紙ソムリエの読み物

印刷用紙の種類と違いについて!ちょっと特別な用紙編

印刷物を発注するときに、必ず選ばなければならないのが【用紙】です。
前回紹介した用紙はとても一般的なものですが、同時に味気ない印象を与えがちです。

「上質紙・コート紙・マットコート紙以外にはどのような種類があるのだろう」
「普通の用紙ではなく、特別感のある用紙を検討している」
「事務用品に使われている紙は、チラシやパンフレットとは何かが違う」
「再生紙を使ってエコにしたい。一方でFSC認証紙もあるけど、どう違う?」

そんな一歩踏みこんだ印刷発注をお考えのみなさまへ、今回は「上質紙」「コート紙」「マットコート紙」以外の、特別な用紙の種類と特徴について説明します。それぞれの使われ方・求められる機能が異なるのが特殊紙です。そのほか、みなさんが耳にしたことのある身近な用紙についてもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

1.「上質紙」「コート紙」「マットコート紙」以外の紙、「特殊印刷用紙」「情報用紙」とは

印刷用紙の5つの分類

印刷用紙は大きく分けて5つに分類されます。

・非塗工紙…上質紙・中質紙など
・微塗工紙…マットコート紙など
・塗工紙…アート紙・コート紙など
・特殊印刷用紙…ファンシーペーパーなど
・情報用紙…ノーカーボン紙、フォーム紙など

それぞれの用紙の説明については、こちらをご確認ください。

特別な用途で選ばれやすい「特殊印刷用紙」と「情報用紙」は、一見「上質紙」や「アート紙」と同じように感じられるものもあります。しかし、一般的な印刷用紙とは異なる別物です。

・特殊印刷用紙
特殊紙とも。独特の色や質感、光沢感がある高級印刷用紙。銘柄によってその特徴はまったく異なり多種多様。五感に訴えかけるような付加価値を与えることができる。

・情報用紙
機械での情報処理を目的とした専用用紙。プリンターに通したり伝票や領収証などで複写したりするため、機能に負荷をかけない厚さや平滑度、摩擦などを考慮されて作られている。

上記の5分類は、印刷用の紙の分類ですが、紙は印刷以外にも使われています。製品を守るための紙「包装用紙」と呼ばれる分類です。「包装用紙」については、後ほど詳しくご説明します。

2.多種多様な風合いと質感の「特殊印刷用紙」 [br]
  ~色上質紙、ファンシーペーパー、ユポとは~

特殊印刷用紙は、一般的な印刷用紙と見た目や肌触り、風合いが異なります。代表的なものに、色上質紙、ファンシーペーパーなどが存在します。

2-1 色とりどり、色上質紙

色上質紙は、その名の通り用紙が染色されています。用紙の質感自体は上質紙なので、表面の光沢感はなく、鉛筆やペンなどで書きこみがしやすい用紙です。

代表銘柄…色上質(紀州製紙、王子製紙、他)

用紙の表裏通して均一に色がついているため、印刷物のなかで一際目立ちます。ただし、紙自体に色がついているため、フルカラー印刷の際には注意が必要です。色紙にフルカラーで印刷するのか、または白い紙に印刷で色を付けるのかで表現が全く変わってきます。気になる方は印刷会社と相談しましょう。

■おすすめの使用例
・小冊子の表紙や各見出し部分の表紙
・書籍の見返し
・写真やイラストはないけれど、色を際立たせたいチラシやアンケート用紙
・イベントやコンサートなど、時間ごとに区切る整理券

2-2 質感、風合い多種多様。ファンシーペーパー

特殊紙の代表格であるファンシーペーパーは、銘柄によって表面の光沢・凹凸・模様などが異なり多種多様です。色や質感で五感に訴えかける+αの価値、特別感を与えることができます。

代表銘柄…ヴァンヌーボーシリーズ(竹尾)、OKミューズガリバーシリーズ(王子製紙)

特殊紙の中でもおすすめの銘柄、高級感のあるファンシーペーパーについては、こちらで具体的にご紹介しています。特殊紙の紙選びに、ぜひともお役立てください!

