紙媒体の文書をデジタルデータに置き換えることを「電子化」といいます。
テレワークの増加もあり、電子化を検討している方も多いのではないでしょうか。
電子化すれば、必要な文書にどこからでもすぐアクセス可能で、情報共有のスピードも格段にアップします。もちろんデメリットもあるので、よく理解したうえで導入しなければなりません。
この記事では、文書電子化のメリット・デメリットから導入手順まで、わかりやすくご説明します。
1.なぜ電子化が必要なのか
1-1 ペーパーレス化・環境保護
企業の経済活動において、日常的に多くのCO2が発生しています。
カーボンニュートラルの実現を目指す日本では、地球温暖化の原因となるCO2(温室効果ガス)を削減する働きが求められており、その取り組みの一つがペーパーレス化です。
紙の製造工程においては、大量のCO2が排出されています。その量はA4の紙1枚で約6.5gと紙の重さ以上です。また、紙の原料となる森林の減少についても考えると、ペーパーレス化を促進することは、CO2削減にとって大きな効果があると言えます。
さらに、ペーパーレス化を促進することは、企業として社会問題へ取り組む姿勢をアピールすることにもつながります。
1-2 業務の効率化
紙媒体の書類が多いと、わかりやすくファイリングしていたとしても、情報にたどり着くまでには、ある程度の時間が必要になります。
問い合わせがきて、書類を確認してすぐ返事をしたいのに、一度資料を探しにいかなきゃいけないから、回答に時間がかかってしまう…。
そんなとき、電子化された資料があれば、パソコンからすぐに確認することができます。
電子化することによって、資料の検索が容易になり、業務の効率化につながります。
2.文書電子化のメリット・デメリット
2-1 メリット1:検索性アップ
電子化すれば、資料の管理がしやすくなります。
たとえば、新しいプロジェクトを進めるにあたって過去のプロジェクトを参考にしたい時、資料がすべて紙媒体保管で正確な作成時期などがわからなければ、数ある資料をすべて確認し探し出さなくてはなりません。
しかし、資料を電子化していれば、キーワードで絞って探し出すことができます。資料を探す時間が大幅に削減できるでしょう。
2-2 メリット2:省スペース
請求書や納品書などの取引に関するものから、会社全体の会計帳簿、人事・労務関係のものまで、会社にはさまざまなデータがありますよね。法定保存文書は、最低限の保存期間が法的に定められており、その期間は保管する必要があります。
紙媒体の場合、どんどん資料がたまっていき社内に保管しきれなくなったら、倉庫を用意するなど外部にスペースを確保しなければなりません。
しかし、電子化して保存容量を増やせば、データが増えても対応できます。
資料保管場所として物理的なスペースを確保しなくて良いので、オフィスも広々使えます。
2-3 メリット3:劣化・紛失防止
紙媒体は年月が経つと変色したり耐久性が落ちたり、どうしても劣化してしまいます。
電子化すればいつでもどこでも同じ状態で資料を閲覧できます。
オフィスが洪水や火事などの災害にあったときも、紙媒体だと復旧は難しいですが、電子化していればデータのバックアップがあれば事業の早期回復がしやすいでしょう。
また、電子化した書類ならすぐに検索して探すことができるので、業務の担当者が変わっても書類がない!と困ることはなくなります。
2-4 デメリット1:費用がかかる
電子化した文書を管理するためにはソフトが必要なので、導入・運用費用がかかります。ソフトはさまざまな種類があり、安価なものもありますが、高機能なものほど高くなります。
導入の際には、どのような機能が必要かよく検討して、過不足のないソフトを選びましょう。
その他にも、書類を電子化するためにパソコンや複合機などの設備を一新する必要があるかもしれませんし、大量に書類がある場合はスキャンするのにもかなり時間がかかります。
費用的にも時間的にも、初期コストがかかるでしょう。
2-5 デメリット2:慣れるまで時間がかかる
