「封筒を作りたいけれど、何から決めて、どう発注すれば良いのか分からない」こんなお悩みはありませんか?
こんなときは、まず、封筒の種類、名称、サイズといった基本情報を知るところから始めましょう。
この記事では、スムーズに封筒を発注するために必要な事前情報をご提供します。用途に合わせた理想の封筒作りへのヒントとしてお役立てください。
Index
1.大きな違いは「定形封筒」か「定形外封筒」か
封筒には、大きく分けて「定形封筒」と「定形外封筒」の2種類があります。
「定形封筒」とは、日本郵便の定めた「定形郵便物」の条件を満たした封筒です。
84円切手または94円切手を貼って郵送できる、みなさんにとって一番身近な封筒ではないでしょうか。
一方で「定形外封筒」とは、簡単にいえば上記以外のサイズの封筒です。
「定形郵便」「定形外郵便」にも細かいサイズの決まりがありますので、それぞれの違いについて詳しくみていきましょう。
1-1 規格と料金の違い
【定形郵便物の規格】
・重さ50g以内
・最大サイズ横120mm×縦235mm 厚み10mm
・最小サイズ横90mm×縦140mm
どれか一つでも条件を満たさない場合は「定形外郵便物」の扱いとなります。
「定形外郵便物」は、さらに「定形外郵便物 規格内」「定形外郵便物 規格外」の2種類に分かれます。
【定形外郵便物 規格内】
・重さ1kg以内
・最大サイズ横250mm×縦340mm×厚さ30mm
【定形外郵便物 規格外】
・重さが4kg以内
・最大サイズ縦600mm、横・縦・厚さの合計900mm
・最小サイズ横90mm×縦140mm
長方形でなくても、円筒形かこれに似た形のものであれば、直径30mm×長さ140mmまで送ることができます。
さらに特例として、上記の最小サイズより小さいものでも60mm×120mm以上の耐久力のある厚紙または布製の宛名札を付ければ送ることができます。
発送手続きをしたあとに、急ぎの書類が料金不足で戻ってきてしまった…なんてことのないよう、この部分はしっかり確認しておきましょう。
2.形は大きく分けて3種類―長形・角形・洋形
封筒の形は、JIS規格(日本産業規格)によって定められています。
JIS規格とは、日本の産業製品に関する規格や測定法などが定められた、日本の国家規格のことです。封筒の場合、大きさや厚さ、品質がJIS規格で決められています。
封筒の大きさはさまざまですが、今回は代表的な3種類をご紹介します。
2-1 長形封筒
長形(なががた)封筒は、縦の長さが横の2倍以上ある仕様です。縦書きの日本語と相性が良いことから別名「和封筒」とも呼ばれます。また、短辺に封入口があります。サイズは以下の通りです。
長形封筒の中でも最もよく使われているのが、長形3号(別名:ながさん)です。
定形郵便として郵送できる封筒で最も大きいサイズであり、A4サイズの用紙を三つ折りにして入れることができるので、請求書の送付をはじめさまざまなビジネスシーンで使われます。
2-2 角形封筒
角形(かくがた)封筒も縦長ですが、縦の長さが横の2倍未満の仕様です。角形は縦・横の長さが近いため、正方形に近いイメージです。また、短辺に封入口があります。サイズは以下の通りです。
角形封筒の中でも、角形2号(別名:かくに)が日常的に使用されています。
A4サイズの用紙をそのまま入れることができるため、願書や履歴書などの折らずに送りたい書類を入れるときに適しています。
2-3 洋形封筒
洋形(ようがた)封筒は横に長く、長形封筒や角形封筒とは違い、長辺に封入口がある仕様です。海外では洋形封筒が一般的となっています。サイズは以下の通りです。
デザイン性が高く、写真やカードなどを入れるのに向いています。
中でも、イベントや結婚式の招待状を送付するときに適しているのが、洋形1号(別名:よういち)です。A5サイズの用紙を二つ折りにして入れることができます。
3.その他いろいろ―窓付封筒・マチ付き封筒・OPP袋
ここまで定番の封筒についてご紹介してきましたが、ここからは+αの要素が入った封筒を、メリット・デメリットと併せてご紹介します。
3-1 窓付封筒って?
窓付き封筒とは、封筒の一部分に透明素材を施すことで、外から封入物の中身の一部が見える状態にした封筒を指します。
窓の素材にもさまざまな種類があるので、用途に合わせて選びましょう。
・セロハン窓…最も多く使用されており、透明度が高く強度に優れているのが特徴。
・グラシン窓…紙を原料とした天然素材で環境に優しく、分別しなくてもリサイクルが可能。
・ワックス窓…封筒の一部に特殊加工を施したもので、引っかかりがなく封入がスムーズ。
<メリット>
・封筒本体へ宛名印字をする必要が無くなり、作業の手間も省ける。
・封筒と書類の入れ間違いを防ぐことができる。
・雨や汚れなどで宛名が見えなくなるという心配がない。
あえて宛名以外の部分に透明素材を施すという方法もあります。
窓からチラシの一部を見せることによって、受取り手に興味を持ってもらい開封率のアップが期待できるので、DM用としておすすめです。
<デメリット>
・窓の位置に宛名が収まるように印刷しなくてはいけない。
・封筒を動かしても宛名が隠れないサイズで、裏の文字が透けない用紙を使わなくてはいけない。
レイアウトや紙の種類・サイズに気をつけましょう。
3-2 マチ付き封筒って?
