「個性を感じる名刺を作りたい」
「ハンドメイド感のあるショップカードを作りたい」
「普通の印刷とは違った趣の加工を探している」
こんなお悩みはございませんか?活版印刷では、印刷面の凹凸やインキのにじみによって、オフセット印刷などとは異なる魅力を表現することができます。
この記事では、活版印刷について知りたい方や、実際に作ってみたいと考えている方へ、活版印刷の仕組みや活用方法などの基本的な部分から、スムーズに制作を進めるための注意点などをご紹介します。
1.活版印刷の基本的な仕組みと特徴
1-1 活版印刷の仕組みと特徴
凹凸のある版(画線部:凸、非画線部:凹)の凸部分にインキをつけ、用紙に圧力をかけて転写する印刷方式です。版は、印鑑のように画線部が鏡文字になっています。
凹凸のある版を用いて圧力をかけることにより、画線部と非画線部で凹凸ができます。
圧力によりインキが盛り上がることで、文字の縁ににじみが生じて迫力がある仕上りになります。これを「マージナルゾーン」と呼びます。
また、凸部分にインキをつけずに、圧力のみで凹凸を表現する加工を「空押し」と言います。インキを使用しないことで独特の存在感が出るため、人気がある加工です。
1-2 特徴を活かす用紙とおすすめの使用例
凸判で圧力をかけることによって生じる凹みや文字の縁のにじみは、活版印刷のユニークな特徴です。この特徴を活かしたおすすめの使用例と用紙の選び方が、以下のとおりです。
用紙
厚みがあり、やわらかい用紙を使用することをおすすめします。厚みのある紙は、圧力をかけたときに画線部と非画線部で凹凸の差がうまれ、凹みをより強く表現できます。
コットン紙やクッション紙など、厚みがあり、やわらかい用紙がおすすめです。
厚くてやわらかい紙は、圧力をかけたときに画線部と非画線部で凹凸の差がうまれ、凹みをより強く表現できます。
おすすめの使用例
名刺:圧力をかけた箇所が凹むことで全体に凹凸ができます。これにより、視覚だけでなく触覚による情報伝達が可能です。会社名や個人名がより印象的になるでしょう。
封筒:凹凸やインキのにじみを活かしたデザインは、フラットに印刷された他の封筒と違った印象を与えることができ、受け手に興味を持ってもらえます。
その他にも、展示会の案内状、商品につける下げ札、カレンダー、コースターなどにもデザインのアクセントとなっておすすめです。
2.活版印刷の歴史
2-1 「活版印刷」言葉の由来と意味の変遷
活版印刷は、活字を組み合わせた凸版を用いて印刷されることからこのように呼ばれていました。印刷の中心として活躍してきた活版印刷ですが、現在はデジタルデータや金属または樹脂で版を作ることが主流となっており、従来のように活字を組みかえた版で印刷するところは少なくなっています。
いまでは、活字を組みかえてつくられた版で印刷する方法だけでなく、より広い意味で活版印刷という言葉は使われています。
2-2 活版印刷のはじまり
活版印刷は、15世紀にドイツのヨハネス・グーテンベルクにより発明された印刷技術で、火薬、羅針盤と並んで、ルネッサンス期の3大発明といわれています。それまでは、木版印刷や筆写によって情報が複製されてきましたが、活字を組み換えて複製できる活版印刷の登場で、使いやすさや耐久性が向上し、情報を大量生産することを可能にしました。
活版印刷によってつくられた印刷物は、人と情報を媒介する役割の中心となりました。
2-3 活版印刷のはじまり 日本編
日本における活版印刷は、本木昌造の手によって誕生しました。オランダ語の通訳士をしていた本木昌造は、オランダからやってきた印刷技術に魅了され、日本語の印刷物を作りたいと研究に励みます。美華書館の活版技師ウィリアム・ガンブルを招き、金属活字鋳造の指導を受け、日本に活版印刷術をもたらし、発展させました。
2-4 活版印刷からオフセット印刷・オンデマンド印刷へ
近年、主流となっている印刷方式は、オフセット印刷とオンデマンド印刷です。活版印刷は文字の輪郭がはっきりとした仕上がりになるため、文字情報の伝達に適しています。一方で、オフセット印刷やオンデマンド印刷は、文字のほかに、写真やイラストなどを複製することに長けています。