■おすすめの使用例
・コンサートや式典などの招待状、パンフレット
・化粧品やお菓子の箱
・ブティックのショッパー
・会社案内や商品紹介などクライアント向けの冊子

2-3 紙であって、紙でない。ユポ

ユポという紙は、パルプではなく、合成樹脂(プラスチック)で作られた特殊紙のことです。
屋外広告によく用いられ、画像のような掲示板に貼られる選挙ポスターや選挙の投票用紙、自動販売機のポスター、お風呂で使う教材など、実は私たちの身近なところで使われています。

優れた耐水性と耐久性を持ち、「破れにくい」「油・薬品に強く、軽い」「表面が滑らか」「印刷が綺麗」という特徴を持っています。また、資源としてリサイクルすることも可能です。

耐水性という点では、一般の紙にポリプロピレンのフィルムを貼る「PP加工」や「ラミネート加工」をして対応することもあります。しかし、表面の水分は耐えられても、長期に渡る湿気にさらされると、用紙の側面から水分を吸収し印刷物が傷むことがあります。その点、パルプでないユポは湿度を吸収しないため、高湿環境に最適だと言えます。

■おすすめの使用例
・雨風にさらされる、屋外に貼るポスター
・お風呂場やプールで使う玩具やボトルのラベルなど

3.事務処理の鉄板「情報用紙」[br]
  ~ノーカーボン紙、フォーム紙、感熱紙~

情報用紙は機械処理に特化した印刷用紙です。それぞれの機械に合わせて印刷や折り加工を施します。何重にも重ねて機械に通すこともあるため、用紙の厚みが薄いのが特徴です。

3-1 複写伝票、ノーカーボン紙

感圧式の伝票などに使われます。用紙にカプセルと顕色剤が塗布されており、圧力を感じた部分のカプセルと顕色剤が反応することで、文字を転写します。名前や日付や住所など複数枚に渡って記入が必要な書類で、何度も手書きする手間が省けます。

■おすすめの使用例
・領収証や契約書など、複写した控えが必要な書類
・宅配便の送り状や入会申込書など、記入項目が多い書類

3-2 ビジネスフォーム印刷に使用、フォーム紙

フォーム紙は機械式印字伝票に使われます。機械に通した際の印字をスムーズにするため、用紙の傾きの発生を防ぐことに特化しています。こちらも厚みが薄いのが特徴です。

■おすすめの使用例
・圧着ハガキ
・各種ビジネスフォーム
・出金伝票や請求書、健康診断結果通知書などの帳票

3-3 熱で印字、感熱紙

熱で印字するのが感熱紙です。用紙に熱に反応する薬剤が塗布されており、機械に通し熱を加えることによって素早く印字することができます。機械の熱だけではなく外部の熱にも弱いので、長期保存すると印刷が消えたり、印字が劣化したりすることも多いです。

■おすすめの使用例
・レシート
・FAX用紙

4.まだまだあるよ、印刷しない紙?「包装用紙」[br]
  ~クラフト紙、ボール紙~

紙には掲示物や配布物以外にも使われ方があります。物を包んだり、守ったりする用紙です。
このような用紙は「包装用紙」と呼ばれます。デパートなどでプレゼントを包んでもらう紙も包装用紙です。必ずしも印刷されるわけではなく、そのまま使用することもあります。

ここでは緩衝材や梱包材に使う代表例をご紹介します。厚みがあったり、表面に凹凸があったりと綺麗な印刷には向かない部分もありますが、強度が高いのが特長です。

4-1 見たことある気がする茶色い紙、クラフト紙

クラフト紙は紙の素材であるパルプを漂白しないため茶色く、紙の繊維も長いため強度が高いです。ざらっとした感触のため、素材感と素朴感があります。段ボールもこのクラフト紙の仲間に入ります。

■おすすめ使用例
・梱包材
・ブックカバーやプレゼントの包装

4-2 分厚く丈夫、板紙(ボール紙)

板紙は厚紙とも呼ばれ、一般的な紙に比べて厚さと耐久性があります。代表的な厚紙には、板紙・画用紙・白ボールなどがあります。

板紙のなかでも、紙パルプとは違う素材((わら)や古紙)を使ったり、再生紙などの繊維を使って漂白したりして作られるのがボール紙です。リサイクル素材で、お菓子の化粧箱やティッシュ箱など、箱の芯素材にも使われています。

また、コート紙や上質紙に絵柄を印刷した後、その裏に板紙を「合紙(ごうし)」という加工方法で貼り付けて厚みを増し、強度を高めることも可能です。絵本やトレーディングカード、電車の窓上に掲出されているポスターもその例です。古くは子どもたちの玩具だっためんこにも用いられていました。

■おすすめの使用例
・強度が必要な化粧箱
・子ども向け商材の補強

5.あの紙ってなんだっけ?[br]
  ~ざら紙、インクジェット紙(光沢紙)、再生紙、FSC認証紙~

ここまで大きく5つの分類+αでご説明した用紙の分類ですが、身近なもので、まだ登場していない紙があります。

5-1 ざら紙

身近な紙の代表格である新聞紙は、「ざら紙」と呼ばれる非塗工紙の下級印刷紙を使用しています。古紙を使用していますが、漂白加工などは最小限のため、用紙自体の白色度は低めです。