マチ付き封筒には、封筒の底面や側面にマチ(厚み)が付いている封筒を指します。
側面にのみマチがある「ガゼット封筒」と、側面と底面にマチがある立体的な「角底袋」があり、厚みのある書類やカタログなどを入れるのにぴったりです。
・ガゼット封筒
・角底袋
<メリット>
・かさばるものや厚みがあるものも入るため、発送だけでなく、複数の書類を持ち運ぶ時や資料の保管用の袋としても活用できる。
・「マルタック(玉ひも)加工」を施すことで、封入口がしっかり閉じられ、中身が飛び出さない。
・一般的な封筒よりも紙質が丈夫なため、繰り返し使うことができる。
<デメリット>
・丈夫な紙を使うため、一般的な封筒よりも単価が高い。
3-3 OPP封筒って?
OPP封筒とは、ポリプロピレンという素材で作られた封筒を指します。フィルムの接合箇所は裂けやすいですが、しわになりにくく、引っ張っても伸びにくいという特徴があります。
<メリット>
・紙の封筒より耐久性や防水性、強度に優れている。
・素材が透明なため、開けずに内容を確認することができる。
・ DMなどで使う場合、インパクトのあるデザインを打ち出せば、受け取り手の心を掴み開封率アップも期待できる。
<デメリット>
・紙の封筒のように安易に廃棄できないため、各自治体のHPから処分方法を確認する必要がある。
4.紙の選び方と厚さを決めるポイント
封筒は形だけでなく用紙の質感によっても印象が大きくかわります。
封筒の仕様を決めるときのポイントとなる用紙の種類についてご紹介します。
4-1 ケント紙
ケント紙は、元来イギリスのケント州で製図用・図版用として作られた用紙です。
白色が特徴で、挨拶状やご案内状などの封筒の用紙としても使われています。
<メリット>
・油性ペンで宛名を書き入れてもにじまないため、印刷に適している。
・上質紙より厚みがあり、高級感がある。
<デメリット>
・純白の白さが際立っているため、厚みに注意しないと透けてしまう。
封筒に使用する定番の紙なので、ケント紙の封筒を作っておけばさまざまなシーンで活用するでしょう。
4-2 クラフト紙
クラフト紙とはパルプから作られた紙のことで、強度があり、表面がざらざらしているのが特徴です。晒クラフトと呼ばれる白色のクラフト紙もありますが、一般的には素材の色を生かした茶色いクラフト紙がよく使われます。
<メリット>
・ナチュラルな風合いが魅力で、白色の紙とは違ったデザインが楽しめる。
・他の用紙よりコストが低い。
<デメリット>
・インクがにじみやすい。
・カジュアルな印象が強いので、目上の方への手紙や改まった文書の送付には向かない。
4-3 上質紙(色紙含む)
上質紙は、表面に特別な加工をしていない非塗工紙です。安価なので、オーダーメイドで安く仕上げたいという方におすすめの紙です。
<メリット>
・筆記特性に優れている。
・光沢がないため文字が読みやすく、落ち着いた仕上がりになる。
・カラーバリエーションが豊富。
<デメリット>
・インクがにじみやすい。
ご紹介した3種類の用紙以外に、特殊紙と呼ばれる用紙もあります。
<メリット>
・表面が凸凹していたり、きらきらしていたり、多くの種類がある。
・定番ではない「特別感」を出すことができる。
<デメリット>
・他の用紙に比べてコストがかかる。
用紙の種類の詳しい情報は、別記事の「印刷_用紙_種類」をご確認ください。
4-4 厚さの選び方
封筒の紙の厚さを表すときに、印刷業界では「g/㎡」(ぐらむへいべい)という単位を使用しています。
例えば、「クラフト紙70g」の場合の「70g」は、「1平方メートルあたり70g」という意味になり、この数字が大きくなるほど紙の厚さが厚くなっていきます。
おおよその目安は、以下のようなイメージです。
70g … 少し薄め。用紙の種類によっては中身が透ける場合がある。
80g … 普通の厚み。薄い・淡い色の用紙だと中身が透ける場合がある。
85g … 少し厚め。
100g … 厚みがあり、しっかりとしている。
120g … とても厚い。ケント紙など白封筒でよく使用される厚み。
薄いほど透ける場合がありますが、コストは下がります。
厚くするとコストは上がりますが、しっかりとした手触りになるので高級感が出て透ける心配もありません。
例えば、社用封筒を作る場合は、大切な書類のやりとりがあるので透けない厚さが良いでしょう。
イベントなどのばらまき用として大量に作る場合は、コストのことを考えて薄くても良いかもしれません。
どのような用途で作るのか、何を最優先して作りたいのか、今一度確認してみましょう!
