中級編の用語はいかがでしたでしょうか?中級編の用語でも難しいと思った方もいらっしゃるかもしれません。初級編・中級編の用語を覚えれば、印刷会社とのやり取りもよりスムーズにできるはずです。
今回はいよいよ「上級編」です。さらにデザインに関する用語や印刷技術に関する用語を取り上げるほか、最近のトレンドである環境問題やユニバーサルデザインに関する用語も解説しています。
ぜひ参考にしてみてください。
1.デザインでよく使われる用語
1-1 レイアウトに関する用語
マスク
画像を直接編集することなく、余分な箇所を隠すことができる機能。
あくまで隠しているだけで元の画像は変更されていないため、後から追加で修正したり、元に戻したりしたいときに便利です。
Illustratorには、「クリッピングマスク」「不透明マスク」の2種類のマスクがあり、Photoshopには、「クリッピングマスク」「レイヤーマスク」「ベクトルマスク」「クイックマスク」の4種類のマスクがあります。
パス
点とそれをつなぐ線で構成されたもの。
Illustratorなどで作られる図形は、すべて点と線で構成されています。
このとき点を「アンカーポイント」、点と点をつなぐ線を「セグメント」と呼び、アンカーポイントとセグメントによって構成される線分を、まとめてパスと呼んでいます。
アウトライン化
テキストや太い線を、輪郭に合わせてパスで構成されたオブジェクトに変換すること。
アウトライン化することでテキストデータの文字情報が失われ、図形として扱われるため、テキストの文字化けを防ぐことができます。
しかしアウトライン化した後に文章を一部修正したくても、文字情報が失われており編集できないため注意が必要です。
そのためアウトライン化前のデータをバックアップとして残しておくと安心でしょう。
レイヤー
データに階層状で重ねられる透明なシートのようなもの。
オブジェクトを配置したレイヤーを何層にも重ねることで、さまざまなデータを作ることができます。
また、レイヤーを重ねる順番によって上下の層がありレイヤー同士は干渉しません。
そのため下のレイヤーに背景を置き、上のレイヤーに文字やオブジェクトを配置することで、簡単に背景だけ編集したりオブジェクトだけ移動したりできます。
UDフォント
ユニバーサルデザインに基づいて作られたフォント。
UD(ユニバーサルデザイン)とは、「できるだけ多くの人が利用可能であるようなデザイン」を基本としたデザインのことを指します。
遠くから見たときや小さい文字でも見やすく読み間違いがないように、可読性や視認性、識別性が高くなるように作られています。
1-2 色に関する用語
疑似色
特定の色を他の色で代替して表現される色のこと。
主に特色をCMYKで限りなく近い色に再現した色を指します。
特色は普通のプリンターでは印刷できず、CMYKのカラーに変換する必要があるため疑似色に代替する必要があります。
これはあくまで疑似的に再現するもので特色本来の色合いとは異なるため、気になる場合は事前に色校正などで確認すると安心でしょう。
「疑似カラー」「代替色」「代替えカラー」とも呼ばれます。
4c/1c、4/1
何色印刷かを示す省略表現で、表が四色刷り、裏が一色刷りということを表しています。
また「4c/1c」のcはColorを意味します。
4c=CMYK印刷
1c=CMYKのいずれか一色、あるいは特色一色刷り
「4c/1c(K)」など、どの色で一色刷りするのかを後ろに記載して示す場合もあります。
読み方は「よんいち」。
1-3 画像に関する用語
ビットマップ画像
点の集合によって構成される画像の形式。
「ラスター形式(画像)」とも呼びます。
色表現がきめ細やかで繊細な表現ができるため、写真の表現が得意です。
しかし点の集合体なので、拡大していくと点の細かさに限界が来て画像が粗く見えてしまいます。
主にJPEGやPNG、GIFなどが当てはまります。
ベクター画像
点と線の情報が数値化された画像の形式。
点と線を数値化し、それをパソコン上で再現して表示しているため、拡大・縮小を繰り返しても画像が劣化しません。
また、点で表すビットマップ画像と比べて線の表現が非常になめらかで綺麗なため、ロゴやアイコンの表現に向いています。
しかしきめ細やかな色表現が難しいほか、主要な拡張子に対応していないというデメリットもあります。
主にSVGやAI(Illustratorの編集を行うデータの拡張子)、PDFが当てはまります。
TIFF
ビットマップ画像の保存形式の一つ。