■おすすめの使用例
・新聞紙
・包装紙
・紙緩衝材

5-2 インクジェット紙(光沢紙)

家庭用インクジェットプリンターで、写真を印刷するときに使用するのがインクジェット紙(光沢紙)です。紙面にトナーの付きをよくする薬品が塗布されていて、普通紙より光沢があります。トナーの発色が良いため、写真や絵柄の仕上がりが鮮やかなのが特長です。

インクジェット紙はインクジェットプリンターに特化した仕様で、レーザープリンターなどで使用すると、紙詰まりやトナーの定着が不完全になることもあるので注意しましょう。

■おすすめの使用例
・写真の印刷
・年賀はがき

5-3 再生紙とFSC認証紙

近年、SDGsのスローガンとともに、自然環境への意識も高まっていますね。当サイトでもSDGsと印刷の関連について取り上げました。

印刷では紙選びが注目しやすいでしょう。環境に配慮した紙というと再生紙FSC認証紙があります。では、それぞれどのような違いがあるのでしょうか。

  • 再生紙

回収された古紙を古紙パルプに戻して漂白した後、紙として再生成したもの。
古紙パルプの含有率が、再生紙の一つの基準になっています。例えばエコマークは、印刷用紙・情報用紙は含有率70%以上が目安になっています。
稀に古紙の繊維が見えたりすることもあり、印刷適正はバージンパルプの用紙に比べて落ちるのが特徴です。

再生紙の代表銘柄
コート紙
OKコートNエコグリーン(王子製紙)、ユトリロコートグリーン70(大王製紙)
マットコート紙
OKマットコートNエコグリーン(王子製紙)、ユトリロマットコートグリーン70(大王製紙)
上質紙
OKプリンス上質エコグリーン(王子製紙)

エコマークの一例
  • FSC認証紙

外部評価機関で認可され、伐採・生産・管理の正当性が証明された用紙のこと。
産地や農家さんの顔が見えるお野菜と似ているかもしれません。FSC認証紙は基本的にバージンパルプを使用して作られる紙で、再生紙よりも印刷適正が高く、再生紙よりも良質な製品を作ることが可能です。

SDGsな紙といったらまず選択肢に挙がり、最近ではあらゆる商品のパッケージやノート、コピー用紙、ティッシュペーパーなど幅広く使われています。

FSC認証紙の代表銘柄
アート紙(グロス系)
ハイマッキンレーアートFSC認証紙(五條製紙)、SA金藤+EF(王子製紙)
アート紙(マット系)
OKウルトラアクアサテンEF(王子製紙)、サテン金藤N EF(王子製紙)
コート紙
OKトップコート+EF(王子製紙)、FSユトリロ(大王製紙)、パールコートN FSC-MIX(三菱製紙)
マットコート紙
ニューVマットFSC-MX(三菱製紙)、FSユトリログロス(大王製紙)、OKトップコートマットN EF(王子製紙)
上質紙
OKプリンス上質EF(王子製紙)、金菱FSC-MX(三菱製紙)

そのほか、特殊印刷用紙(ファンシーペーパー)や情報用紙などにもFSC認証紙があります。

FSC認証マークの一例

このように「エコな紙」の代表として、再生紙とFSC認証紙の違いはパッと分かりづらいかもしれませんが、成り立ちも定義も異なるものなのです。どちらも環境に配慮していますが、最近ではFSC認証紙のほうが美しい印刷ができ、種類も豊富なので人気かもしれません。再生紙に関してはこちらの記事でも紹介したとおり、さまざまな意見があります。再生紙でしか出せない風合いもありますので、表現したい内容に合わせて検討してみてください。

まとめ.用紙選びは目的と使われ方を考える

印刷物の中でも用紙選びは特に重要なポイントですが、価格だけではなく、目的や用途、その働きによって決めることもあります。今回ご説明した特殊印刷用紙、情報用紙は特に用途が限定されるものです。

私たちの周りには、意外と多くの種類の紙が存在しています。ポストに届いたチラシや手紙、街中でもらうパンフレット、紙袋、ギフトの箱、店頭で控えとしてもらった契約書類…。それぞれ作り手さんがこれだ!と選んだ紙で作られ、伝えたい想いがこめられ、私たちが使いやすいよう合理的な機能を備えています。 見た目、風合い、使い道、環境配慮―たくさんの紙の中から、これだ!というものを見つけて、素敵な印刷物を作ってくださいね。

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