電子化した文書はパソコンやタブレットで確認します。しかし、画面のサイズには限りがあるので「複数の資料を、並べて表示すると文字が小さくなる」「全体が画面に収まらない」といった問題が起こることもあり、一覧性では紙媒体には劣ります。
また、検索はどこからどうやって確認するのか、保存するときはどのようなファイル名をつけるのかなど、管理ソフトの操作やルールも新しく覚える必要があります。
このように、紙媒体に慣れ親しんだ社員が、電子化に慣れるまでは多少時間がかかるかもしれません。
2-6 デメリット3:システム障害
電子化された紙媒体は、サーバーやクラウド上に保存されます。
なんらかの理由でシステムに障害が起きたり、インターネット環境が不安定になったりすると、一時的に閲覧できなくなる可能性があります。
すぐに確認したい書類も、復旧するまで待たなければいけません。
予期せぬシステム障害に慌てないように、日頃からハードウェア・ソフトウェアのメンテナンスや強化をしておきましょう。
3.文書電子化の手順
3-1 手順
1.電子化する書類を選ぶ
すべての書類を電子化する必要はありません。提出されたあとほとんど見返すことのない書類もありますよね。
検索・閲覧される頻度が高く、利用者が多い書類を電子化した方が業務効率向上につながります。
2.データの保管方法を決める
ファイル名は、検索しやすくて、わかりやすいファイル名に統一しましょう。
ファイル名に日付を付ける場合、人によっては和暦か西暦かでバラつきがあります。また、つなぎに使う記号もハイフンなのかアンダーバーなのかなど、あらかじめルールを決めて、ファイル名には統一感を持たせましょう。
データを保存するフォルダにもルールが必要です。
ファイル名をわかりやすく設定しても、同じフォルダに大量のファイルが混在すると探しにくくなります。
顧客ごとや月ごとなど分けて保存するのがいいでしょう。また、階層を深くしすぎないことも大切なポイントです。多くても4階層までが目安です。
そのほか、ファイル形式や解像度などについても保存ルールを決めて、データを管理しましょう。
3-2 スキャニングの作法
文書を電子化する方法は大きく分けて2種類です。
1.複合機から行う
社内で文書を電子化する場合は、複合機を使用します。スキャニングは次の4ステップです。
(1)原稿を読み取り台にセット
(2)操作パネルでスキャンを選ぶ
(3)スキャンデータの保存先を指定
(4)スキャン開始
事前にパソコンで、保存するフォルダの作成と複合機のアドレス登録をしておけば、簡単にスキャニング・保存することができます。
2.代行サービスを利用する
スキャンからデータベース化までの作業を代行してくれる業者もあります。
もちろん費用はかかりますが、資料があまりにも膨大で作業する時間がなかなか取れない場合は、業者を利用して作業の効率化を図りましょう。
3-3 著作権の扱い
業務に必要な参考資料として、本屋さんで書籍を購入することがあると思います。
家庭内における利用で個人的に電子化することに問題はありませんが、企業内の使用において、著作権者に無断で電子化することは著作権法で禁止されています。
基本的には事前に著作権者の承諾を得る必要がありますが、デジタル化を促進する時代の流れによって、教育現場での利用や情報解析事業者などでは自由に電子化できるように法改正がされました。
また、著作権の有効期限は著作者の死後70年を経過するまでとされています。古い文献を参考にする場合には、著作権の有無を確認してみましょう。
まとめ.電子化をスマートに取り入れよう
作業面でもコスト面でもメリットがある電子化。
しかし、使い慣れている紙媒体での作業を電子化するのにも、手間やストレスがかかるかと思います。最初からすべて電子化する必要はありません。
「保管場所が無くなってきたので取り急ぎすぐに電子化に対応できそうな文書だけ」「検索性を上げるためよく使う文書を」…など、目的に合わせて導入していってもよいかと思います。
メリット・デメリットを理解し、上手に電子化を取り入れて業務の効率化を目指しましょう!