印刷物を発注するときに、ネット注文や業者とのやり取りのなかで、よくわからない言葉や単語があって不安になることはありませんか?
印刷に関する言葉や単語を理解することができれば、よりスムーズに業者とのやり取りを行えます。
この記事では、これだけは押さえておきたい!という印刷用語を、紙ソムリエの私たちが厳選してわかりやすく解説していきます。印刷会社の視点に立ったチョイスです。
さらに詳しい解説が載った記事のリンクも記載しているので、ぜひそちらも参考にしてみてください。
1.デザインでよく使われる用語
1-1 レイアウトに関する用語
ラフ
印刷物の仕上がりイメージを大まかに描いたもの。
画像や文章のレイアウト、デザインなどが記載してあり、依頼相手と仕上がりイメージを共有するために使われます。
ラフ自体の形式はさまざまで、紙に手書きされたものやIllustratorなどのソフト上で作られたものがあります。
級(Q)数、ポイント(pt)数
どちらも文字の大きさを表す単位。
1Q(1級)=0.25mm
QはQuarter(1/4)を表していて、1mmの1/4の0.25mmを意味しています。
読み方はそのまま「きゅう」です。
1pt(1ポイント)=約0.35mm(0.3528mm)
1ptの定義はさまざまですが、一般的には「1インチ÷72」で使用されています。(1インチ=25.4mm)
トリミング
画像、イラスト、オブジェクトなどの素材を必要な部分だけ切り取って加工すること。
主に印刷には不要なものが背景に写っている場合などで使用する加工です。
「切り抜き」とも呼びます。
トンボ(トリムマーク)
データの周囲にある仕上がりサイズを示す目印のこと。
データの四角に記入される「コーナートンボ・角トンボ」、仕上がりサイズの中心(センターライン)を示すために付けられる十字型の「センタートンボ」、折り位置を示すための「折りトンボ」があり、印刷後の製本・断裁に必要不可欠な印です。
塗り足し
本来の仕上がりサイズよりも余分に作られた部分のこと。
印刷物を断裁する際、断裁位置にズレが生じてしまうことがあります。
そのため、なにも印刷されていない紙の地の部分が見えないように、あらかじめ仕上がりサイズよりもデータを伸ばして作っておく必要があるのです。
仕上がりサイズから3mm伸ばして作るのが一般的です。
仕上がりサイズ
塗り足し部分を断裁した印刷物の完成サイズのこと。
【仕上がりサイズがA4(A4仕上げ)の場合】
仕上がりサイズ=297mm×210mm、塗り足し部分を含めた原稿サイズ=303mm×216mmになります。(上下にそれぞれ塗り足し3mmを加えるため)
1-2 色に関する用語
CMYK、RGB
どちらも色を表現する仕組み。
CMYKはシアン(Cyan)、マゼンタ(Magenta)、イエロー(Yellow)の色材の三原色に、キープレート(Key plate)を加えた色の表現方法で、主に印刷物で使われます。大まかな色のイメージはそれぞれシアン=水色、マゼンタ=ピンク、イエロー=黄色、キープレート=黒です。
それに対してRGBはレッド(Red)、グリーン(Green)、ブルー(Blue)の光の三原色を使用する色の表現方法で、主にコンピュータやテレビなどのディスプレイで使われます。
詳しくは「CMYKとRGBの違い」の記事をご覧ください。
特色
CMYKの4色では原稿データの再現が難しい色を表現するために使用される、特別な色。
金、銀などの輝くメタリックカラーや蛍光色、パステルカラーなども特色にあたります。
主に特色メーカーの色見本から指定して使用し、現在主なメーカーは日本のDIC(ディック)社と、アメリカのPANTONE(パントン)社です。
「スポットカラー」とも呼びます。
詳しくは「特色について」の記事をご覧ください。
スミベタ
CMYKでデータを作成する際、K(キープレート)が100%で表現される黒色。
ズレの影響がないため、文字や細い線をきれいに表現することができます。
リッチブラック
CMYKでデータを作成する際、スミベタ(K100%)ではなく、4色を掛け合わせて表現される黒色。
(例)C40% M40% Y40% K100%
一般的にスミベタよりもリッチブラックの方が、しっとりした黒に仕上がると言われています。汚れの原因になってしまうため、インクの総量は300%程度がおすすめです。
しかし4色を掛け合わせているため、スミベタと比較してわずかなズレが起こりやすく、細かい文字や細い線には向いていません。
1-3 画像に関する用語
画像解像度
画像を構成する色の粒の密度。
小さな色の粒が集まってできた画像の1インチ(=25.4mm)の間に色の粒が凝縮しているほど、値が高くなります。