5.口糊加工と貼り合わせについて
口糊(くちのり)とは、封筒に封をするにあたり、あらかじめ付けられた糊のことです。
ここでは、定番の4種類をご紹介します。
5-1 アラビア糊、アドヘア糊、両面テープ、グラシンテープって?
【アラビア糊】
ベロ部分に付いているアラビア糊という糊を水に濡らすことで接着します。切手を貼るときと同じ原理です。水を付ける作業が必要なため、自動封入機で使用されることが多いです。水に濡らさない限り粘着しないため、長期保存に向いています。
【アドヘア糊】
ベロ部分と封筒本体の両方に塗ったゴム系の糊に圧を加えることで接着します。他の口糊のように水分を含ませたりテープを剥がしたりする手間がないため、作業効率が高く、DM発送などに向いています。ですが、糊の部分が長時間空気にさらされると粘着力が下がるため注意が必要です。品質保管の目安は3ヵ月程度です。
【両面テープ】
ベロ部分に付いている両面テープを剥がして接着します。水溶性の糊に比べて粘着力が強いため、艶のある用紙や半透明の用紙など糊の付きにくい封筒にも重宝します。品質保管の目安は1年以上程度です。
【グラシンテープ】
封筒本体に水溶性の糊を加工し、その上から剥離紙を付け剥がして接着します。この剥離紙のことをグラシン紙と呼んでいます。グラシン紙自体が薄い紙なので剥がしやすく、接着作業がしやすいのが特徴です。品質保管の目安は6ヵ月程度です。
※品質保管の期間は、保管環境によって異なりますのでご注意ください。
5-2 貼り方はどんなものがあるの?
封筒は一枚の紙を袋状に貼り合わせて作られています。
今回は、代表的な貼り方を4種類ご紹介します。
【センター貼り】
貼り合わせが中心にできる、和封筒の定番な貼り方です。中心で貼り合わせるため、封筒自体が比較的よれにくく、書類を入れやすいという特徴があります。
しかし、裏面の中心部分に貼り合わせ位置があることで段差が発生するため、宛名の記入・印刷時には注意が必要です。
他にセンターシーム、中貼り、タテ貼りと呼ばれることもあります。
【ヨコ貼り】
貼り合わせ部分が封筒の端にくる貼り方です。
中心部分に段差が無いため、宛名などの印刷も安定し綺麗に仕上がります。そのため、事務用の封筒としてよく使われています。貼り合わせ部分が片方に偏っているため、封筒を同じ方向で重ねた際に傾くので注意が必要です。
他にサイド貼り、サイドシーム、スミ貼り、ウチ貼りと呼ばれることもあります。
【カマス貼り】
両サイドにのりしろがあり、そこを閉じる貼り方です。 両サイドののりしろが内側になる内貼りと、外側になる外貼りがあります。のりしろが左右にあるため、封入口が広いのが特徴です。
四角い布や紙を二つ折りにし、フチを縫い付けた袋を「叺」(かます)と呼ぶことから由来していると言われています。
【ダイヤモンド貼り】
ベロが三角形の封筒で、のりしろが斜め方向になっている貼り方です。封筒の展開図がひし形をしているため、ダイヤモンド貼りと呼ばれています。挨拶状や招待状などによく使用されます。
ダイヤ貼り、インボイス貼りと呼ばれることもあります。
6.おすすめの組み合わせ
封筒は手紙を受け取った人が最初に触れるものです。形、用紙、厚さ、口糊、貼り合わせにいたるまで、細やかな心配りが印象アップにつながります。最後におすすめの組み合わせとして、改まった場面で差し出す招待状と、オフィス間でやり取りする請求書や顧客宛てのDMを想定した2例をご紹介します。
洋形1号とダイヤモンド貼りは、招待状でよく使用されています。
用紙の種類は、表面が凸凹している特殊紙のタントはいかがでしょうか?
この種類は色数も多くあるので、披露宴の雰囲気に合わせて選ぶのも良いかもしれません。
しっかりした厚みがあり、口糊加工は両面テープを選ぶことで接着部分がすっきりした印象になります。
A4サイズの用紙を三つ折りにして入れられる形で、封入時に引っかかりにくいセンター貼りにしています。
+αの加工として、セロハン窓を付けてみてはいかがでしょうか?
しっかりとした厚みと白色のケント紙で企業の安心でクリーンなイメージを出しています。
また、口糊加工はアドヘア糊にすることで作業効率が上がります。
まとめ 封筒発注に困らないために
今回は、封筒を発注するにあたり必要な基本情報をご紹介しました。また、封筒と一口にいっても、種類もサイズも様々ですので、用途に合わせ選択していくことが非常に大切です。
この記事で紹介した内容を、ぜひ参考にしていただき理想の封筒を完成させましょう。
もし、「決めることが多くて大変そう…」と悩まれるようでしたら、当サイト『紙ソムリエ』の質問フォームよりご相談ください。会社の顔でもある封筒作りをぜひともお手伝いさせていただければと思います。