「Tagged Image File Format」の略で、読み方はティフです。
TIFFファイルはタグという識別子を使うことで一つの画像ファイルに複数の異なる仕様・形式の画像データを保存することができます。
また圧縮によって全体のデータ量を抑える処理を行わないため、サイズの大きな画像や高解像度の画像を取り扱う際に向いています。
拡張子は「.tif」あるいは「.tiff」。
2.校正でよく使われる用語
2-1 校正時によく使用される用語
突き合わせ
元原稿と作成した校正データを一文字ずつ比較して一致しているかを確認する校正方法。
「引き合わせ校正」と呼ばれる場合もあります。
前の校正時に修正があった場合は、前の原稿と突き合わせを行います。
原稿と比較する中で誤字脱字のほか、画像の欠けやデータの抜け、体裁が整っているかも確認します。
読み合わせ
校正者が二人一組となって、一人が原稿を読み上げ、もう一人がチェックする校正方法。
口頭で文章を確認することで、誤字脱字を発見しやすくなります。
また思い込みによる見落としを防ぐために、媒体によってはあえて内容を読まずに文章を逆方向から1字ずつチェックする逆読み作業を行うこともあります。
3.紙選びでよく使われる用語
3-1 紙に関する用語
枚葉紙(まいようし)
ロール紙を断裁して作るあらかじめ既定のサイズにカットされた紙。
シート紙と呼ばれる場合もあります。
1枚、2枚…と用紙の枚数を数えることができるので「枚葉」と呼ばれています。
また枚葉紙を使う印刷機は枚葉印刷機と呼ばれ、さまざまな場面で目にする機会があります。
例えば、一般的な家庭用プリンターやオフィスの印刷機は枚葉機、そこに通すコピー用紙などは枚葉紙にあたります。
巻取紙
規定の幅に揃えられ、裁断されていないロール状の印刷用紙。
トイレットペーパーのように長い一枚の紙を軸に巻き付けており、単純にロール紙と呼ばれる場合もあります。
印刷物の種類にもよりますが、巻取紙一本で数万部以上印刷することができます。
また巻取紙を使う印刷機は輪転印刷機と呼ばれ、紙を高速で巻き取りものすごい速さで大量の印刷を行います。
巻取紙と輪転印刷機を使用した印刷物の代表例として、新聞紙があります。
枚葉印刷と輪転印刷の詳しい違いについては、「輪転印刷の基礎知識」の記事をご覧ください。
特殊紙
特別な加工を施した紙。
一般的にコート紙、マットコート紙、上質紙以外の用紙はすべて特殊紙に分類され、会社ごとに独自の特殊紙を開発しているため、その種類は膨大です。
例えばラメや凹凸加工が施されたもの、耐水性や通電性、耐火性を持たせたもの、和紙や羊皮紙なども全て特殊紙であるといえます。
特殊紙の具体例として、ファンシーペーパーや、複写用紙(ノーカーボン紙)があります。
特殊紙についてはこちらでも詳しくご紹介していますので、気になった方はご覧ください。
3-2 主な紙の種類
FSC森林認証紙
FSCに認められた森林の木材を使用して作られている紙。
FSCとは、国際NPOであるForest Stewardship Council(森林管理協議会)のこと。
世界的な森林減少や違法伐採問題などの環境問題に対処するために作られました。
適切に管理された森林の木材のみを使用しているため世界の森林保護に貢献することができ、環境問題に積極的に取り組んでいる意思表示としても活用できます。
再生紙
古紙をリサイクルして作った紙。
原料となる古紙にインクなどの不純物が残っているため、古紙の含まれる割合が大きいほど用紙に色が付きます。
しかし近年は技術の向上で普通紙に近い質感の再生紙も生まれ、幅広い用途で使用されるようになりました。
再生紙を活用することでゴミとして廃棄されてしまう紙を減らせるほか、森林資源の節約にも繋がります。
再生紙の代表的な使用例として、新聞紙があります。
FSC森林認証紙・再生紙について、詳しくはこちらをご覧ください。
ユポ紙
耐水性と耐久性に優れた合成紙。
木材パルプではなく、石油からできる合成樹脂のポリプロピレンを主原料としています。
このためプラスチックと似た特性を有し、水に濡れても破れにくく丈夫です。
加えて油や薬品で濡れても劣化が少なく、資源として再利用できるため環境にも配慮されています。
ユポ紙の代表的な使用例として、選挙ポスターや選挙の投票用紙があります。
4.印刷・加工でよく使われる用語
4-1 印刷手法に関する用語
グラビア印刷
版に凹みを作ってそこにインクを流し込み転写する印刷方法。
凹版印刷の一種です。
インクに厚みを持たせることができるため、細かい濃淡を表現するのに優れ、高品質なカラー表現が可能です。