解像度が高いほどなめらかできれいな画像となり、低いほど粗くて粒が目立つようになります。
詳しくは「画像解像度について」の記事をご覧ください。
JPEG(ジェイペグ)
画像を保存するファイル形式のひとつ。
表現できる色の数が多く(約1,677万色)圧縮率も高いため、色が多く容量も大きい写真を保存するのに適しています。
しかし画像を圧縮し、画質を下げて保存をしてしまうと、元の画質に戻すことはできないのでご注意ください(不可逆圧縮)。
拡張子は「.jpeg」や「.jpg」。(例)gazou.jpeg、illust.jpg
PNG(ピングまたはピン)
画像を保存するファイル形式のひとつ。
画像に透過処理を行うことができ、背景などを透明にした画像を作ることができます。
またJPEGとは異なりデータを完全に復元することができます(可逆性圧縮)。
ただPNGはRGB形式でしか保存できず、CMYK表示のPNG画像は作成できません。
拡張子は「.png」。(例)logo.png
GIF(ジフ)
画像を保存するファイル形式のひとつ。
容量をかなり軽く保存できるかわりに、色数がとても少ないです(256色)。
またGIFアニメと呼ばれる簡単なアニメーションを作ることもできます。
拡張子は「.gif」。(例)animation.gif
2.校正でよく使われる用語
2-1 校正とは
もらった原稿をもとに作ったデータが正しくできているかどうか確認すること。
原稿やレイアウトが指定通りにできているかだけでなく、誤字脱字などのミスも確認し、修正が必要な箇所に指示を入れます。
制作会社と依頼者との間で行われ、複数回に及ぶ場合もあります。
2-2 校正時によく使用される用語
原稿
作成する印刷物のもとになる素材。
文字で構成された文字原稿や写真などの画像原稿があります。
かつては手書きのアナログ原稿が主流でしたが、現在はデータでやり取りされることが多いです。
入稿
原稿が入ってくること。
依頼側から製作側に送られ、入稿した原稿をもとにデータを作成していきます。
初校
最初に入稿した原稿をもとに作成したデータのこと。
この初校を依頼側が校正し、修正点に赤字を入れて製作側に戻します。
なおそれ以降の校正に使用するデータは、二校(もしくは再校)、三校、四校…と続いていきます。
赤字、朱字
校正を行うなかで誤字脱字やレイアウトの調整などの修正点を書き込んだもの。
赤色の文字で記入されていたことから赤字と呼ばれています。
概ね初校→赤字→二校(再校)→赤字…と繰り返し、修正点をすべてなくしていくこの工程が「校正」と呼ばれています。
校了
誤字脱字のチェックやレイアウトの調整などの校正作業が完了したこと。
単に校正が終わったというより、修正箇所がなくなり印刷可能な状態になっているということを示している、印刷工程にまわすためのGOサインのようなものです。
校正用語と赤字の入れ方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
下版
校正作業が完了し、次の印刷工程にまわすこと。
ここから先は印刷会社の仕事になります。
3.紙選びでよく使われる用語
3-1 紙の大きさに関する用語
A列
JIS規格によって定められた紙の規格で、A+数字で表記されるもの。ドイツの工業規格が元になっている。
A0~A10まであり、基本となるA0は841mm×1,189mmです。
印刷する際はA1(594mm×841mm)よりひとまわり大きいA列本判(原紙サイズ:625mm×880mm)や、菊全判(原紙サイズ:636mm×939mm)を使用します。
A4判が特に一般的に使われている紙のサイズで、コピー用紙やチラシなどでよく見られます。
A4=210mm×297mm
菊判
A判の印刷物を効率よく作成することができるサイズ。
基本となる菊全判は、636mm×939mmです。
もともと海外から輸入された紙のサイズが由来ですが、現在海外では使われていません。
菊全判→菊半裁→菊4切→菊8切→菊16切…と続いていきます。
B列
JIS規格によって定められた紙の規格で、B+数字で表記されるもの。「美濃和紙」の判型に由来した日本独自の規格。
B0~B10まであり、基本となるB0は1,030mm×1,456mmです。
印刷する際はB1(728mm×1,030mm)よりひとまわり大きいB列本判(原紙サイズ:765mm×1,085mm)や、四六全判(原紙サイズ:788mm×1,091mm)を使用します。
特にB5判が大学ノートや週刊誌などでよく見られるサイズです。
B5=182mm×257mm
四六判
B判よりひとまわり大きく、B判の印刷物を作成するのに適した規格。
基本となる四六全判は、788mm×1,091mmです。