また、オフセット印刷は版を使用するため、安定した品質で大量印刷を可能とし、版を使用しないオンデマンド印刷は、少部数を安価に短納期で作成できるというメリットがあります。 オフセット印刷とオンデマンド印刷の違いや特徴については、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
2-5 再評価される活版印刷
商業目的で印刷される印刷物のほとんどは、オフセット印刷によってつくられています。そんな中、活版印刷の特徴である印刷面の凹凸やインキのにじみが「ハンドメイドのあたたかみを感じる」と評価され、そこにかえって懐かしさや魅力を感じて、あえて活版印刷を選択する動きが見られます。
オフセット印刷が普及したことによって、活版印刷のメリットであった版の再利用や量産性は強みではなくなりましたが、逆に、これまで重要視されていなかった画線部の凹凸やマージナルゾーンが注目されるようになりました。この凹みは印刷時の圧力のかけ具合や用紙の厚さなどによっても変化するため、好みの凹み具合を表現することができます。
3.間違えやすい加工「箔押し」と入稿データに注意!
3-1 間違えやすい加工「箔押し」
活版印刷とよく似ているのが「箔押し」加工です。どちらも版を使用し、紙に圧力をかけて仕上げるという点で同じですが、それぞれに違いがあり、目指す仕上がりによって向き不向きがあります。それぞれの主な違いは以下のとおりです。
印刷・加工方法
【活版印刷】
凸版を用いて、圧力をかけることによってインキを転写します。
【箔押し】
凸版を用いて、圧力と熱によって箔を熱圧着します。
印刷面
【活版印刷】
圧力を加えることによって、印刷面にムラやかすれが生じますが、これによりかえって個性的な風合いが得られます。
【箔押し】
非転写物に対して、箔が上から定着されるため、ムラの無いきっちりとした仕上がりになります。
選べる色
【活版印刷】
希望する色のインキを作り、印刷します。DICやPANTONEの色見本から指定することができるため、バリエーションは箔押しよりも豊かです。
【箔押し】
基本的に在庫のある箔から色を選択します。
3-2 入稿データの注意点! 広い印刷面と細い文字・線
現在の活版印刷の多くは、デジタルデータから版を作り印刷しています。それにより、従来の活字の組み合わせだけでなく、さまざまなデザインで活版印刷を利用できるようになりました。しかし、データ上は問題がなくても実際に印刷をしてみたら想像と違うなんてこともあるかもしれません。印刷物はデジタルデータと異なり、一度出来上がってしまったら作り直しとなってしまいます。活版印刷の加工代は決して安価ではありません。ミスを未然に防ぐために、正しい知識を身に付けましょう。
・印刷面の面積に注意
余白が少なく、広い印刷面のあるデザインは、色のムラが強く出ることがあります。
印刷面の面積を小さくすることで、ムラが目立ちづらくなります。
・細い文字・線に注意
活版印刷では、インキのついた凸版で圧力をかけます。この圧力をかけたときにインキがにじむことによって、細い文字や線が太ってしまいます。
データ上では問題なく見えても、実際に印刷をしてみたら文字がつぶれている…といったことにならないよう、注意しましょう。0.5ポイント以下の罫線はなるべく避けてください。
まとめ.活版一つで差のつく印刷
オフセット印刷やオンデマンド印刷などの高精細な印刷技術が広く普及している中で、活版印刷は古い技術ならではの温かなハンドメイド感と、素朴で落ち着いた印象を与え、色鮮やかな印刷物とは一味違った訴求になります。
オーダーメイド商品である印刷物は、それぞれに適した印刷方法があります。この記事を読んで、活版印刷に挑戦してみたいと思った方は、ぜひ当サイト『紙ソムリエ』にご相談ください。活版印刷によって、こだわりを表現してみてはいかがでしょうか。