その特性から写真の印刷に適しているほか、現在ではプラスチックフィルムや金属箔など、紙以外の軟包装材料にもよく使用されています。
バリアブル印刷
ベースとなるテンプレートデータと、可変する情報を1点ずつ差し替えて行う印刷。可変印刷とも呼ばれます。
固定された部分と可変する部分に分かれて意匠が設計されている印刷を指していて、単純な宛名以外にもコンテンツやバーコードなどを変更することもできます。
身近な使用例として、年賀状やDM(ダイレクトメール)の宛名や、宝くじの当選番号などがあります。
バリアブル印刷については、詳しくはこちらの記事もご参照ください。
4-2 印刷技術に関する用語
CTP
フィルムを作らず直接版を作る現在主流の方式。
CTPは、Computer To Plateの略称です。
従来の印刷で行っていた、データから専用フィルムを出力しそのフィルムを刷版に焼付ける工程をデジタル化することで、データを直接刷版に焼付けることを可能にしました。
そのぶん製版時間の短縮によるコストダウンや品質の安定化など多くのメリットがあります。
DTP
パソコン上で印刷物のデータを制作すること。
DTPは、Desktop Publishingの略称です。
かつて複数の人間が分担して行ってきたデザインや版下の制作などの印刷工程は、DTPの普及でパソコンさえあればほとんどの作業を1人でできるようになりました。
DTP作業を行う職業として主にレイアウトやデザインを担当するDTPデザイナーと実際に印刷データを作成するDTPオペレーターがいます。
4-3 製本・加工に関する用語
上製本
表紙に厚紙を用いることで、強度と耐久力を持たせた製本方法。
ハードカバーとも呼ばれます。
表紙は芯となる厚紙を紙や布、革などで覆って作られるため、折り曲げにくく丈夫なのが特徴です。
また本文の用紙より大きく表紙が作られるため本文もしっかり保護することができます。
ちなみに柔らかく曲げやすい紙を表紙に使用した本は「並製本」と呼ばれます。
詳しくは「上製本」の記事をご覧ください。
アジロ綴じ
背の部分に切り込みを入れ、そこに接着材を浸透させ背を固める綴じ方。
無線綴じの一種です。
背を切り離さずに接着材で貼り合わせているため、製本強度が他の無線綴じに比べて高いですが、そのぶんややページが開きにくく見開きなどのレイアウトには不向きです。
10~15㎜程度の切れ込みを5㎜程度間隔おいて入れるのが一般的で、この切れ込みを入れることで糊が劣化した際にもページが抜け落ちにくくなります。
PUR綴じ
背に使用する糊をPUR系ホットメルトに変更することで耐久性・柔軟性・耐熱性を高めた綴じ方。
アジロ綴じと同じく無線綴じの一種です。「PUR製本」とも呼ばれています。
PURは反応性ポリウレタン(Poly Urethane Reactive)を意味していて、従来の接着剤に比べて強度や耐熱温度が優れています。
開閉時の耐久・柔軟性も増して見開きなどのレイアウトも問題なく開くことができるため、アジロ綴じの上位互換といっても過言ではありません。
製本の基本的な考え方については、詳しくは「無線綴じ」の記事をご覧ください。
PUR綴じについてまとめた記事もありますので、気になる方はこちらもどうぞ。
スクラム製本
二つ折りの印刷物を重ねてまとめた製本方法。
針金やホチキス、接着剤などは使わずただ重ね合わせているだけなので、安全でリサイクルにも適した製本方法です。
差し込み製本、新聞形式製本、挟み込み製本、綴じ無し製本、針金無し製本、空綴じとも呼ばれます。
代表的な使用例として、新聞紙やフリーペーパーがあります。
天綴じ
縦に開く冊子の綴じ方の一つで、上にページを開いていく形式のもの。
上綴じや上開きとも呼ばれます。
表紙を表にしたとき上側(天側)を綴じる形になります。
めくっていく形式のカレンダーや伝票、メモなどによく用いられます。
まとめ.印刷用語を覚えれば発注もスムーズに
初級編・中級編・そして今回上級編と、印刷用語をご紹介してきました。これらの印刷用語を押さえておけば、印刷会社とのやり取りや発注がとてもスムーズに行えるでしょう。
上級編までマスターしていれば、印刷会社もびっくり!見積もりやデータ制作の場面で困ることも少ないはずです。
今回までに解説してきた用語について、さらに深く知りたい方はその用語についての詳細な記事も掲載していますので、ぜひ読んでみてくださいね。
分からないこと、少しでも不安に思われることがあれば、当サイト『紙ソムリエ』の質問フォームよりお気軽にお問い合わせください。