秋のイメージに適しています。しかし、多用すると暗めのイメージになってしまうので注意が必要です。部分的にソフトトーンなどの少し明るめなトーンの色も使い、配色のバランスを考えましょう。秋のお月見のイメージで明るめな黄色を加えてもバランスが良くなるかもしれませんね。

また、秋のイベントといえば「ハロウィン」ですね。

カボチャをイメージさせるオレンジ、怪しげな・黒を基調とした配色はハロウィンのイメージに好まれる傾向にあります。こちらは秋でも落ち着いた印象にせず、高彩度なオレンジ・紫と暗い黒の配色にすることで、コントラストが出て、よりハロウィンのおどろおどろしさやにぎやかさを表現できるでしょう。トーンは、ストロングトーンやディープトーンがおすすめです。

2-4 冬のイメージ配色

冬のイメージといえば「雪」や「寒さ」ではないかと思います。

雪をイメージするや、暗めの寒色系のの色は寒さを連想させるので冬物の配色に好まれる傾向にあります。暗めの寒色系のトーンはダルトーンやグレイッシュトーン、ダークトーンが適しています。

また、冬のイベントといえば「クリスマス」や「お正月」があります。

クリスマスのイメージカラーは、サンタさんのとクリスマスツリーのです。この2色を組み合わせた配色にするだけでクリスマスというイメージがわいてきます。

お正月のイメージカラーは、濃赤とおめでたいイメージのある金色の配色が好まれる傾向にあります。日本のお正月は和風なイメージが強いので、高・中彩度の濃い赤が好まれます。トーンはストロングトーンやダルトーン、ディープトーンが適しています。濃赤と金色の配色をベースに、梅の花の淡いピンクや竹の緑を合わせれば、さらに華やかになるでしょう。

まとめ. TPOに合った配色を意識してデザインしましょう

色の見え方、色に対するイメージには個人差もあるため、今回解説する配色が必ずしも正しいというわけではありません。あくまで一般的に好まれる傾向の配色であり、デザイナーの感性でさまざまな配色があっていいと思います。

ですが、「狙うターゲットは一般的にどんな色を好むのか?」「目的や場面、季節に合った色はイメージできているか?」これらを意識するとよりよいデザインになるでしょう!

後編では、さまざまな色のイメージから作られる配色パターンについてご紹介します。

ぜひこちらもご覧ください。

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