この記事では、ベタ印刷の基礎知識からおすすめの活用方法までを、わかりやすくご紹介しています。インクをたくさん使うため乾きが遅いなど注意する点もありますが、色濃くツヤのあるきれいな印刷物ができる印刷方法です。
「印刷におけるベタとはどんな状態のこと?」「ベタで印刷したとき、ムラや裏移りなどのトラブルが心配」「ベタの使い方や、黒ベタ白抜きなどの関連用語について知りたい」など、ベタ印刷に興味のある方はぜひご覧ください。
1.「ベタ」とは?
ベタとは、濃度100%のインクで隙間なく塗りつぶすことをいいます。
1色のインキのみで塗りつぶす状態だけでなく、100%の色同士を組み合わせて塗りつぶす状態もベタです。デザインでいうベタとは別で、こちらは単色の印刷面をベタとよび、印刷方法を指すものではありません。
オフセット印刷ではCMYKといった4色の点を重ね合わせることによって色の表現をしています。一方、ベタ印刷はあらかじめ調色したインキを使用し、一枚の版で印刷します。
ベタ印刷は、乾きが遅かったり色むらが発生したり…技術を必要とする印刷ですが、たくさんのインキを使用して隙間なく塗りつぶすことで、色濃くきれいなツヤのある印刷物に仕上がります。
2.ベタ印刷で気をつけたいポイント
2-1 ゴーストに注意!
ゴーストとは、データは完璧なのに、印刷してみると色に濃淡が出てきてしまう現象のことをいいます。
「一面ベタの中で一部分だけ白抜き小窓がある場合」や「ベタの天地に面積差がある場合」は、ゴーストが発生しやすいため注意が必要です。ゴーストが発生する原因は、印刷機のインキのバランスが崩れることにあります。
ゴーストを未然に防ぐ最も効果的な方法は、「捨てベタ」を作ることです。
捨てベタとは、印刷面の外に使わなかったインキを捨てるためのベタのことをいいます。インキ量を調節することができるので、ゴーストを防ぐことにつながります。
他にも、湿し水の調整やゴースト防止ローラーを活用することによって、ゴーストの発生を防ぐ方法もあります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
2-2 用紙の取り扱い
用紙の種類によっては、ベタ印刷と相性の良くないものがあります。
たとえば和紙のように、表面に凹凸がある用紙だと、ベタ塗りをした際に印刷にムラがあるような印象を与えてしまう可能性があります。
また、ベタ塗りの範囲が大きいと乾くのに時間がかかるため、十分に乾かさなければ汚れがついてしまったり、ピンホールが発生しやすくなったりします。
使用したい用紙がベタ印刷に適しているかどうか、事前に確認することをおすすめします。
3.ベタ印刷の活用方法
3-1 グラデーション
ベタ印刷は、「使用するインキ量が多い」「乾くのに時間がかかるため作業効率が劣る」といった理由から、コストが高くなる傾向にあります。また、ムラが出る、裏移りしやすい、ピンホールが発生するといったトラブルが起こりやすく、印刷のやり直しが発生した場合は、さらにコストがかさんでしまいます。
そこでおすすめなのが、特色1色で濃淡を出す方法です。
たとえば、目立たせたいデザインをベタで表現し、背景を同じ色のグラデーションにすると、メリハリがついたデザイン性のある印刷物ができあがります。
3-2 黒ベタと白ベタ
黒ベタ
「黒ベタ」とは、黒一色で塗りつぶすことをいいます。
K(ブラック)100%の黒色を「スミベタ」といい、印刷物の文章などは通常この色を使います。
CMYKのインキすべてを100%使用する究極のリッチベタを「4色ベタ」といい、印刷において最も濃い黒を表現できます。黒ベタの種類については、こちらの記事で詳しく説明しています。
黒ベタ白抜き
「黒ベタ白抜き」とは、黒ベタの中に白抜きの文字や模様(黒で塗りつぶさない部分)があることをいいます。
背景の黒と、文字の白でメリハリがつくので、文字を目立たせることができます。
白ベタ
「白ベタ」とは、CDやDVDなどの円盤面に、白色を塗りつぶすことをいいます。
円盤に直接印刷を行うと、ディスクの銀色が透過してしまい、思っていた色が表現できない場合があります。白色で塗りつぶすことによって、発色が良くなりデザインがきれいに印刷されます。
ディスクの他にも、クリアファイルや色のついた用紙などに印刷する際にも、白ベタが施されます。
3-3 フレキソ印刷
凸版印刷方式の一つであるフレキソ印刷では、樹脂素材の版を使用します。
樹脂素材の版は弾性があり、凹凸のあるものへの印刷に優れているため、段ボールやパッケージ、布などの印刷に多く使われます。
フレキソ印刷は、全面を塗りつぶすベタ印刷を得意としており、ムラなくツヤのある印刷物に仕上げることができます。
そのほかにも、水性インキを使用するので環境負荷が少なく、オフセット印刷よりコストを抑えられるというメリットがあります。ただし、繊細なデザインは印刷が難しく、小ロットの注文には対応していない場合が多いので、注意が必要です。
まとめ.ベタ印刷を無理なく使いこなす
色濃くツヤのあるきれいなデザインを表現できるベタ印刷ですが、色ムラが出やすかったりコストがかさんだり、といったデメリットもあります。そのため、ご希望の印刷方法や用紙では対応できない場合があるかもしれません。
しかし、色ムラを防ぐために用紙を変えたり捨てベタを作ったり、乾きが早いUV印刷にするなど工夫をすることで、ベタ印刷の活用の幅が広がります。ちなみに、当サイト『紙ソムリエ』を運営する伊坂美術印刷㈱では、ハイデルベルグ社製のUV印刷機を導入しております。なにかお手伝いできることがありましたら、いつでもお声がけください。