B判の印刷物を作る際には、余白や塗り足しのスペースが必要になるため、四六判のサイズが最も効率よく印刷することができます。
四六全判→四六半裁→四六4切→四六8切→四六16切…と続いていきます。
3-2 主な紙の種類
上質紙
印刷用紙のひとつでパルプ含有率が100%のもの。
塗料でコーティングしていない非塗工紙のため表面に光沢はなく、少しザラッとした手触りです。
コーティングされていないため、インクが定着しやすく、ペンなどで書き込む印刷物に適しています。
またコピー用紙として使用される機会も多いため、比較的身近な用紙とも言えます。
グロスコート紙
コート紙のひとつで、用紙の表面に光沢のあるもの。
表面を塗料でコーティングした塗工紙で、ツルツルとした手触りです。
一般的に「コート紙」とだけ呼ばれた場合は、グロスコート紙を指していることが多いです。
またインクの発色が良く、写真やイラストなどのカラー印刷に適しているため、チラシや雑誌などによく使用されています。
マットコート紙
コート紙のひとつで、表面の光沢が抑えられた半光沢紙。
表面をマット系の塗料でコーティングしたあと艶消し加工を施してあります。
表面が光沢を抑えた質感のため、高級感の演出にも一役買ってくれます。
また表面の光沢が弱いため、映り込みが少なく文字を読むのに適しており、教科書などにも使用されています。
4.印刷・加工でよく使われる用語
4-1 印刷手法に関する用語
版
印刷に使うハンコのようなもの。
あらかじめ印刷する絵柄が焼き付けられた版にインキを乗せ、紙などに写し取る一連の工程が印刷の基本です。
オフセット印刷
版を使用した印刷方法のひとつ。
安定した品質で大量の印刷が可能です。細かい文字や線をはっきりと印刷でき、色むらのないきれいな発色を出すことができます。
しかし、「版」の製作費用や「用紙」の枚数分の費用がかかってしまうため、1部〜100部程度の少部数を印刷するのには適していません。
オンデマンド印刷
版を必要としない印刷方法のこと。
印刷データを印刷機に直接流し込んで処理することで、版を作る工程を省いて印刷できます。
そのため少部数を安価にスピード納品できますが、品質はオフセット印刷に少し劣ります。
詳しくは「オフセット印刷とオンデマンド印刷の違い」の記事をご覧ください。
4-2 印刷技術に関する用語
網点
印刷物の色を構成する細かい網状の点。
この小さな点の大きさ・密度と、紙の色(白など)のバランスによって色の濃淡が表現できます。
一般的な印刷ではそれに加えてCMYKの4色の網点を重ねた集合体で、印刷物の紙面の色を再現しています。
モアレ
網点が重なったとき、間隔の差で生まれてしまう縞模様のこと。
モアレは規則正しい模様が重なったときに起こるものなので、印刷物以外でも発生する現象です。
特に細かい網目やストライプ模様の画像、既存の印刷物のスキャンデータだと網点が干渉しやすく、モアレが出てしまう恐れがあります。
乱丁・落丁
どちらも印刷段階で起こるミス。
複数ページの印刷物で、ページの順番が入れ替わって前後してしまうことを「乱丁」、ページ自体が抜けてしまっていることを「落丁」と呼びます。
これらを防止するために「背丁」や「背標」という目印を付ける場合があります。
4-3 製本に関する用語
平綴じ
針金で綴じる最もシンプルな製本。
まとめた紙の端(本文の背の位置)から数ミリのところを針金で綴じます。
市販のホッチキスで誰でも作れるとても簡単な綴じ方です。
平綴じは一枚の紙の表裏で2ページ分なので、ページ数が2の倍数になります。
中綴じ
平綴じと同様に針金で綴じるシンプルな製本。
平綴じとは針金で綴じる場所が異なり、中綴じは冊子の折り位置である見開きの中央を綴じるため、平綴じよりも大きくページを開くことができます。
中綴じは一枚の紙の左右と表裏で4ページ分なので、ページ数は4の倍数になります。
無線綴じ
糸や針金ではなく糊で仕上げる製本。
重ねた本文の背の部分を糊で固めているため、平綴じや中綴じよりもページ数の多い印刷物に対応できます。
また、糊で固めた本文をくるむ形で表紙が付きます。
詳しくは「中綴じ・平綴じ」「無線綴じ」の記事をご覧ください。
まとめ.印刷用語を覚えれば発注もスムーズに
以上が印刷用語の初級編になります。
初級編の用語であっても耳にしたことがないものや、意味を勘違いして記憶していたものがいくつかあったのではないでしょうか。
これらの印刷用語を押さえておけば、印刷会社への発注ややり取りもスムーズに行うことができるはずです。
またもっと知りたいという方にも、さらに深いデザインや印刷技術に関連する用語を中級編、上級編で詳しく解説いたします。そちらもぜひ参考にしてみてください。